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東方projectに登場するキャラクター。名前の読み方は「ホンメイリン」。 気を使う程度の能力を持ち、二つ名は「華人小娘」「色鮮やかに虹色な門番」。 東方紅魔郷では3面ボス、東方萃夢想では追加パッチにて自機キャラとして登場。 見た目は人間だがれっきとした妖怪である(ただし何の妖怪であるかは作中では明言されていない)。 吸血鬼レミリア・スカーレットの住む紅魔館の門番を務める。 武術に秀でた武闘家で、たまに腕試しにやってくる人もいるらしい。 突出した能力は無いが、同時にこれと言った弱点も無い万能タイプ。 妖怪としてはそれほどでもないが、人間相手には死角が無い。 基本的に真面目だが、門番の仕事中に昼寝をしている姿が目撃されている。 ユーザーからの愛称は職業そのままに「門番」、 名前の全部または一部を日本語読みして「くれないみすず」「本みりん」、外見から「中国」「チャイニーズ」など。 この中でも特に「中国」と言う呼称が浸透してしまい、本名で呼ばれないキャラ代表である。 挙句の果てに、原作者にすら名前を忘れられたことがあるとかないとか。 発端は2ちゃんねるゲームサロン板の東方スレだとされる。 300 名前:ゲーム好き名無しさん投稿日:03/04/06 09 14 ID ??? 俺の仲間内では他のキャラは全て普通に名前で呼ぶのに 美鈴だけ「中国」と呼ばれている 二次創作においては咲夜を初めとした紅魔館の住民にいじられるヘタレキャラとして扱われることが多い。 特に居眠り→咲夜にナイフで刺されると言う流れはお約束となっている。 ただ、前述の呼び名とあわせてこれらのネタもかなり使い古されたネタであり、よもすれば彼女のファンにとっては不快に感じることも少なくないので注意。 なお、中国という呼び名自体は原作者公認とされる。 http //web.archive.org/web/20040404190222/www16.big.or.jp/~zun/cgi-bin/diary/nicky.cgi?page=1より ■2004年01月04日(日)22 58 冬コミお礼その2 (中略) そいえば、いつも中国と言ってから美鈴って言い直してますが、中国で良いですよ^^; そもそも、いてもいなくても差し支えない程度のその他妖怪なので。 また、咲夜とは逆にナイスバディーの持ち主として描かれることが多い。 ニコニコワールドにおいては第十五幕で彼女の登場を思わせるような演出があったが、登場しなかった(火蜂の頁参照) その後、第十七幕にて咲夜と共に登場。 タッグ参戦するのかと思いきや、咲夜とは別のタッグで参戦することとなった。 mugenには知り合いが多いとのことである。 第十八幕では5ブロックから本戦に出ている。 mugenでの彼女のタッグ相手として一番有名なのは、おそらくKOFのクリザリッドであろう。 「男女ペアによるタッグバトル大会」で「幸薄テュホンレイジ」として出場、大会を制する。 なおこの大会には、咲夜もヴァニラアイス(DIOの部下)と組んで「吸血鬼の右腕」として出場したが、幸薄テュホンレイジに敗北している。 尚、テュホンレイジとはクリザリッドの飛び道具で、美鈴も似たような技を持つ。通称イカリング。 テュホンレイジの掛け声が、美鈴の名前を言っているように聞こえるというコメントも見られる。 mugenには多数の美鈴が作成されており、比較的原作に準じたもの、弾幕を廃して格闘ゲームキャラに特化したもの、 逆に弾幕を強化したもの、鳩を出すもの、中国拳法つながりなのかカンフーマンのスタンドを呼び出すもの、 「咲夜・ブランドー」と対になる「スター・プラチナ」のスタンドを備えたものなど様々。 幸薄テュホンレイジの幕開け この頃になると、幸薄テュホンレイジもすっかりメジャーに。 美鈴が主役のMUGENストーリー動画 8人のMUGEN美鈴によるトーナメント 8人のMUGEN美鈴がそれぞれのタッグ相手を連れて対戦
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咲夜12 うpろだ1062 紅魔館――――――――幻想郷に来てから身を寄せている場所だがここに来てまだ2年ほどだ。 待遇的には「傭兵」。とはいえ館内が主で外出は稀だ。 「○○。お疲れ様。悪いけどちょっと手伝ってくれる?」 十六夜咲夜。ここに来るきっかけになった人物だ。通称「咲夜さん」。 「了解。援軍が来たからには安心かと」 こういう仕事は慣れている。ここに来るまでこの傭兵の肩書きのおかげで多種多様な仕事をしてきた。 ちなみに今日の収穫は街で買った懐中時計。 「ふぅ…依頼終了と。ところでこのビー玉もどきの正体とか知らない?」 ここに来てからなぜか持っていた赤・青・緑・白・黄の「ビー玉もどき」。正直自分でもよくわからない。 「頭の中までは完璧じゃないし…図書館にでも行けばいいんじゃない?」 「あ。そっか…パチェならわかるかな」 夜が明けてから着替えて行ってみる。結構図書館には行く方だ。 ―――傭兵移動中&受講中――― ヴワル魔法図書館。幻想郷の中で本の量が一番多そうなこの館の書斎。ちゃんとノックはする。 「開いてるからどうぞ…ゲホっ…」 極端に短い相槌。パチュリー・ノーレッジ。この図書館の主で喘息持ち。見ていてハラハラする。 「珍しいモノ持ってるじゃない。興味深いから見せてくれる?取ったりしないから」 ………新手のカツアゲかこれは。流し目で見られると妙な緊張感が走る。いや…むしろ威圧感か。 見せてみると大体分かったのかジト目で話し出した。正直ジト目は怖いが結構いい話は期待できる。 「この5つの玉には霊獣が宿ってる…それぞれ強大な力を持つ霊獣がね。とりあえず座って」 霊獣なんて見たことも信じたこともなかった。淡々と話されるこの玉の能力。とりあえず座る。 「この4色…四神は今の状態で使えるけど黄色は今はダメ。下手すれば――死ぬ場合もあるから」 そんな現代で言えば核兵器やら放射能やら地雷原みたいな代物が混じってるとは思っても見なかった。 「この黄色い玉は麒麟…この子達のリーダー格…言って見れば頂点に君臨する存在」 黄色い玉はまだ無理だとしても意外に使える能力が多いことがわかっただけでも収穫だ。 「死にたくないならこれは絶対使わないこと。どんな状況でも。泣く人…いるでしょ?」 咲夜さんのことはバレてたらしい。紅魔館のブレインには及ばないか。 「守ってあげてね…あの子…ホントはすごく脆いから」 ここまで洞察力があると敬服どころか畏怖に値する。そろそろ戻るか。 ―――傭兵移動中――― 「どう?答えは出た?…何その目。この私と弾幕張ろうって目?」 「ちょっと四神の力ってのを試したくてさ。時間あれば軽くでいいから」 「アンタねぇ…後悔しても知らないからね。少し待って。用意してくるから」 場所は近くの森上空。早くも咲夜さんは本気モード。軽くヤバい。むしろ軽くない。ヘビーだ。空気的に。 「じゃあ…早めにチェックメイトにしてあげる。幻在『クロックコープス』!!」 「結構しっくり来るな…。朱雀『紅煉獄炎翔』!!」 飛んでくるナイフが炎で相殺されるが次の手が早い。相手に取って不足なしだ。 「アンタが敵じゃなくてよかったわ…ホントに。傷符『インクライブレッドソウル』!」 「まぁそれはお互いに!白虎『白刃裂風牙』!!」 ピンポイントでナイフを風で吹き飛ばして回避する。正直驚いた。さすがは霊獣。 「嘘…――――ふーん。じゃあ本気出すから。奇術『ミスディレクション』!」 「前から――後ろ!?手加減ナシか…玄武『翠林城塞砲』!!」 地面から林のような緑色の柱が立って全方位のナイフを防いだ後で左右に展開。その後砲撃。 「ここまでとはね…でもこれで最後。幻世『ザ・ワールド』――――その頑張りは認めてあげる」 「遠慮ナシだ!青龍『蒼穹逆鱗葬』!!―――――――――――――え?」 青い激流が暴走するが時を止められる。直立不動の金縛り。その隙に1つだけナイフが飛来する。 「チェックメイト。ほら。戻って傷口診るからさっさと立って」 「やっぱ敵わないか。この通り戦術的敗北だよ」 読まれていた。敢えてスペルを展開しこちらの手の内を探り最後の最後に時間を止めて一撃を見舞う。 「でも久々に苦戦したのは事実。その努力の成果は凄いって言えるから。でも麒麟は禁止。いい?」 「痛ぅ―――――…練習あるのみ…か。頑張らないとな」 それでも努力は認めてくれた。 「ジョーカーは…切り札は最後まで残しておくもの。力に頼り過ぎると必ずツケがくるの」 「それが今の状態…か。また一つ学んだよ」 紅魔館で手当てを受ける。パチェが麒麟のことを言ってくれたらしい。 それから自分に用意された休憩時間で各スペルの発動までのタイムラグを埋める。 1週間後―――――よりによって紅魔館の幹部クラスが咲夜さん以外留守の日に災厄は来た。 「アンノウン接近!妖怪の部類かと思われます!数…計り知れないです!!」 物見が叫ぶ。計り知れないなら上等だ。咲夜さんに内緒で先陣切ってアンノウンに向かう。 弾幕を張って応戦するが数が数。減る気配は皆無に等しい。スペルは一応温存しておく。 どうやら頼もしい援軍が来たらしい。というか門番どこ行った。戻ってきたら生存率めっさ低いぞ。 「○○!アンタはもう…この戦闘が終わったら一応覚悟はしておくこと――怪我したら許さないから」 「一応心配はしてくれるんだ?…了解。お手柔らかに!」 減らない。むしろ増えてきている。これがアンノウンの正体じゃない。これは『攻撃手段』――弾幕。 「ちょっとコレどこから湧いてくるの!?一向に減らないじゃない…ゴキブリ以上に性質悪いわ」 「これが敵ならとっくに消滅してる――本体を探して集中的に叩けばこれも消えるはず…!」 攻撃方法・正体・形状・特徴・弱点・そして存在全てが未知数にして未確認…正真正銘の「アンノウン」。 「攻撃が向こうに…咲夜さんに集中して…チィっ!霊獣『四神結界』!!」 相手の考えはアバウトにだが読めた。能力が高い方から潰す。シュミレーションゲームの鉄則だ。 「あ…ありがと…これに免じてさっきのはチャラにしてあげる」 助かった。とはいかないみたいだ。弾幕が止む。ボスの登場ということらしい。 「何コレ…ホントに妖怪!?やってやろうじゃない…!!」 ヒドラ。海蛇座のモデルになった9本の頭を持つ大蛇。こんな蛇が幻想入りしていたこと自体驚きだ。 「通りで弾幕が多いわけだ…早いとこ潰して終わらせる!」 とはいえ巨大さでは向こうが数段上だ。周期的にスペルを使って順調に首を落とす。 でも異変が一つ。咲夜さんが身震いしている。下手したら被弾しかねない。 ここは四神結界で防御させながら戦う。 朱雀「紅煉獄炎翔」。 白虎「白刃裂風牙」。 玄武「翠林城塞砲」。 青龍「蒼穹逆鱗葬」。 なんとか親首以外を叩き落として浄化したが少し力加減をミスったらしい。激痛が走る。 「万策尽きたってところかな…違うか。まだ手はある…よな。使ってみるか…麒麟」 単なる独り言。麒麟を使う。生死を賭けた大博打。聞こえて――ないな。 「ダメ…怪我したら許さ…ないって言っ…たでしょ…?」 目の前に気を取られすぎて後方が見えなかった。この掠れた声で思い浮かぶ状況は1つしかない。 結界がブチ破られていた――相当被弾しているはずなのにこんなバカを心配してくれる。 「下がってな…さい。すぐ…終わる…から」 無理だ。その傷で時間なんか止めたらその後無事じゃ済まない。 「関係ないね!――バカだからさ。ゴメン。フルパワーでぶっ放すから下がってた方がいいって」 持っていたナデシコの柄の袋を投げる。咲夜さんナイスキャッチ。 明日が満月。明後日は「十六夜」。いつも足引っ張ってドジ踏んで… それでも認めてくれるせめてものお礼。そのための懐中時計。 『守ってあげてね』――パチェから言われた一言。もちろんそのつもりだ。 「死んでも…知らない…。骨も…拾わない…!」 どんな顔かは声でわかる。 泣いてる顔は見たくない。だから振り向かずに。躊躇わずに。冷徹なる雷をこの手で目の前の災厄に。 「麒麟――――――『雷帝閃煌覇』――――――これで終わらせる」 雷が縦・横・斜め・正面から飛び交う。 ヤバい。意識が飛びそうだ。ここまで強大な雷は操作不可能で逆流しないのが唯一の救いだ。 まだ息絶えないか。あと少し…せめてあと一撃。あと一撃あれば確実に仕留められる。 「それじゃ…最終兵器の登場だ。ジョーカーってのは最後の最後で切るんだよ」 パチェの「賢者の石」を元にアレンジを加えた最後の「リーサルウェポン」。 特攻用に編み出したリミッター解除の最大出力。5つの神の真骨頂を融合させ覚醒させるスペル。 「何を!?それ以上やったら大怪我レベルじゃ済まない!まして麒麟を使った後に!」 最後の最後…むしろ最期にカッコつけさせてくれて感謝はしている。ここに来れてよかった。 「今はちょっと自分の限界ってヤツに挑みたいだけだから。この程度じゃ死なないって」 「この―――――――――――――――――バカ」 ターゲットは目の前のバケモノ。コイツだけは刺し違えても倒す。 「消滅させてやる――聖獣『破邪獣神結界』――まだ――神獣『五芒星滅殺陣』――デッドエンドだ」 これが限界突破の最終兵器。高威力かつ高火力の多段式波状攻撃。おまけに霊獣の加護つきときた。 ここまでは作戦通り。麒麟を呼ばないとこのスペルは使えない。だからあえて逆らってみた。 後はヒドラの浄化を見届ける。一応これで99.9%策は成った。 どうしても0・1%が欠ける策。むしろ99・9%が100%の策。 「明後日…生きてるか死んでるか…どっちかの0.1%に賭けてみるかな…」 意識が途切れる前の生命のコイントス。表か裏かで生死が分かれる。 最後の0.1%――それは自分が死んでも生きても達成される。その段階で初めて真の100%になる。 この策は敵を「ハメる」策でなく「殲滅する」策。いかなる犠牲を払っても。それが自分であっても。 咲夜さんの「誕生日」。わからないから毎年「十六夜月」の日に決めていた。今年は――無理かな。 せめて自力で渡したかったな――懐中時計。絶対泣いてるよ――。 それから何分…何時間…何日経ったのかわからないが目は覚めた。ここは…紅魔館。 「25時間…44分…35秒。――――――ホントに…ほっとけないんだから」 「持ってたんだ…懐中時計。ほら…死んでないし」 冷徹ないつもの声じゃない。泣いてるけど優しい声。 「また足引っ張っちゃったかな…痛ぇ!傷!傷開く!…でもまぁ…いっか」 抱きつかれたところが傷口だったのは言うまでもない。絶対わざとじゃないがこれはダメージがデカい。 それから約1日半。十六夜が出る日。まだ夜には早すぎるが。 「○○!!速効でケリつけて。まだ依頼はあるから覚悟することね」 ちょ…仮にだけど誕生日…今日だってこと確実に忘れてるなこれは。 それでもすれ違い様に呟いてみる。 「咲夜さん――――――誕生日―――――ーおめでと」 ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ1126 「少し風邪でも引いたかな…」 紅魔館の自室でオフ時間に呟く。 いやリリーホワイトが「春ですよ~」とここまで伝えにきてくれるわけだが何しろ季節の変わり目だ。 「そろそろ戦線復帰ね。この頃調子悪そうだから仕事は多いけど軽めにシフト組んだから」 「了解…っと。やる事はさっさと片付けますか」 上司の咲夜さんが軽めにシフトを組んでくれたみたいで助かった。とはいえ仕事は多いが。各段階のメモが渡される。 「えーと…最初は庭の水やりと買い溜めした食糧を運ぶわけか」 ポケットに入れたビー玉もどき。たまにこの中から霊獣が手のひらサイズに実体化して出てくる。ちょっと可愛い。 ちょっと早めに終わらせる。これで第1段階と第2段階が同時に終わったわけだ。 「次は…え?借りてる本があるから図書館に返してくればいい?」 第3段階が私用っぽいがまぁ気にしない。箱で買った栄養ドリンクも1本出して持っていく。こういう時期に心配な人物が図書館に約1名。 「返却ならその棚に入れてくれればいいからね…差し入れありがと」 「いつも本貸してもらってるから粗品でゴメンな」 「そういえば麒麟も使えるようになったみたいじゃない?」 「お陰さまでこの通り」 …元気だな。パチェ。とりあえずまた本を借りて図書館を出る。自室に本を置いて第3段階終了。 「次が難関だな…紅茶の葉の分別。『葉脈で種類ごとに分けること』…」 第4段階で難易度一気に急上昇。これが難しいらしい。 「一応これで前半戦終了か。結局ボスクラスは最後に来るわけな」 約30分経過。ようやく半分だ。「感想は」とか聞かれたら即「長い」の一言で済むくらい地道な作業だ。 「結構な種類だったよなぁ…後半戦のメモでも貰いに行きますか」 一応は区切りがついて帰還。部屋の中でドサッと鈍い音がしたが物でも落ちたか。 「咲夜さーん?後半戦のメモもらいに――――――!?」 「カッコ悪いとこ見せたみたい…でも大丈夫」 「いやでも今倒れて…」 「大丈夫だって言ってるで…しょ」 そうだ。よく考えたら目の前にいつ倒れてもおかしくない上司がいたのに気付けない自分の洞察力のなさを呪いたい。 「大丈夫そうに見えないって!指示さえ貰えれば代わりくらいできるし部下の意見も聞かないと」 「部下にはできないことだってあるでしょ…」 よろけながら言われても正直説得力がない。だったら失敗してもできるところまで突き進むまで。 「何もしないよりマシかと思う」 「ホントにもう…優しすぎ。なら後半戦はカット。各段階ごとに終わったらここに来て。指示は○○に一任。夕食には復帰するから」 これまでにない大役。代理とはいえ咲夜さんの仕事を任されたわけだ。一人でできる事は極力こなす。 「慣れない事するとさすがにキツいな…これは」 この紅魔館には咲夜さんの部下のメイド精鋭部隊が30人以上いる。だがここはある意味戦場だ。言い出した以上は退けない。 「あと少しで夕食って…時間的にヤバいか…!進んじゃいるが指揮はキツいな…」 「時間よ止まれ――――――――――」 この声と能力は…どうやら援軍が来たみたいだ。一瞬背筋が凍りそうになった。 「まだ動いちゃダメなんじゃ…」 「お陰さまで完全復活。その子にも手伝ってもらうけどいい?」 「了解!」 丁度いいところに思い通りの指示。 「そして時は動き出す――――1、2班はすぐに食事の用意!3、4班はその補佐!周期的に状況を報告!5、6班は遊撃!」 早くも本領発揮。ここまで来ると威圧感がある。 「援護は任せるからよろしく。ここの火力が低いから上げて!」 「久しぶりに出しますか!炎符『ヴァーミリオンブレイズ』!」 ミニ朱雀大活躍。スペルの有効活用法…とは言えないか。正直なところは無駄遣いかもしれない。いや確実に無駄遣いだ。 そして無事に夕食終了。咲夜さんの声に一瞬ホントにビビった。 その後は普段と同じ。個人で入浴を済ませてその日の任務は完了だ。 「あれ…ダルいのが取れてる…」 「お疲れ様。あれだけ動いて汗かいたでしょ」 「ビビったなぁ…咲夜さんか」 いつの間にいたんだ…というツッコミはナシ。 「今日はホントによく耐えてくれたわ」 「100点中75点くらい…かな?」 「今回だけ96点にしてあげる」 何とも100点に近いとはいえ微妙な…いや…ここは素直に受け取ろう。 「じゃあ増えた21点はコイツに分けとこ」 そういえばフランとお嬢様がそろそろ起きてくる頃だ。 「「夜更かし決定!?」」 声がシンクロした。どこぞの紫色の暴走メカもビックリのタイミングで。目の前にはお嬢様が。 「あら…休まないの?2人して珍しい」 「休む暇があるなら借りの清算が先なので」 「たまには徹夜もいいかと思ってるんすよ」 言い方は違ってもほぼ内容的には同じだ。ここで前方から猛スピードで突っ込んでくる人物が。鳩尾に鉄拳がめり込む。二重の極みかこれは。 「あー!!○○ー!咲夜ぁー!今日はフランと遊べそう?」 「痛ぇ…今はフルじゃないから弾幕は無理な?余裕がある時には一戦頼む。ゴメンな?」 「ちぇー」 いやでも正直なところ弾幕はカンベンしてくれと言いたくなる。まぁそれでもフランは無邪気な分許せるが。 「じゃあ…チェスやろ!チェス!」 「地下室にあったっけか?確かなかったような…」 「フラン。私の部屋のチェスを貸すから心配しないで。壊さないこと。いい?あと紅茶が飲みたいわ」 「お嬢様。用意ならここに」 とまぁお嬢様の部屋でお茶会決定。さすがにフランを封じる策も考えているらしい。 「フラン…もう一度言うけど壊さないこと。―――いい?もし万が一壊したらその時は…分かるわね?グングニル投げるから」 「ひっ―――!?」 「返事は…?」 「はい…」 お嬢様すげぇ。すーげーぇ!何だいそのボムは!?フランが涙目に。心の中で思った。「フランを止められるのはこの人しかいない」と。 「じゃフランと一回やって!いいでしょ?」 「久しぶりだな…チェス。頑張ってみるかな」 そんなこんなで30分後。 「ほい。チェックメイト」 「えー!?○○つーよーいー!!手加減してくれなきゃこの部屋ブッ壊すかんねー!!」 ここでまさかの衝撃発言。それは言っちゃダメだ。そして逃げちゃダメだ。その奥から冷たいお嬢様の声が。これはキレてるぞ…!? 「フラン…?今何て言ったかもう一回言ってみなさい」 「え――――?」 「ゆっくりと一字一句滞りなく私に聞こえるようにハッキリとね。グングニル投げられたくないでしょ」 「うん…。でもフランは…まだ…何も…」 「嘘吐きは――――弾幕の始まりよ。グングニルの破壊力はフランが一番よく知ってるはず…私の能力もね」 「ふぇぇぇ…」 「ただの冗談。真っ直ぐなのもいいけどもっと周りを見なさい。私の部屋を残骸にする気?」 いやそこは弾幕じゃなくて泥棒だろ。しかも冗談とは言っているが声がマジだ。 「マズいわ…この部屋より先に私達が残骸になる…○○…逃げる用意はいい?頭の中で3回数えたら一気に壁際に下がるから。できる?」 「勿論…感覚はまだあるみたいで」 (*1) 一応咲夜さんと壁際に退避。一方フランは半ベソ状態だ。 「ごめん゛…なざい゛…」 「気にしないの。悔しいのは分かるけどその気持ちをぶつける相手が違うでしょ…?」 あー。泣かせたー。でも優しいところは初めて見た。気持ちよか先にグングニルをぶつける相手がまず違うだろと自虐的ながらも心の中でツッコんでおく。 「咲夜さん…いつもこんなん?」 「そ。喧嘩しない分まだマシよ…本気で喧嘩した日には阿鼻叫喚の地獄絵図なんだから。生きた心地しないもの」 咲夜さんの苦労が分かった気がする。ここまで言わせるんだから相当ヤバいと思われる。 「○○…フランの仇を取らせてもらおうかしらね?」 「…ハイ?これ何て死亡フラグ?」 「行ってきなさい。骨は拾ってあげるから」 「え!?ちょ…咲夜さん!?――――チェスで特攻…か」 チェスでこんな威圧感を感じたのは生まれてこの方初めてだ。 かれこれ20分後。 「チェックメイト。フラン…仇は討ったからね」 「お嬢様…ちょっとは手加減を…」 「絶 対 ヤ ダ」 大人気ないことこの上ない。仮にも相当年上だろ。…とは言えない。言った時点で人生がゲームオーバーだ。ここで意外な来客が。 「随分とまぁ…派手に騒いでるじゃない…寝れやしないわ。ねぇ?レミィ?ここで提案があるんだけど」 「提案って…パチェのは理不尽な条件が多いけど聞くだけ聞くわ」 「ベリーインレイクかプリンセスウンディネならどっちがいい?制限時間は2分。答えが出ない場合は両方ぶっ放すわ」 「パチェ…それ私に喧嘩売ってるの?水は吸血鬼の天敵だってのに」 ちょ…パチェ!?その一言でここが阿鼻叫喚の地獄絵図三つ巴バージョンになりかねないのに何てことを…!! 「嫌なら混ぜて。それが条件」 「最初からそう言えばいいのに…」 うーわー…パチェがドス黒い。お嬢様の表情が引きつってる。ある意味で紅魔館最強かもしれない。 「ふーん…チェスね…咲夜。一戦だけ相手お願いできる?」 「――――へ!?私…ですか!?」 ドサクサに紛れてマヌケな声が聞こえた気がするが気にしない気にしない。 「それと時間巻き戻したりしたら秘密を大暴露するからよろしくね」 「秘密って何ですか!?」 どこまで黒いんだよ今日のパチェは…。そして30分後。 「はい。チェックメイト」 「秘密の件は…」 「最初から秘密なんて知らないけど?でもその顔は…ねぇ?」 「何もないですっ!」 ここでも静かな戦闘が終わったらしい。何だこの紫孔明は。咲夜さんが押されてる。 「この本…結構面白いの。歴史が元ネタでね」 「はぁ…」 そしてさらに意外すぎる人物が。例えれば集合写真の端っこに欠席者で写っている感じだ。 「寒ぅ~…声くらいかけてくれても…」 中g…違う。危ない危ない。美鈴がここに来るのが意外だ。 「「「「「あ。忘れてた」」」」」 「うぅ…酷い…」 そこに魔の手が。フランの目が輝いてるということは… 「あぁー!美鈴!外行って遊ぼ!外!ねーぇー!外行かなきゃ地下室で弾幕やーりーたーいー!」 「はぁ…って…そんな「泣くからね」みたいな目はやめてください!」 やっぱりな。そして美鈴はフランに引きずられて戦場に。敬礼。 「ちょ…助け…お嬢様ー!咲夜さーん!パチュリー様ー!○○ー!まだ逝きたくないですよぉー!!」 「普段の失態を返上するチャンスと思うことね。勝てたらチャラにしてあげる」 「少しフランと遊んであげて。全力出してもいいから」 「門番なんだし…図書館の本の整理より退屈しないと思うけど」 うわ酷ぇ。ここで否定的な意見出したらグングニルと殺人ドールと賢者の石が炸裂するかもしれない。 ――外―― 「遊んでくれてもいーじゃんケチー!禁忌『レーヴァテイン』!!」 「悲しいけどこれ…弾幕なのよね…」 「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「嫌……アッ――――!!!!」 ――中―― 「ちょ…咲夜さん…今すげぇ悲鳴聞こえたんだけど大丈夫かね…」 「美鈴はあれでも妖怪らしいからあの程度じゃ死なないでしょ。後で包帯とか持ってくけど」 サラッと惨いことを…でもこれだけ言わせるんだ。それだけ強いんだと思う。 「ただいまー!ふぁ~…ぁ…眠い…ちょっと寝てくるね」 「この紅美鈴…帰還…もとい生還…しまし…た…」 「そろそろ図書館開けなきゃいけないから私はこれで退散するわ」 「朝食まで私も少し仮眠取るわ」 お疲れ様。美鈴すげぇ。レーヴァテインに耐えてる。ボロボロだが。 そして個人でバラバラに散開してお茶会終了。 午前6時。もう明るい。 「では朝食の用意をしますので。○○。手伝って。美鈴は任務に戻ること」 「「り…了解!」」 ナイスフォロー。あのお嬢様の威圧感はもう物理的な領域だ。指先一つでダウンどころの騒ぎじゃないぞアレは。ニュータイプか? 「助かった…」 「私より先に死なれちゃ困るもの…別に…心配だからじゃないからね。アンタも十分悪運強いんだから」 悟った。ツンデレ属性潜伏中だな。 「今日は昨日の後半戦も含めるからよろしくね」 「え゛…!?」 「さっき『もう少しで上司の秘密を握れるぜ』みたいな顔したからその罰よ」 「そんな理不尽な…」 「アンタ文句あるわけ!?あるなら操りドールと殺人ドールの2択から末路を選ぶことね。上司に殉じられるなら本望でしょ?」 「皆無です!」 「ならよし」 今日はホントにくたばる可能性が大きいな。 まぁ…賑やかだし飽きないからそれもいいか。 ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ1086 暖かな風が桜の花弁を舞わせる頃になった。 春が、幻想郷にやってきていたのだ。 そんなある日、博麗神社では宴会が開かれていた。 目的は言うまでも無く、夜桜。 夜桜の宴。 人妖が集う、美しく華やかな宴―― そして賑やかな宴ならば、それに裏方がいるのもまた道理。 ○○は酒の肴の追加を作りながら、新しい皿や椀を準備していた。 「ふう、こんなものかな」 勝手知ったる――とまでは行かないが、宴会の度にその腕を振るっているので、博麗神社の台所はよくわかっている。 それに、今は紅魔館で執事染みたことをやっているが、そうなるまでの少しの間、ここで世話になっていたこともあった。 出来上がった料理を皿に適当に盛ったところで、戸口の方から彼に声が掛かる。 「お疲れさま、追加は出来た?」 「ええ、咲夜さんもお疲れさまです。はい、こちらが」 声の主は咲夜だった。片付けの分なのか、皿と空き瓶を幾つか抱えている。すぐに重そうなそれを受け取って、代わりに料理を渡した。 「宴も酣ですから、逆に軽めのものに」 「そうね、その方が良いかも。だいぶ出来上がってる面子も多いしね」 「咲夜さんは?」 「今回はあまり飲んでないから。貴方も?」 「料理がすぐに無くなってますからね。少し飲んではこちらに、と言ったところですか」 皿を水に漬けながら、○○は少し迷った後、こう提案した。 「もし宜しければ、それを置いてきた後で一献どうですか?」 「え?」 「いや、まあ、その、ゆっくり桜を楽しむ余裕もそろそろ出来そうですし、どうせなら、と」 少し慌てたように言葉を探す○○を見て、咲夜は軽く微笑する。 「いいわよ。ただ、お嬢様方の様子を見てからになるけれど」 「あ、はい、大丈夫です。では、何か肴を用意してますね」 「ええ」 去っていく咲夜を見送った後、○○は簡単なつまみを用意することにした。 小半刻の後、咲夜と○○は二人して宴の片隅に腰を下ろしていた。 「いや、絶景ですねえ」 「そうね、毎年のことだけど、やっぱり綺麗だと思うわ……外は、違うのかしら?」 「今、これほどの桜を、こんなに落ち着いて見れる場所がどれほどあるか――僕は、知らないです」 そう言って、彼は徳利を掲げ、咲夜の手にしている小さな猪口にそっと注いだ。 「メイドに御猪口というのも、妙な組み合わせですね」 「これしかなかったものね。はい、貴方にも」 「ありがとうございます」 ○○の手にある盃に、咲夜が酒を注ぐ。軽く挙げて、乾杯の代わりにした。 一口喉に流し込んで、○○は空を仰いで大きく息をついた。満天の星に十六夜月、それに映える夜桜。 「しかし良い気分です。良い月夜に夜桜、旨い酒に……それに何より、こうして咲夜さんと一緒に居られて、本当に言うこと無いですね」 「あら、もう酔ったのかしら?」 「まだ素面のつもりですけれど」 その返答にくすくすと微笑って、咲夜も猪口を傾けた。 「貴方はあまり強くないんだから、程ほどにね。あの酔っ払い達の様子を見るに、後片付けが回ってくるのは必至よ?」 「大丈夫ですって」 そう言いつつ手酌をしようとした○○の手を遮って、咲夜が盃に注ぎ足す。 「いいけれどね。酔っ払った貴方は面白いし」 「……それ言われると逆に酔えなくなりますが。何してるんですか僕」 「さあ、何でしょうね?」 楽しそうに、咲夜ははぐらかした。やれやれと思うが、どうやらこのささやかな二人飲みを気に入ってはくれているようで、ほっと胸を撫で下ろす。 「何かやらかし始めたら止めてくださいよ?」 「大丈夫、いざとなったらナイフで止めてあげるから」 「それ止まるのは息の根ですよね?」 じゃれあうような会話をしながら、○○もまた咲夜に酒を勧める。 「咲夜さん、どうぞ」 「ええ、ありがとう」 喧騒を少し離れた、どこか静かな夜桜見。 「心地良い、わね」 「ええ」 何気ない会話を交わしてると、不意に、咲夜が肩に寄り添ってきた。 「さ、咲夜さん?」 「少し、こうしていてもいいかしら」 「……ええ、いくらでも。他ならぬ貴女のお願いですし」 「ふふ、ありがとう」 喧騒が遠い。静かに何も言わず、二人で桜を見上げる。 天には月、地には桜、手には盃、傍らには愛し人。 君、何を以って愉しまざるや。 静かな時間も、杯を重ねるうちに少し変化が起こる。 「あれ……」 「飲みすぎね」 ぐら、と○○の身体が揺れる。瞳に酒精が混じっていた。 「やっぱり、弱いわね」 「申し訳ない……」 「いいわよ、ほら」 咲夜は微笑うと、膝の上に○○の頭を乗せた。 「これで落ち着くかしら?」 「ありがとう……」 うとうとし始めた○○の頭を撫でてやると、すぐに寝息を立て始めた。 この青年はある程度酔うと、前後不覚になるよりも先に寝入ってしまう。 年上の癖に、寝るとあどけない少年のようで、何となく微笑ましくて。 「貴方のこんな姿なんて、こういう時でもないと見れないものね」 眠る彼に向かって、優しい言葉をかける。 宴席の喧騒も、少しずつ小さくなってきた。酔いつぶれた者、まだ静かに呑んでいる者、様々なのだろう。 直に宴も終わる。そうすれば、また彼女達の仕事も出てくるだろう。 だからせめてそれまでは、穏やかに眠る愛しい人と夜桜を、独り占めにしてしまおう。 舞い散る夜桜を眺めながら、咲夜は心の中だけでそう呟いた。 ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ1123 「咲夜さん」 紅魔館の長い廊下、その窓を磨くのも私の仕事だ 少しとおくから、呼ばれた 「あ、○○さん・・・どうしました?」 彼は日光に当たらないように廊下の曲がり角から顔だけ出して、私を呼んでいた 「いえ、救ちゃんから言伝を頼まれまして」 窓を磨いていた手を止め、彼の元まで歩いていった そして廊下の影までいくと、彼は申し訳なさそうに、頭を下げた 「スイマセン、面倒な身体で」 何を今更、もうなれたことだし、仕方のないことだ 「・・・それで、あの子は何て?」 「ええと・・・包帯やらなんやらのストックがなくなってきたので確認に来てできればそのまま買いに行ってください、だそうです」 「ああ、そろそろだと思ってもう注文しておいたわ」 そろそろかと思い注文だけはしていたのだが、実に丁度良いタイミングだった 「流石ですねメイド長」 「まぁ、ね・・・もう慣れたわ」 自分を最強だと疑わず、自らを超える力がないと、決め付けていた ここに来るまでは 生き死にを超越する、運命を操る、万物境界をいじる 驚きと絶望の連続、そして それにすら慣れて、この世界で、生きている自分がいる 「咲夜さん?」 「・・・なんでもないわ」 目の前の彼もだ どうやって吸血鬼に成ったかは知らないが、なんとも吸血鬼らしくない、頼りない、弱い でも、彼のような存在は、私にとって・・・何かとても新鮮だった 「さーくやさーん」 「・・・ねぇ○○さん、この後時間いいかしら?」 「?別に構いませんが・・・」 「一度貴方とはじっくり話して見たいと思ってたんだけどね」 なかなか時間が無くてね、と彼女は笑った 女性の部屋に入るのはすごく、緊張する しかし部屋に招かれるとは思ってなかった 「ほら、貴方も飲んだら?」 咲夜さん、真っ昼間から強そうな酒飲んでますね(棒読み 「だいたい貴方ねぇ、妹様以外の吸血鬼がここに居られるって事がどういうことかわかってる?」 とっくに酔ってるのか、いつもより饒舌な気がした 「歯牙にもかけないということ・・・ですか?」 「そう、その通りよ」 そして興味半分おふざけ半分で、俺を雇っている 彼女の興味の対象は、俺がいかにして、成ったか 「ほら、飲みなさい」 奨められるがままに酒を飲まされた 喉が焼ける、そう思ったとき、グラスを彼女と共有している事に気がついた 唇に変な感触、口紅?いやリップクリームか・・・へ? 「あら、顔が真っ赤よ?もう酔ったの?」 うぁ、メイド長の顔が、近くに 丸いテーブルに手を着いて、俺のほうに身を乗り出して 手の着きどころが悪かったのか、テーブルが古かったのか 俺のほうにつんのめる様に、倒れこんできた ひっくり返るテーブル、滑っていくボトル 転がるグラス、酒を飲んで鈍くなったのか、彼女の力が発動する気配が無い やけに速い頭の回転と、ゆっくり流れる周りの光景 ボトルを掴んで、グラスは、届かない 何より、こっちに飛び込んでくる咲夜さんを がこっ、どすん、パリーン 「・・・」 「・・・なんとか、なるもんだ」 放心したように、と言うかそのものか、ぽーっとしている咲夜さん 俺は椅子に座ったまま、咲夜さんを身体で受け止めて、左手でボトルを持ったこの状況 固まって動けない 「あ・・・○○・・・あ、ありがと」 「い、いえ・・・怪我は無いですか?」 頼りないと思っていた彼の身体は、大きくて 包み込まれるような感覚、ドキドキと早い鼓動 吊橋効果と言う奴か、危ない状況と、異性との接触が重なって、でもこれは 「・・・咲夜さん?もしかして立てませんか?」 「え?・・・ぁうっ!?」 自分が今彼に抱きついて、ぽーっとしている状況をやっと理解し、驚いて、飛びのいた 「さ、咲夜さん?大丈夫なんですか?」 ちがう、このドキドキは、火照った身体は、そんな感情じゃ無い 私が、そんなありえない、こんな拍子に、彼に対して、そんな気持ちを 「○、○・・・」 「さ、咲夜さん?」 心配そうに見つめる彼の目が、止めだった 「ご、ごめんなさいっっ!!」 脱兎の如く部屋を飛び出た 彼の驚いたような声と、引き止める台詞 それを聞こえなかった振りをして、逃げた 初めて感じた、感情に戸惑い、竦んでしまった 彼が追ってこないようにと、日当たりのいい中庭ににげこんだ 「なんなのよ、これは」 これじゃあまるで、物語の中の少女のようだ、と 自分には一切関係ない、そう思っていたのに 「○、○さん」 彼の顔を思い出しただけで、顔がかぁっと熱くなった 数分、数十分前まで、大して意識していなかった相手を たった一度の接触で、こんなことになるなんて いや、彼がここに来た時から、意識はしていた 唯一の男手、出来損ない そうか、意識はしていたんだ それの方向性と、見る位置が変わった 嗚呼、なんだか面倒なことになってしまった よりによって同じ職場、顔を合わせないわけにも行かないのだ どうにか明日までには、この惚けた頭が、冷める事を祈るしかないようだ ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ1157 ペットのヤドカリを観察する時、俺は床にへばりついて横から観察する。そんな 観察をしている時、部屋に咲夜さんが入ってきた。 「ん?何してるの○○?」 「ああ。咲夜さん。ヤドカリの観察ですよ。」 むぅ。この角度からスカートの下はおろか顔さえ見えんな。とりあえず起きあが る。 「そう。面白い?」 「ええまあ。俺のペットなんで。」 「ふーん。じゃ、私も観察させて欲しいわね。」 「どうぞどうぞ」 断る理由は無いだろうし。ヤドカリを踏まないように俺は後ろに退いた。 「んじゃ、お邪魔するわね。」 さっきの俺みたいに床にへばりついて横から観察する咲夜さん。なぜだか微笑ま しい。咲夜さんも結構楽しいらしく。ヤドカリを弱くツンツンしながら笑顔を見せ ていた。 「ん?」 待てよ。落ち着け○○。咲夜さんは、今床にへばりついている。そして咲夜さん はミニスカだ。つまり、これは視線を下に落としたら見える物がある。そうか。こ れは俺が無意識のうちに立てた計画だったのだ!!!1!! 「フフフ。計画通り・・・」 「?」 ようし。ならばその色が何色か見せて頂こうじゃあありませんか。どれどれー。 お? 「白か・・・」 「?!」 しまった。つい口に出してしまった。ヤバィ。これはヤバィ。 「○○・・・」 「いや、これはですね。あの」 何というか。その赤面しつつすぐに起き上がろうとしてずっこけそうになる姿た まりません。はい。 ん?俺何考えてるんだ?咲夜さんは鬼の様な形相をしているじゃないか。さっさ と言い訳を考えて素数を数えなければ・・・1、2、3、5、7、⑨・・・あれ? だが咲夜さんはその鬼の様な形相を解いてため息を吐いた。 「・・・。まあいいわ。○○なら。どうせ見られるの覚悟でやった訳だし。」 「へ?」 ん?「○○なら」?。ん。これはまさかの咲夜さんフラグktkr? 俺は脳内を整理しながら警戒を解く。咲夜さんはにっこりと笑っていた。 そして、 ・・・その次の言葉を俺は理解する時間さえ与えられなかった。 「殺人ドール一発だけで許してあげる。」 にっこりとした笑みが不敵な笑みへと変貌を遂げる。そして俺の周りに発生する 無数の青や赤の柄のナイフ達。 外の世界のお母さん。お父さん。僕はもうオシマイみたいです。 アッー! ───────────────────────────────────────────────────────────
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咲夜14 新ろだ100 秋晴れの風が気持ちいい日。紅魔館の庭では咲夜が洗濯物を干していた。 白いシーツが秋風になびき、鼻歌が風に乗る。 「ん~♪ ふんふ~ん♪ ふふ~ん♪」 「ご機嫌ですね。咲夜さん」 そこに執事長の○○がやってきた。 しかしいつもの燕尾服ではなくつなぎにTシャツ、手ぬぐいを頭に巻いたまるで用務員のような格好だった。 「そうね。天気がいいから久しぶりにいっぱい洗濯物を片づけたわ」 「お嬢様にはあまり良いとは言えませんけどね」 「そうね。○○は?」 「庭の手入れです。結構枝が伸びていたので剪定を」 しばらく軽い世間話を続け、ふと空白がうまれ二人の視線がからまる。 顔を赤らめて、○○に近づくと咲夜は彼と口づけを交わす。 「……んっ」 ○○が目を開けると爪先立ちで肩に手を置いて懸命にキスをする咲夜の顔が近くにある。 ふんふんと鼻で息をして上気した顔は普段の凛としたメイド長からは考えられない可愛さだった。 「んっ、んん、ちゅっ……んふぅ、くちゅっ……ふうんっ、ちゅぴ、んんん……んっ」 どれ位の時が経ったのであろう。名残惜しげに咲夜の唇が離れると頬を赤くしたままはにかむ。 「うふふ……」 指で唇を撫で笑顔になる彼女を見て○○も笑みがこぼれる。 胸の前で握りしめているのが自分の下着だというのもなんだか照れくさい。 そこに一陣の風が吹き、洗濯物が翻ると―― 目を丸くした小悪魔がいた。 「ひゃわああぁぁあぁぁっ!?」 「はひぃいいいぃぃっ!?」 両者驚きで声をあげて真っ赤になる。咲夜なんて茹でダコのようになり、わたわたと○○の下着を振り回し小悪魔も洗濯カゴを持ったままモジモジとしている。 確かにここまで接近されていれば洗濯物など遮蔽物にすらならないだろう。 「こぁ? どこまで見てたんだい?」 「はははは、はいいっ! さ、咲夜さんがは、鼻歌を歌っていたところからですっ!」 つまり全部見られていたということか。 「わわわ、私のことはお気になさらずどうぞごゆっくり~~~~!!」 すごい速さで駆けていってしまった。 「…………」 しばらく二人とも恥ずかしさで動けなかった。 咲夜の紅茶の入れる手つきは慣れたもので優雅さと気品さが溢れ、最近では優しさも追加された。 「その紅茶は誰に持って行くんですか?」 「パチュリー様に頼まれたのでこれから持っていくのよ」 紅茶の良い香りが漂い、○○はカップに鼻を近づける。 それを咲夜はそっと手で制す。 「行儀悪いわよ。これ運び終わったら入れてあげるわよ」 「ああ、ありがとう。咲夜さんの紅茶は美味しいから」 「○○も腕は悪くはないけどね。精進すればまだまだ伸びるわ」 と、またしても視線が絡む。 今度は○○から咲夜に口づけをする。 「……んっ」 彼女の吐息はまるで最高級の紅茶のような香りがした。 しかしそのなごりを楽しむ猶予もなくパチュリーの睨む視線に気づく 「きゃあぁぁあああっ!?」 今度は咲夜だけが声をあげる。 ○○はまたか、という顔だしパチュリーは未だ○○と咲夜を睨んでいる。 「……遅いと思ったらやっぱり乳繰り合っていたわけね」 「ちちちち、乳繰り合ってなんか!」 「パチュリー様、いったいどうしたんですか?」 「ああ、魔理沙が来たからもう一杯紅茶を頼むわ。今度は早めにね」 言いたいことをいうとパチュリーは台所を後にするが最後にドアのところで振り向いて忠告をした。 「それと、所かまわずちゅっちゅしてたら色ボケ夫婦にしか見えないわよ」 その忠告に咲夜はまた気落ちしてしまう。 ○○は変わらないが。もう完全に開き直っている。 「あうう……」 ○○が買出しに向かうということで咲夜は必要なものを纏めたメモを読み上げていた。 「と、早急に必要なものはこれくらいね。はい、これメモね」 渡されたメモを受け取る時、○○と咲夜の指が触れる。 少しあかぎれがあるがそれでも柔らかく、細い指が透けるように白い。 またしても視線が絡まる。そうなればやることは一つだ。 「あ、あと、これもお願いね……」 ポケットから新しいメモを取り出す。 ○○はそのメモを覗き込む。 「……す、少しでいいから」 「……少しでいいんですか?」 「……うん、…………んっ」 今回は軽く触れるだけのキス。 これなら誰にも見つかることはないはず……だったのだが扉から顔を覗かせているフランがいた。 声はあげなかったがずざざざっと○○から遠ざかる咲夜。若干涙目なのが潤んだ瞳から分かる。 やれやれとため息をついてフランに○○は近づいた。 「どうしました? 妹様?」 「あ、え、う、うん……○○がお買いもの行くって聞いたからお菓子買ってきてほしかったの」 「分かりました。いつものでいいですか?」 「うん、いいよ。……○○と咲夜、ちゅーしてたの?」 「はい、そうですよ」 もはや隠す気もない○○。 フランはほにゃっと可愛らしい表情になった。 「いーなー。私もちゅっちゅしたいー」 「そのうち誰か妹様を好きになってくれる人が現れますよ」 「そうかな?」 「そうです」 「早く会えるといいなー。私だけのひと」 そのまま機嫌良く、スキップしながら去っていくフラン。 ○○はヘナヘナと崩れ落ちていた咲夜に手を差し出し、起こしてあげた。 「はぁ……どうしてこう……」 「それじゃ今後いっさい口づけしないことにします?」 その言葉を聞いた咲夜は見る見るうちに不安げな顔になっていく。 今にも泣きそうな咲夜を見て、慌てて○○は取り消す言葉を口にする。 「じょ、冗談ですよ」 「……言っていいことと悪いことがあるわ」 膨れっ面で腰に手を当てて可愛らしいスネかたをする咲夜であった。 「それじゃ行ってきます」 「気をつけてね」 「分かりました」 門まで見送りに来てもらい○○は扉に手をかけるがキョロキョロと辺りを見渡し誰もいないことを確かめると不意打ちで咲夜の唇を奪う。 「きゃっ」 「油断してましたね」 そしてもはやお約束。お手洗いから帰ってきた美鈴と鉢合わせする。 いきなり姿が消えたかと思うと咲夜は美鈴にナイフを突き付けていた。 「いいいい、いきなり何するんですかぁ!?」 「いい? 今会ったことは忘れるのよ。いいかしら?」 「わわわ、分かりました!」 解放され息をつく美鈴。 「そんなに恥ずかしいのならしなければいいのに」 「それじゃ我慢できないんだよ。俺も咲夜さんも」 「ひゃーラブラブですねー。羨ましいです」 「それじゃもう一回みせてあげようか?」 「はいっ!」 「えっ!? ちょっ!」 咲夜に近づき顎をくいと持ち上げ上向きにさせるとじっと瞳を見つめる。 咲夜は顔を赤くして目を閉じると○○のキスを今か今かと待ちわびる。 ○○は顎からすっと手を離し門を開ける。美鈴と咲夜はぽかーんと間の抜けた顔をしていた。 「ふふっ、ああいうものは何度も見せるものじゃないんです。だからさっきのでお終い」 「なっ! き、期待させておいてそれはないでしょ!!」 「咲夜さん! 励むのです!! ○○さんがメロメロになるまで励むんです!」 「ええ! 貴女に言われるのは癪だけど!」 二人のやり取りにくすっと笑うと○○は里に向けて歩き出した。 「……ところで励むってのは……よ、夜の営みのことかしら……?」 「え? もうそこまでいったんですか!」 「わー!! く、口が滑っただけよー! こ、これも忘れなさい!!」 みなの話を聞いてレミリアはため息をついた。 「まったく、あの二人はしょうがないわね。暇さえあればちゅっちゅちゅっちゅして」 「で、どうするの? レミィ」 「決まってるでしょう? 二人を引き離して私が○○を『異議ありです!!』咲夜っ!?」 ドカーンとけたたましい音を立てて扉を開け咲夜が乗り込んでくる。 「いきなりなんでそんな展開になるんですか!」 「いいじゃないの! 咲夜のものは私のもの、私のものは私のものなのよ!」 「どこのガキ大将のセリフですか!」 結局いつものやりとりが始まる。 レミリアも○○のことが気にいっていたのだが、咲夜に先を越されてしまったため何かと理由をつけ○○を奪おうとする。 もはや日常じみた二人の口喧嘩に他のメンバーは静観する。ヒートアップしてきた二人はだんだんマズいことを口走る。 「だいたいその胸はなによ! 詰め物まで入れてまで大きく見せたいの!? ああ、そうでもなきゃ○○が振り向く訳ないわよねぇ」(そこまでよ!) 「これは自前です! ○○が弄ってくれたおかげで詰めなくてもよくなったんです!! それよりお嬢様みたいな幼児体型じゃ彼を満足させることなんてできません!」(そこまでっていってるでしょ!) 「ふん、味わってみなければこの身体の良さは解らないわ! むしろ幼女じゃなきゃ欲情できなくさせてあげるわ!」(ちょっと聞いてるの!) 「おっぱいって触ってくれる人がいないと邪魔なだけですよね」 「肩こりの原因の一つですしね」 二人を止めようと息巻くパチュリーと何処かズレた話を始める美鈴と小悪魔。 そんな中ドアを開けてフランが中を覗き込む。 「やっぱりみんなここにいたんだ。またいつもの喧嘩?」 「あ、妹様。何か御用ですか?」 「うん。○○がおやつ作ったからどうですか、だって」 「それじゃ二人は放っておいてお茶にしましょうか」 「ほらパチュリー様も行きましょう」 「は、離してっ! 私は秩序を守るのよーっ!!」 この言い争いは明け方まで続いていく…… 「ふぅ、お嬢様にも困ったものだわ……」 「あはは」 ○○は睦み合った後にこうして布団の中で話を聞く。主に咲夜が淡々と愚痴を零すのだが○○は嫌な顔一つしない。 それが彼女のストレス発散になっているのだし、聞いてあげることで少しでも負担が軽くなればいいと思っているからでもある。 「ごめんね……毎回愚痴ばっかりで」 「いいですよ。それで咲夜さんの気が晴れるなら」 「……そういうとこ、好きよ。甘えたくなるじゃない」 胸に顔をすりよせ微笑む。○○はすっと手を伸ばして何もつけてない胸をつんと指で突く。 大きくはないが柔らかく張りのある乳房がぷるんと揺れる。 「やんっ。えっち」 「だって咲夜さんが可愛いから」 「褒めてもなにも出ないわよ」 胸板に顔を埋めて上気した顔でほう、と息をつく。 「○○、愛してるわ」 「俺もです」 「眠るまで顔見つめていていい?」 「いいですよ」 「それじゃおやすみ……いい夢を」 しばらくして彼女の重みと温もりに包まれてすうすうと寝息を立てる○○を見つめ、何度か起こさぬようにキスをして咲夜も眠りにつく。 この二人にさすがお嬢様のグングニルも割り込むことはできないようだ。 ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ1509 音もなく、動くものもなく、心なしか色もない、寂寞とした――けれど見慣れた世界。 能力を使えばすぐにでも展開される、私以外の如何なる存在も停止する世界。 私だけの、世界。 それが、これほどまでに口惜しく思えた事はない。 「…………○○」 目の前にいる――いや、「在る」青年。最近、執事としてこの紅魔館に迎え入れた、何の変哲もない普通の人間。 普段なら、そんな者をこの館が受け入れる事はない。ここは悪魔の住処、ただの人間のいるべきところではない。 では何故、彼がこの館に迎え入れられたのか。 決まっている。 お嬢様が、御気に召したからだ。 「……○○……」 解っている。 彼は、お嬢様のモノで。 私は、お嬢様の従者。 その所有はお嬢様のもので、 その自由は、お嬢様が握っている。 ――解っている、のに。 「○○…………」 今、彼はお嬢様と妹様の間に挟まれ、冷や汗をかくような表情を浮かべている。 おそらく、いつものように御二人が○○を取り合い、それを宥めようとして失敗しているのだろう。御二人は今にも弾幕を展開しそうな状態だ。 そしてそのまま、動かない。 動かない。 ――そう。 「○○……○○……」 私が今ここで、どんなに呼びかけても、 「○○、○○」 どんなに叫んでも、どんなに想っても、 「○○っ、○○っ、○○っ!!」 私の心が、彼に届く事はない。 解っている。 そしてそれは、たとえ時が止まっていなかったとしても、同じ。 解っている。 解っている。 ――けど、だからこそ。 「○、○……っ!」 だから、せめて。 せめてこの「時」だけは、私の。 私だけの―― 「――愛してるわ、○○……」 彫像のようになっている彼にそっと口付け、彼の体を抱き締める。 そしてそのまま安全な場所まで移動して、能力の展開を終了する。 再び時が動き始めた後、彼がどんなリアクションを取るか。そんな事を思いながら。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 新ろだ227 2夜連続で行われた紅魔館でのクリスマスパーティー それも咲夜さんと俺を残して皆潰れてしまうという形で終わりを告げた。 そして今は2人で片付けをしている。 「日にち的な意味ではクリスマスが終わりましたね、咲夜さん」 「えぇ、でもまだパーティーの後片付けが終わってないわよ?」 『パーティーは片付けるまでがパーティーなの』 そういわんばかりにテキパキと皿を片付けていく咲夜さん、流石瀟洒なメイド長 確かにそうですね、でも今は・・・・・・ 「咲夜さん」 「なに?」 「渡したい物があるんです」 今だけは、この時だけは、俺とあなたの時間にさせてください。 「これは・・・・・・?」 俺は執事服のポケットに大事にしまっていた小箱を咲夜さんに渡した。 「最初は指輪にしようとしたんですが、仕事の邪魔になるかと思ったんでちょっと趣向を変えてみました」 中身は咲夜さんの象徴、時計とナイフを銀や宝石の欠片で模した小さなペンダント 「中々苦労しましたよ。両方の形を崩さないでうまく組み合った物にするのは」 パチュリー様や魔理沙、アリスなど、そういう技術に詳しそうな人に知恵を拝借してようやくだった。 「そう・・・つけてみてもいい?」 「えぇ。というかつけてもらわないと、せっかく作ったんですから」 ふふっ、そうね――と咲夜さんは嬉しそうにペンダントを身に着けた。 「・・・・・・どう?」 「似合ってますよ」 「よかった。これで似合ってなかったらあなたに悪いもの」 それはない。だってそれは咲夜さんを想って咲夜さんの為だけに作られたもの。 似合わないはずはない。 「ありがとう・・・○○」 瞬間―――心臓が止まるような錯覚に陥った。 咲夜さんが笑ったのだ。 今まで見たことないような笑顔で。 「それじゃあ私からもプレゼント」 「えっ?」 咲夜さんが俺にプレゼント? ―――――シュル 能力を使ったのか、気づけば首に温かみを感じた。 これは・・・ 「マフラー?」 「そうよ。あなた、いつも首が冷えて寒いって言ってたじゃない」 あぁ、そういえばそんなこと言ってたような。 「・・・・・・暖かい、すごく」 「うん。後これはおまけ」 チュ――――― 唇に柔らかいものが触れたのが、咲夜さんの唇だと気づくのに時間がかかった。 「さ、ささささきゅやさん!???」 「うろたえないで、私も恥ずかしいんだから」 確かに咲夜さんは頭で湯が沸かせそうなほど赤くなっていた。 いや、俺もだろうか。 「・・・・・・(//_//)」 どうしよう、なんか気恥ずかしくなってきた。 こんな時は素数を落ち着くんだ、2、3、5、7、11・・・。 「あっ・・・」 頭が冷えたのか、一つ思い出した。 そういえば、まだ言ってなかったっけ。 「咲夜さん、言っておきたいことがあるんですが」 「奇遇ね、私もあるわ」 「じゃあ同時に」 「そうね。わかったわ」 「「せーの」」 「少し過ぎちゃいましたが、咲夜さん。メリークリスマス」 「少し過ぎてしまったけど、○○。メリークリスマス」 来年はきっと過ぎずに言えますよね?咲夜さん。 そう思いつつ、俺は咲夜さんと片付けを再開した。 最愛の瀟洒なメイド長が作ってくれたマフラーのぬくもりを感じつつ・・・。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 新ろだ241 騒がしさを劈く大声が、今日は頭の芯に響く。 今月の二十五日という日は紛れもなく、かの有名な某の誕生を祝う日であり、向こうの騒ぎもそれが故だ。 もっとも、某の誕生を祝う気持ちや心など誰も持ち合わせてはいない。 酒と肴、そして飲みあう仲間さえ居れば、後は名を借りて騒ぐのみ。 ――どこへ行っても、一人は独り。 くずかごの中に積まれた歪な鼻紙を見て、昨日見た外の光景が頭に浮かんだ。 塵も積もれば山となる。人里も、神社も、森も、山も、そしてこの紅い館も、皆が皆、白銀の世界。 小さな明かりが里を彩り、大きな喧騒が館を暖め、どこかの家では眠れぬ夜を愛で語り明かす人達がいるのだろう。 騒ぎ合って、真に結構。 愛し合って、真に結構。 そんな今日ほど、虚しい日はない。 突然、僕には縁のないざわめきが、部屋にずかずかと入り込む。 華奢な造りの扉に目をやれば、今日は休む暇も無く齷齪働いているはずのメイド長が一人。 開けられた扉はすぐ、音も無いまま喧騒のみを締め出した。 「どうかしら○○、具合のほうは」 「あまり」 ベッドの傍の椅子に座し、先程のものとは対照的に、深く包み込むような柔らかい声で咲夜さんは僕に問うた。 自分は今日、その返事を曖昧に濁した。食事の度に様子を見に来てくれる咲夜さんへ、三度も。 「あまりあまりって、今日はそればっかりね。本当に」 「よりにもよってこの日とは……油断、してました」 「熱は」 がさついた自分の手を当てるよりも早く、きめ細かい手を咲夜さんは僕の額に添えてきた。 心地良い冷たさ。この時期にしては殆ど荒れていない、しなやかな肌の感触。 両方とも、いつかは何の気遣いもなく感じれるようになりたい。その決意が、僕には欠けていた。 「……あんまり下がってないわね。明日まで長引くようなら、永遠亭にでも」 溜息と共に自分の額を離れた手は、銀白の前髪に隠された額へとたどり着く。 まだ余韻が残るこちらの額を感じる最中、ふと、自分の腹から不機嫌な音が漏れ出た。 「あー、その……」 「いいわよ。朝も昼も殆ど食べなかったんだから、当然よ」 小さく屈み、一杯になったくずかごの袋の端を結びつつ、咲夜さんは僕の食の細さを嗜めた。 ここに来て三ヶ月ほど経つが、どうやら僕には咲夜さんから弟のように見られている感がある。 一人っ子の自分が咲夜さんに惹かれた根底には、そういった事も流れている。 「ああ、それと。執事が居ないのは適当に誤魔化しておいたから、私以外はここに入らないわ」 あまり人が来ては、落ち着かないでしょうしねぇ―― 咲夜さんの気遣い。一言残されてすぐ、また独りとなった。 今まで咲夜さんを支えていた椅子の上にお盆が一枚。 その上に湯気の立つお椀と蓮華の一組が、所在無さげに佇んでいる。 やがて騒がしさは影を潜め、廊下から妖精メイド達の疲労を帯びたおしゃべりが細々と耳に入ってくる。 数少ない窓があるこの部屋から遠目に見る人里に、もう明かりはない。 熱は、館に静寂が押し迫るのとは反対に、徐々に引きつつあった。 「あ、そうそう、おゆはんの感想を聞いておきたいんだけど」 食器を下げに来たついでか、今晩の感想を咲夜さんからねだられた。 今後の参考にでもするのだろう。しかし、思った以上に言葉は出ない。 見た目、温度、塩加減、それらが全体の均衡を崩さず、見事に調和していた卵かけのお粥。 好みまで考慮された点も含め、正直なところ、一分の隙もないからだ。 唯一隙を突くとすれば、舌の一部分がうまく機能していない所為で、味がぼやけていた点だろう。 ただそれは、咲夜さんの隙ではなく、僕のものであるのだが。 「美味しく、なかった?」 少し八の字に眉を歪め、不安に満ちるその瞳で、咲夜さんは黙り込む僕を見つめる。 本当に美味しい物にはえも言えないが、うんうん唸り、まだ微熱に浮つく頭で無理に吐いた。 「よく、わからなかったです。でも……ずっと、食べていたい味、だった、かな」 「参考にならないですよね」こう付け足し、その場を誤魔化すように笑った。 御椀の湯気はいつの間にか消え去り、後は時の経過に従って冷める一方にある。 「頭おかしい人に聞いても、やっぱり何の参考にもならないわね」 研がれた言葉で乙に澄まされる。瀟洒の名も伊達ではない。 傍からみてもやはりおかしいらしいから、今日は早く寝よう。 枕に頭を横たえて見る咲夜さんは、常にあるどこか凛とした空気を、纏ってはいなかった。 「……ずっと食べさせてあげないことも、ないわ」 十二時の鐘と言葉の始まりが、寸分違わず重なった。 鐘の音がそのように聞こえさせたのか。少なくとも自惚れる自分だけはそう聞こえた。 意味深いような言葉に思わず身を起こし、咲夜さんの顔を見上げてみる。 目の前に立つ人はおくびにも出さず、深く紅い瞳が僕だけを見下ろしている。 「それはありがたいですが、毎日お粥はちょっと」 「鈍いのは、熱のせいかしらね」 鳴り終わった後のそんなやり取り。 咲夜さんの言葉に、僕は気づかされた。 ……いつか打ち明けるはず想いが、不本意な形で伝わってしまったのは合点がいかない。 いずれ、もう一度。熱に惑わされない、真っ直ぐな心を、せきららな言葉で。 「……そろそろ、お嬢様が呼ぶ頃じゃないですか?」 「そうね、もう行くわ。でもその前に」 そう言って腰を屈め、僕が身を横たえるベッドに咲夜さんは左手をついた。 秋波を送り、僕の顎に右手を添え、下に誘われてから少し驚いた僕に、咲夜さんの口の両端が小さくつり上がる。 程なくずいと鼻と鼻が触れぬばかりに近づけられ、甘い吐息が鼻腔を撫ぜ返す。 後には、額に麗しい唇の感触だけを残し―― 「……早く、私を見つけられるといいわね?」 靴は残さず、今日も瀟洒な従者は紅い悪魔の傍へと戻り着く。 窓硝子の外に広がる夜空からは、皓々と輝く氷輪の光が優しく部屋に差し込んでいる。 この光はこの冬限りで、もう少し経てば見れなくなるだろう。 それまでに、きっと―― 一年後の孤独のホワイトナイトに、別れを。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 新ろだ253 「あら、博麗神社の穀潰しじゃない。まだ巫女に追い出されていなかったの」 「ふん。何の用だロリコンメイド。お嬢様中毒は大丈夫なのか?」 もはや日常と化した咲夜と○○の口喧嘩。 今日も出会い頭に罵詈雑言の弾幕ごっこが開幕した。 「何よその態度? 三枚目が何を格好つけてるのかしら?」 「三枚目なのはお前だろ。主にその服の下」 「……ハリネズミになりたいのかしら? このヒモ」 「誰がヒモだ。食い扶持くらい自分で稼いでる」 「その割にはろくなものを食べてないみたいだけど?」 「何を偉そうに。米つきバッタの分際で」 バチバチと火花を散らしながら、○○と咲夜が睨みあう。 外の世界から迷い込んできた人間である○○は、博麗神社に居候している間に、すっかり幻想郷に馴染み、帰ることが出来なくなってしまった。 そんなわけで、人里で仕事をこなしつつ、博麗神社に住み続けている。 人柄の良さが幸いしてか、人妖問わず好かれ、里の人間にも歓迎されるほど、信頼も厚い。 そんな○○と珍しく仲が悪いのが、同じ人間であるはずの咲夜だった。 全く腹立たしい。あいつに会ったおかげで最悪の気分だわ。 咲夜は鼻息荒く紅魔館の門をくぐる。用事も済ましたし、早くお嬢様のお姿で気持ちを落ち着けなくては。 それもこれもあいつに会ったせいだ。 今度と言う今度はこのナイフでハリネズミにしてやる。 そんな物騒なことを考えながら、玄関を通ると、パチュリーが人目を気にしながら、一つの部屋に入っていくのが見えた。 パチュリーが図書館から出てくる、しかもこそこそと。 これがおかしなことなのは、ここのメイドならばすぐに分かること。 いぶかしく思った咲夜は音を立てないように、その部屋に近寄る。 「パチェ遅いわよ。……咲夜には見つからなかったでしょうね?」 「ええ、聞かせるわけにはいかないから」 聞こえてきたのは、主のレミリアと、先ほど部屋に入っていったパチュリーの声。 「でもレミィ、本当なの? ○○が咲夜に惚れてるって」 「ええ、本当も本当、大本当。霊夢からの情報よ、間違いないわ」 ……今、なんて? 耳を疑う咲夜。 「信じられないのよね。あんな喧嘩ばかりなのに」 「好きな娘には素直になれないっていうのがお約束じゃない」 「まあ、どっちでもいいけど、もし本当だとしたら、○○も馬鹿よね。咲夜なんかに惚れるなんて」 「普段喧嘩ばかりだしね。もし咲夜が知ったら、どうなるか予想つくわ」 「さんざんにこき下ろすでしょうね」 「○○もそれを分かっているみたいね。咲夜のことを考えては悶絶してるそうよ」 「悪い奴ではないんだけどね」 「むしろいい方なんじゃないかしら。基本お人好しだし、真面目だし」 「受けた恩は、利子つけて返さないと気がすまないのよね、あいつは。それが仇に対してもそうなのが玉に瑕なんだけど」 「悪口言われると黙ってられないのよね。惚れた相手に対しても」 「まあ、その真っ直ぐなところは、見ていて気持ちいいけどね」 「霊夢がぼやいてたわ。重症だって。口喧嘩した後の負のオーラといったらないらしいわ」 「咲夜に惚れたのが運の尽きね。なんとかして諦めてもらうほかないんじゃないかしら」 「相手が咲夜だしねえ」 部屋の中から二つの溜め息が聞こえる。 どうやら、喧嘩相手だった○○は、自分に気があるらしい。 ……そう言えば、聞いたことがある。心を許したい相手に、素直になれないタイプの人間がいると。 思い当たる節が幾つもある。 ……まさか、本当に? ○○は義理堅い働き者だということは知っていた。 ハクタクからも信頼されているし、二人が言ったようにどこまでも真っ直ぐだ。 喧嘩ばかりだった理由。 いつだったか、「冷たすぎる」と指摘された自分になかった暖かさを、彼は持っている。 それが、とてもまぶしかった。 ……本当は、とてもうらやましかった。 そう自覚した後に生まれたのは、恋慕。 「……わたしも、ずいぶんひねくれ者ね」 まったく、とんだ災難だったぜ。 あそこであんな奴に出会ってしまうとは。まあ、仕方ない。茶でも飲んで落ち着こう。 博麗神社に戻った○○は、すぐにお茶を入れ、お帰りの一服を決め込んだ。 「咲夜のことよ」 「いきなり来て何を言い出すのかと思えば」 「音速が遅いにも程があるぜ」 そこに聞こえてくる三者三様の声。霊夢に魔理沙にレミリアといったところか。 女三つで姦しいとはよくいったもんだ。 しかし、咲夜? あの女がなんだって? 「そろそろ決着ついてもらわないと困るのよ。屋敷がまともに機能しなくて」 「しかし、○○も本気で気付いてないとしたら、恐ろしく鈍感だな」 「地獄行きよ。あんなに大きな好意に気付かないなんて」 ……はい? 「咲夜ったらもう、時を止めるのも忘れてぼんやりして仕事が進まないし。 そう言えばこないだの朝なんかナイフの雨霰だったわ。なんであんな奴が夢にー!? なんて絶叫しながら」 「いっそのこと全部○○にばらしたらどうだ?」 「無理ね。あいつのことだし、罠だとか俺は騙されないとか言い出すわよ」 「全く、咲夜ってば何であんな奴に惚れちゃったのかしら?」 「瀟酒な従者の名が泣くぜ」 「でもまあ、実際仕事振りは見事よね」 「当然。自慢の従者だもの」 「ああいうのに気に入られた奴は、きっと幸せになるんだろうな」 「信じた相手は裏切らないわよね。他人には冷たいけど」 「何だかんだでいい娘だと思うんだけど……」 「○○が気付けば万事解決なんだがな」 「無理無理。好意に対する鈍感を煮詰めて漢方薬にしたような奴よ」 「本当、なんとかならないものかしらねえ」 ……冗談、だろ? あの咲夜が? 恋患い? しかも、相手は俺!? ……そう言えば、聞いたことがある。心を許したい相手に、素直になれないタイプの人間がいると。 思い当たる節が幾つもある。 ……まさか、本当に? ああ、確かにあいつはいい女だよ。悔しいがそれは認めるさ。 だけど、あの愛想の無さはありえない。 ……いや、それこそが、本心の裏返しだとしたら? ひょっとして、俺は酷い思い違いをしていたのかもしれない。 咲夜の気持ちを踏みにじっていた。謝らなければ。 ……違うな。謝るだけじゃなく、咲夜を知りたい。 俺は彼女を知らなすぎる。 だからこそ、今まで平気で喧嘩を売って…… 会いたい、咲夜に。 話したい、咲夜と。 「こんな形で気付かされるとは。……俺も、まだまだだな」 「っ!○○!?」 「のおっ!?」 唐突に聞こえた声は今まで夢想してた少女のもの。 「……咲夜?」 「なんでここに?」 「いや、俺ここに住んでるわけで」 「あ、そうか」 忘れてたわ、と頭を抱える咲夜。 「むしろなんで咲夜がいるんだよ?」 「……お嬢様を迎えに来たのよ。……悪かったわね」 「あ、……いや。……お疲れ様」 「な、なに? 突然」 いつもとは違う反応に戸惑う咲夜。 それを見て顔を赤らめる○○。 「あ~……その」 気まずい沈黙が場に降りる。 「ほ、ほら、レミリア迎えに来たんだろ」 「え、ああ、それじゃあ」 取り繕うように○○が言うと、取り繕うように咲夜は去っていく。 「……まいった。いい女じゃないか」 その後ろ姿に見惚れながら○○はつぶやいた。 最近仕事に身が入らなくて困る。 気が付くと時間を止めて机に向ってる自分がいるのだ。 「……これも違う! どうやって書いたら、この思いを全部網羅するのよ」 「咲夜?」 「お、お嬢様!?」 いつの間にか後ろにいた主に驚く咲夜。 「珍しいわね。仕事をさぼって自室にこもりきりなんて」 「……え? 時間、ああっ!」 「能力を忘れるくらい集中して、一体何を書いていたのかしら?」 「……申し訳ありません」 「休みがほしいのなら、一日くらいはなんとかなるわよ?」 「……いえ、大丈夫です。なにか?」 「ちょっと人里までいってきてほしいの」 「ひ、人里……いえ、かしこまりました」 内心の動揺を隠しつつ、時を止め準備を済まし戻る咲夜。 「それでは行ってまいります」 「あら? ずいぶん丈が長いのね」 着替えたメイド服は、見慣れない膝下までのロングスカート。 「その…… あまり短すぎるのも下品ですし……」 「いままで気にもしてなかったのに? まあ意外な姿にときめく男もいるかもね」 「そ、そんなつもりじゃ」 「はいはい。頼んだわよ」 「……行ってまいります」 そそくさと屋敷を出ていく咲夜を見送りながら、レミリアはほくそ笑んだ。 「ここまでうまくいくなんてね。さあ、最後の仕上げっと」 言いながら、咲夜の部屋へと足を運んだ。 「……眠い」 このところずっと眠りが浅い。 寝付いたと思うと咲夜が夢に出てくる。 一回「そこまでよ」な夢を見た夜なんか、本気で自分を滅したくなった。 「だらしないぜ。霊夢が感染ったか?」 「夜中いつまでも起きてるからよ。なにごそごそ何やってるわけ?」 「いや……まあ、眠れないから気晴らしに、な」 ……咲夜への想いを書きなぐってるとは流石に言えない。 「ということは○○もみたんだよな、さくや」 「は?」 「さくやは綺麗だったなって」 「ああ、そうね綺麗だったわ、さくやは」 突然べた褒めを始める二人。 「お、お前ら何言ってるんだよ」 「お前は思わなかったのか? さくや、綺麗だって」 「いや、……だからな」 「どうなのよ、○○。わたしも知りたい。さくやを、どう思った?」 まさかこいつら、分かってて遊んでるんじゃなかろうな? だがしかし、そうやすやすとからかわれる俺ではない。 「……べ、別にどうとも思わなかったね」 ……からかわれる俺ではない。 「そうか? ○○なら分かると思ったんだがな?」 「そうね。いままで意識してなかったけどあれはあれで良かったわ、十六夜」 「……ぐっ!」 「本当は気付いてるんだろ? 十六夜の良さに」 「言っちゃいなさいよ。さくやは良かったって」 「お前ら……!」 いい加減にしないと本気で…… 「いい眺めだったな。昨夜の十六夜月」 「……は?」 「そうね。満月の後があそこまで風情が有るとは思わなかったわ」 「……なんだよ。月のことか」 「あら、なんだと思ったの?」 「え……? あ、いやなんでもない。なんでもないんだ!」 危ない。バレるところだったぜ。 「変なヤツだな。まあ、いいや。それじゃ頼んだぜ」 「なにが?」 「あ、ごめん。言うの忘れてたけど、今日ここで宴会」 「……そうかい。俺の仕事は決まったわけだな」 「そ。準備よろしく」 「……はいよ」 ○○が去った後二人は顔を見合わせる。 「で、首尾は?」 「ばっちり。ちょっと探ってみたら出るわ出るわ。大量の書き損じと一緒に」 「こっちもだ。レミリアから貰ってきたぜ。同じような感じだったらしい」 「ここまで見事に釣れるなんてね」 「宴会が見物だぜ」 霊夢と魔理沙は心底愉快そうに笑った。 ……最悪だ。まさかこんな時に咲夜と一緒なんて。 準備の手伝いをレミリアが咲夜に命じたために、二人つまみを作るハメになった。 嫌なわけじゃない。嫌なわけではないが…… 「あの」 「なんだ」 「……お酒は」 「……さっき外にありったけだしたじゃないか」 「……あ、ごめんなさい」 「……」 「あのさ」 「なに?」 「味付け」 「もう塩を入れたじゃない」 「……あ、悪い」 「……」 こんな感じできまずいことこの上ない。 おまけに何やら生暖かい視線が気になるし。 ええい。無視だ無視。 「……出来たし。持ってくか」 「え、ええ」 ぎこちなく、体を外に向ければ、ニヤニヤとこちらを見ているのが三名程。 「な、なんだよ」 「いやいや」 「気にしないでいいわよ」 「初々しいわね、咲夜も○○も」 「何言ってんだよ」 とっさに言い返せば、それに続いて咲夜も言い返す。 「誰がこんなやつ」 「む……」 そんなバレバレでまだ意地張る気かこいつ。 咲夜の方を向くと、あちらも俺を睨んでいた。 「おい」 「なに?」 「一言余計なんじゃないか? わざわざ言う必要もないだろう」 「そっくり返すわ。一言余計なのはあなたの方よ」 「……ふん。いいのかそんなこと言って。 今のお前じゃ、俺には絶対勝てないだろ」 「勝てないのはあなたよ。○○。貴方の心は私の物」 「何言ってんだ、お前? お前が俺に惚れてるんだろ」 「……冗談じゃないわ」 「俺だって」 「どこまでも強情ね」 「そっちこそ」 バチバチと火花を散らし睨みあっていると、視界の隅で霊夢が紙切れを掲げているのが見えた。 「○○、これ、なにかしら?」 「え?」 どこかで見た覚えが…… 「って、それは!」 「なにこれ?」 「ぎゃああっ! 見るなーーっ!」 紙を受け取った咲夜の顔が勝ち誇った笑みに変わっていく。 中身は眠れない夜に想いをぶつけた、恥ずかしい言葉の塊。 所謂、恋文。 頭を抱えてると、目の前に再び紙切れ。 「こっちはお前用だな」 「あ、それは!」 受け取って開くと、そこには歯の疼くような甘ったるい文句が書かれた俺宛の恋文だった。 「……」 「……」 「さて二人とも、何か言いたいことは?」 ニヤニヤと、いやニタニタといやらしく笑いながらレミリアが言う。 「……この、悪魔」 「いかにも悪魔だけど?」 よくもいけしゃあしゃあと…… 「……○○!」 突然強い口調で咲夜が切り出す。 「こ、この手紙のことだけど、う、うう、受け入れてあげるわ。 か、勘違いしないでよ。こんなことを書いたあなたが、可哀想なだけだからね」 「お、お互い様だろう。お前こそなんだよこれ。気の毒でしょうがないし、こ、恋人になってやるよ」 申し出は嬉しいが、毎度毎度余計だって言ってるだろう。 「なによその言い方。ありがとうくらい言ったら? まあ、態度でしめしてもいいけど」 「逆だろ。しめして欲しいんじゃないのか」 「あなたこそ逆じゃない。素直になったらどうなの?」 「そっくり返してやるよ、意地っ張り。だいたいお前はさ……」 なし崩し的に展開される口喧嘩。 なぜこんなことになってるのかと我に返り、横を見てみると…… 「いいたいことは言ってしまいなさい。不満を遠慮なく言い合えるのは、理想の仲よ」 「……」 このままでは埒が明かない。こうなったら…… 「よくも恥をかかせてくれたな、咲夜」 「誰のせいよ。恥かいたのはこっちだわ」 「だから……」 反撃の代わりに、咲夜の唇を奪った。 「仕返しに、これからたっぷりと恥をかかせてやるからな」 突然のことに真っ赤になる咲夜に言えば 「やってみなさいよ。返り討ちにしてやるわ」 勝気な笑みでそう返してくる。 近くで歓声が上がっているが、そんなものはもう聞こえない。 今はただ、目の前の咲夜と一緒に…… 生涯続く喧嘩相手と結ばれた初めての夜のことだった。 ───────────────────────────────────────────────────────────
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紅美鈴(美鈴)に対する雑感。身体がエロそう。 割と好きな方なのだけれど、既にキャラが立っていると何となく動かしづらい。 魔理沙やチルノも恐らくそんな理由で動かしづらい。 日付 ネタ 補足 2010/11/15 美鈴とあつあつあんかけ対決したい。「ちょっ、これっ、あっつ!これあっつ!死にますって!これ絶対死にますって!こんなの無茶ですって!」と咲夜さん(セコンド)に叫ぶもまったく無視されて仕方なく必死で戦うことになる美鈴が見たい。 ガキの使いネタ 2010/11/25 美鈴の健康的な太ももで首を絞められたい。美鈴の太ももは艶も張りもあり、なおかつぷにっぷにだから多分真綿で絞められるより苦しい。でも良い匂いがしそう。美鈴の太ももの匂いを堪能しながら死にたい。 美鈴は胸も大きいし太もももむっちむちだし腋も拳法の訓練や戦闘で蒸れ蒸れなのでありとあらゆるところに挟める万能さを持ってる。すごいポテンシャル。ちんこを生やした咲夜さんが美鈴のありとあらゆるとこに挟み込んで性感帯を探す薄い本ください! お気に入り。薄い本シリーズで何気に最初のネタ。 2010/11/26 美鈴の太ももを枕にする夢を見た時、これからは一家に、いや、一人一美鈴の時代がくるな…と感じた。 頭が悪そうな発言だなあ。(他人事) 2010/12/11 紅魔館の面子はプログレが滅茶苦茶うまそう。とんでもなくパワフルで派手なドラムをたたく美鈴、超絶技巧派キーボーディストのパチュリー、カッティングに定評のあるギターボーカルレミリアお嬢様、歪みまくったギターでノイズを生み出すフランちゃん、絶妙なアクセントをつけるテルミン担当小悪魔。 プログレなのにカッティングに定評があるの?ってとこが笑いどころです。(迫真) 2010/12/25 ギターを持った美鈴のおっぱいがストラップによって強調され、とんでもなくエロいことになっているところを想像していたらこんな時間か。美鈴はにこにこと楽しそうにギターを弾きそう。後ウインドミル奏法が何となく似合いそう。「うりゃー!うりゃー!」と叫びながらウインドミル奏法する美鈴かわいい。テンションあがった美鈴がギターを破壊しようとするも綺麗に壊せなくて、奇しくもウッドストックのフーと似たような微妙な空気になって更にテンションがあがる美鈴かわいい。その後ちゃんとジャックの部分だけ壊して満足そうな顔をする美鈴もかわいい。前にも言ったけど、美鈴はバンドだとドラムが似合いそうなので叩き終わった後ダイナマイトで爆破させる美鈴もいい。楽器を破壊して咲夜さんとレミリアお嬢様に怒られるも「いやぁ、何かテンションあがっちゃって…。」とへらへらする美鈴かわいい。 元ネタはウッドストックのザ・フー。ドラム爆破はその時やってないけど。そもそも元ネタのザ・フーが「ツアーで楽器壊しまくってたから一番ノリにノッてた時でも全然お金なかったねハハハ」とか「ドラムを爆破しすぎて耳聴こえなくなってきちゃったわハハハ」とか言っちゃうかわいいやつらなのでかわいいに決まってます。 2011/04/04 幻想郷膝の裏むちむち選手権について熟考していたら一日が終わっていた。やっぱりふともものむちむちに定評のある美鈴が一番かな。きっと膝の裏もむちむちだよね。普段はチャイナドレスで見難いけど、極端なミニスカートを履くともう膝の裏からふとももの裏までがもう一つのおしりになるんじゃないかってぐらいむちむちしてそうだもんね。たまんねーな! 2回読み返したけど全然意味がわからなかった。 2011/04/23 美鈴は飲尿療法やってそうな気がする。「この、私から出たおしっこ…つまり、毒素が入っているわけです…これの気を操り…毒素を抜くことで…私自身と再度同調し…より健康に…なるわけです…。」とか言いながら目の前でおしっこを飲む美鈴こわい。 2011/05/19 美鈴はすぐ焼肉に行きたがりそう。「焼肉行きましょうよ焼肉ー。肉焼きたいんすよー。肉ー。」とか凄くしつこく誘ってきそう。行ったら行ったで「うひゃー!カルビだ!カルビ!焼く!私カルビ焼きます!ロースとカルビ焼きます!」って大声で実況しそうな美鈴かわいい。 美鈴にちんこ生えたら朝早くに全裸でフル勃起しながら紅魔館の門の前に仁王立ちしそう。柔らかい朝日を浴びながら「なんだこれすごくいいわ今日ものすごく清々しい朝だわパーフェクトだわ向かうとこ敵なしって感じだわ。」と涼しい風を感じながら菩薩のような笑顔を浮かべる美鈴かわいい。 美鈴は大人数で居酒屋に行ってもとりあえず生とは言わなそう。メニュー見ながら「どーしよっかなー。カクテルな気分じゃないなー。サワー…。レモンサワー。おっ、マッコリ…?いやでも一杯目からマッコリはなー。」と散々悩んだ挙げ句「じゃあ生中で!」とさっぱりした笑顔で注文する美鈴かわいい。 幻想郷には色々な団体がいるけど、女子会が催されたら一番悲惨そうなのは紅魔館だと思う。美鈴は高い飯ばっかり注文して「え、これワリカンですよね?」って30分に一回ぐらい言いそうだし、パチュリーは途中で寝てそうだし、咲夜さんは仕事の愚痴ばっかり言ってそうだし、小悪魔は咲夜の愚痴を苦笑いしながら聞いてそうだし、フランちゃんとレミリアお嬢様はそもそも呼ばれなさそう。 2011/06/14 美鈴は前戯の時に頭撫でられるの好きそう。「あ、それ良いですね。なんか子供になったみたいで。甘えて良いですか?」って言って頭を差し出してくる美鈴はかわいいし、「あはは、気持ち良すぎてこのままだと寝ちゃいそうですね。」って恥ずかしそうに笑いながら目を擦る美鈴かわいい。 頭撫でるのは好きです。
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美鈴2 5スレ目 13,74,75,76 「皆がお前の名前を忘れても、俺だけはちゃんと覚えているから。だから――俺と結婚してくれ!ちゅうごく!!」 蹴り殺されました →三途の河へ 幻想郷の外から来た俺は、紅魔館の門番である中国と言う妖怪に行き倒れていた所を助けてもらった。 それ以来紅魔館にお世話になり、中国とは友人以上恋人未満辺りにはなったと思う。 だがついさっき、紅魔館門前で中国にプロポーズしたら、何故か中国に蹴り殺された。 ――――回想―――― 「皆がお前の名前を忘れても、俺だけは忘れないから。 ―――だから、俺と結婚してくれ !ちゅうごく !!」 プロポーズの直後、中国はまず赤くなり、何かに気付いて裏切られたような表情になった後にマジ泣き。 「〇〇さんの馬鹿ァッ!」 そして、上段回し蹴りで俺の側頭部にヒット。 ぐしゃり、と何かが潰れる音が辺りに響いた。 ――――回想終了―――― 因みに俺の最期の言葉は「白(グシャり」 痛みを感じる事もなく、次の瞬間には三途の河の前にいた。 「何が悪かったんだろう?」 やっぱりプロポーズの内容がいけなかったのだろうか。 だとしたら、何処の辺りなのだろう…。 やはり、フランやチルノ達に相談して考えたのが悪かったのだろうか ? 「…直球で『好きだ。結婚してくれ、ちゅうごく』の方が良かったのかもしれない」 いや、もしかしたら元々俺の事が嫌いで…… これ以上考えているとドツボに嵌まりそうなので頭を切り替える事にする。 ――そういえば 「どうして誰もいないんだ」 だいぶ前に紅白に聞いたが、死んだらまず小町って不良死神に絡まれるから有り金全部渡して河を渡る……だったかな ? でも実際問題、金なんて持ってないし小町って死神もいない。 と、なればもう最終手段(これ)しかないよな ? 「……泳ぐか」 ここが三途の河なら、渡り切れれば問題ないはずだ。 幸い河の流れも緩いし、なんとか泳ぎ切れない距離でもない。 軽く準備体操をし、深呼吸してから景気良く三途の河へとダイブする。 そしてクロールに移ろうとし、重大な事実と現実を思い出した。 ――俺、泳げないんだった 必死にもがくが、段々と沈んでいく俺の身体。 落ち着け。 こういう切羽詰まった時こそ冷静に、クールになるんだ。 さぁ、落ち着く為にまず深呼ky…「ゴボブばっ!?」 …しまった。 つい水中で深呼吸をしてしまった俺。 んー、これが無酸素状態かー。 冷たいなー、寂しいなー、つーか、水面がとーのいて行くー。 ……などと現実逃避している場合ではない! しーきゅーしーきゅー。 誰か、たーすーけーてー。 …届け、俺のこの毒電波(思い)!の方が良かった……か………? ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ―― 博麗神社 縁側に座り、ズズーっと熱いお茶をすする。 「…暇ね」 もそもそと煎餅を探す。 ……あった 煎餅を一口食べ、またお茶をすすってからまた一言 「…暇ね」 いつもなら魔理沙とかが神社に来る時間なのに、今日は誰も来ない。 煎餅をもう一口噛った。 「…… ?」 何処かで誰かに助けを求められた気がする。 直感だが 「まぁ、いいか」 あまり気にせず熱いお茶をすすった。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ →図書館 「……ハッ !」 どうやら俺は復活した様だ。 危ない危ない。三途の河を渡っていたらどうなっていた事か ――死んでまで死の恐怖を味わうとは思わなかったな 「あれ ?でも、なんで俺生きてるんだ」 先程の上段回し蹴りで、俺の頭は萃香割り……じゃなかった。 スイカ割りのスイカよろしく脳や色々なモノをぶちまけてある意味、十八禁状態だったはずなのに完全に再生してる。 まぁ、とりあえず――生きてるってスんばらしィイイ ! 「生まれて二十年目にして、初めての味わった混乱(生の喜び)に我を忘れてしまいそうだ、ぜ。」 「気がついたのね」 何処かからか声が聞こえたので辺りを見回す。 辺りには本、本、本、本本本本本本本 本本本本本本本本本本本本本本本本本 本本本本本紫もやし本本こぁ本本本本 本本本本本本本本本本本本本本本本本 ――って、あまりの混乱(生の喜び)に、こぁとヴワル図書館の紫もやし、 【ダチェルィ・ナウルゥェッジ】(【】内は巻き舌で)の存在に気付かなかった。 「こぁにダチェリィ「パチュリーよ」……パチュリーが蘇生させてくれたのか ? 」 ダチェリー、もといパチュリーはコクと頷いた。 「ありがとう紫もやし。この恩は三日程は忘れない !」 殴られた。 とりあえず何度も言ってる気がするが 「生きてるってスんばらスィイイ!!」 と叫びながら、こぁを抱き上げてグルグル回る。 「こぁあぁぁあぁああ~~~…… !」 こぁが叫び声を上げているが今の俺は例えレミリアや某真祖の姫君、お子様超魔王や二十七祖全員が同時に掛かって来ても止められない。 ごめんなさい。 嘘です。 まだ死にたくありません 回る回る回る回る回る回る回る回る回る回る回る回―― 「使い魔としてだけどね」 時が止まった。 腕から力が抜ける。 「こぁっ ?!」 手からすっぽ抜けたこぁは、整理中の本の山に弾丸のように飛んでいき、派手な音を起てながら本の山にのまれていった。 「きゅ~~……」 本の山からかわいらしい呻き声が聞こえてくるが残念ながら俺にはそれを堪能する心の余裕がない。 「なに ?」 「だから、あなたは使い魔になったの。私の」 …………… 「 な ん だ っ て ー ?!」 「まぁ、正確にはこの本 ――【転生の書】があなたの主人になるわね」 パチュリーはそう言いながら、黒いボロボロの分厚い本を差し出した。 俺はそれを受け取り、頁をめくってみる。 本に書かれてある文字はどう見ても日本語でも英語でもないのに、何故か読める。 ――内容―― (※簡略化してあります) 【転生の書・黒】 この本の説明 1、死者の死骸と魂を使用し、この書の所有者の使い魔にする 2、使い魔にした者の命はこの書そのもの。一度絶命するたびに頁が一枚づつ消滅し、全て頁がなくなると使い魔の魂ごと消滅する。 また、この書が存在する限り不老である。 3、使い魔の種族はこの書に書き込んだ種族となる。 (この項目の横の名前欄に俺の名前が書いてあり、その下の種族欄には【本の精】と書いてある) 4、ぱちぇ萌え 5、超重大項目 ■■■に■■■■成■■■■■■■、■■■■■少■■■る■■■■■、人■妖 怪■どの■■■■■う。 ■人■■と■■■■る。 (■の部分は汚れて読めない) 6、つまりはパチェ萌え ――――ここまで―――― 一部訳の解らない項目が在ったが……成る程、良い事づくめじゃないか。 中国と一緒に歩くのに、充分な寿命を手に入れた。 「はい。誕生日プレゼント――つまり、それの所有者は〇〇よ」 マジで ? 「マジで」 そういえば、今日は俺の誕生日だったな。 素で忘れてた。 「でもいいのか ?」 いくら俺でもこんな高価そうなものを貰うのは気が引ける。 「いいのよ。人の好意は黙って受け取りなさい」 「……ありがとう。バチェリー」 蹴られました 「よしっ !中国にリターンマッチだ」 図書館を出ようとしたところでパチュリーに服の裾を掴まれる。 「〇〇、もしかしてあなた門番の名前が中国だと思ってる ?」 「……違うのか ?」 パチュリーは盛大に溜息を吐く。 いい ?あの娘の名前はね―――― ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ――紅魔館門前 「おーい !」 赤い髪の少女が振り返る。俺は少女の目の辺りが赤くなっているのに気付いた。 たぶん、ついさっきまで泣いていたのだろう。名前を間違えて覚えられていたの がそんなにショックだったのだろうか 「〇〇さん……よかった。パチュリー様にお願いしたかいがありました」 彼女は少し涙目で、微笑んだ。 ……… 「……ハッ !」 いかんいかん。ついつい彼女に見入ってしまった。 「さっきは名前間違えて覚えていて……ごめん」 深呼吸する。今回は水中じゃない。落ち着け、今回は紫もやしにちゃんと彼女の 名前を教えてもらったじゃないか。 ……よし 「好きだ。俺と結婚してくれ、ほんみりん」 ―― 二回ほど殴り殺されました 残り頁数 ―― 三百五十頁 NG 「〇〇さん……よかった。パチュリー様にお願いしたかいがありました」 彼女は少し涙目で、微笑んだ。 俺の中で何かがうごめいた。 「ひゃっ…?!」 無言で彼女を抱き上げる。 「〇〇……さん?」 彼女は予想外の出来事にまるで小動物のようにキョトンとしている。 ―― 何かが、外れた 「はあう~ ☆お持ち帰りぃい~ !!」 次の瞬間、〇〇は美鈴を押し倒s 省略されました。全てを見るには太平洋の海底で三十回ほど深呼吸してください 6スレ目 258 図書館前の廊下で黒白マホ使いとすれ違ったのが数分前。 俺は今、カレーパンを持って門前にいる。 「…あ~。やっぱり」 ハリネズミならぬナイフネズミになっている美鈴が倒れていた。 「〇〇、さん…?」 美鈴はズタボロの身体を起こそうとするが、力が入らないのかまた倒れた。 「あー…。動くな動くな。抜いてやるから」 そういいながら、美鈴に刺さったナイフを一本一本引き抜いてやる。 最初見た時は寒気というか、何と言うか。 ―― とにかくそんな感じの物を感じたのだが。 最近は慣れたのか躊躇なしに引き抜けるようになった。 幻想郷に来た以上、仕方のない事なのかもしれない。まぁ、俺はまだツイてる方 だろう。 本来なら、常に殺す覚悟と殺され(食料にな)る覚悟をしなくてはならない場所な んだから。 それができるかどうかは別としてだが。 「全部抜けたぞ」 それにしても流石メイド長。 素人目にも全てが急所を外している事がわかる。 「ありが、とう。ござ、います…」 まぁ、刺さっていたナイフの本数は十を軽く越えていたんだが。 「大丈夫、なわけないか」 「はいぃ~…」 聞いているこちらが情けなくなるほど弱々しい声を出す美鈴。 何となく抱きしめたくなる衝動に襲われたが、冷静に考えて美鈴にトドメを刺し てしまいそうなので無理矢理押さえ込む。 「まぁ、いいか。 ―― 美鈴、少し頭を上げてみてくれ」 俺がそう言うと、美鈴は弱々しく頭を上げてくれた。 その瞬間、俺の膝を美鈴の頭と地面に捩込む。 「ひざ、枕…… ?」 「何となくやりたくなったんだ。止めてほしいんだったら止めるけど……」 「いえ、なんだか、安心しま……す」 そう言い終えるなり、スースーと寝息をたてはじめる美鈴。 「……ふあ」 何か眠たくなって来たな。 まぁ、門番はそこでデバガメしている美鈴の部下(?)達に任せて、俺も寝ようか な 意識が落ちる少し前 ―― やさしい風が、頬を撫でた ―― キリトリ ―― 大体の場合、〇〇がひざ枕をされる側なので、たまにはこちらがする側になって も良いと思ふ。 あまりIchaついてない希ガス ↓本音↓ 中国をひざ枕してあげたかった!それだけだ!! ―― キリトリ ―― 6スレ目 295 「君は誰からも名前で呼ばれていないけど、俺はそんな事は無い。 世界中が君を名前で呼ばなくても俺は君の名を呼ぶよ。美鈴」 6スレ目 342 寒空の下、一日中門にへばりつき空を見上げ続ける。 それが門番隊の仕事かというと語弊があるだろう。 門番隊だって数が居るのだから休憩時間くらいあるわけで、 俺と隊長、紅美鈴は詰め所で二人、ぐってりと暖を取っていた。 「今日は一段と寒かったですねー」 「そうですね、でももう少ししたら夜中勤務だからもっと寒いですよ」 ストーブを前に緩みきった表情で美鈴が溢す。 俺はというと歯をガチガチと鳴らしながらストーブに抱きつかんとして答えている。 美鈴は微笑みながら、そんな俺を眺めていた。 「隊長は気が使えるからそんなに寒くないでしょう?」 「あは、それでも寒いものは寒いですよ?」 恨みがましい視線で、穏やかな瞳に抵抗するが、この人には無駄だ。 とびきりの笑顔で、どんな悪意も受け流してしまう人なのだから。 「人肌恋しい」 「あったかいですよねー」 「隊長、膝枕してください」 「いいですよ?」 今、美鈴は何と言ったのだろうか。 何となく口にした冗談だったが、美鈴は変わらぬ笑顔で膝を叩いている。 「え、マジっすか?」 「あは、マジマジ」 俺は暫く固まった後、ようやく事態を飲み込んだ意識を動かして美鈴の隣に腰掛ける。 「……お邪魔します」 「はいー」 ゆっくりと倒れこんで、柔らかい太ももに顔を乗せた。 何というか、思った以上に恥ずかしいことをしているように感じて、熱が上がる。 本当に、言ってみるものだ。 「こんなの皆に見つかったら恨まれそうですね」 「門番隊の皆?」 「えぇ、隊長って女性にも人気あるんですよ」 「あは、それじゃあ……男の子にはどうなのかな」 見上げる顔は困ったようで、一拍置いて朱が混じる。 門番隊に男は俺しか居ない。獲物として血を抜かれそうなとき、美鈴が雇ってくれたのだ。 理由が、粋がいいからと言うのには少し参ったけど。 おかげで今は、里には無い充実した日々を送っている。 「……そこそこ、あるんじゃないっすかね」 「そこそこかー」 美鈴の笑顔が近い。 照れているのが勿体無いような気がして、呆然と見つめ続ける。 なんかもう、最高の眺めだった。主に胸部。 「ねぇ、私も一つお願いしていいですか?」 「はい?」 「ちょっと、名前で呼んでくれませんか? 今だけ」 「……なんでですか」 「名前で呼ばれることが無いんですよ、隊長とか門番で通っちゃいますから」 少しだけ期待した自分が居たのに気づいて、はぁ、と気の抜けた返事を返す。 本当に、狙っているかのようなことを自然と言う人である。 「紅さん」 「名前ですって」 「……美鈴さん」 「さんは余計かな」 「美鈴」 「……はい」 澄んだ笑顔、優しい笑顔、暖かい笑顔。美鈴の笑顔がすぐ近くにある。 膝に乗せた顔が妙に熱い。 「――好きだ」 言ってみる、言ってやる、言ってやった。 初めて手を差し伸べられたときから、ずっと想ってたことを言いのけた。 美鈴の微笑は変わらない。やっぱりなと思いながら、名残惜しく思って膝の温もりを感じておく。 微笑が降りてきた、只でさえ近かったのに、これ以上ないほどに距離が無くなる。 「私も好きですよ」 唇には柔らかな感触の残留が残る。 本当に、言ってみるものだ。 6スレ目 402 俺が紅魔館に住み込んで数ヶ月が経った。 最初、幻想郷に迷い込んだときはもう終わりかと思ったが人間何とかなるものだ。 紅魔館で俺は門の警備を任された。 だが勿論、俺は普通の人間だから魔法なんて使えないし白黒の魔法使いを追い払うことなんて夢のまた夢だ。 だから、俺は紅魔館のお嬢様であるレミリア様やメイド長の咲夜さんから心底呆れられていた。 だけど、そんな俺でも門番でもある美鈴さんだけは違った。 白黒魔法使いに速攻でやられても優しく怪我の治療をしてくれたし何時も俺に笑顔で居てくれた。 そんな彼女に俺はいつしか恋心を抱いていた。 しかし、俺は人間で彼女は妖怪(何の妖怪かは教えてくれない)という大きな差があった。 それが原因で俺は彼女に思いを伝えられないでいた。 そして、そんな意気地が無い俺をよそに幻想郷の時は進みもう新年まで少しとなっていた。 「相変わらず寒いですよね○○さん」 「そうですね。もう手足の感覚も無くなってきていますよ」 今日は本当に寒い。そんな寒い空の下で一日中立っていたら凍死するかもしれない。 事実、手の感覚はほとんど無い。あぁ、温かいスープが飲みたい。 「本当に寒そうですね……そうだ○○さん。手出してください」 美鈴さんに言われ俺が手を差し出すと美鈴さんは俺の手を握った。 「めっ、美鈴さん!?イキナリ何を」 「いや、凄く寒そうだったから手を握って少しでも暖まってもらおうかなって思ったんですよ。迷惑ですか?」 「嫌……暖かいです」 「それは良かった」 そして実質、俺と美鈴さんは手を握ったまま立っていた。 ふと気づいたが手を握ってもらうと自然と向かい合う形になる。 だから、俺の目には美鈴さんの目がある。 いつもと変わらない優しい目だ。 気づいたら俺は自然と美鈴さんに伝えたかったことを言っていた。 「美鈴さん。俺は貴方が好きです」 「え? 何か言いましたか?」 「俺は……俺は美鈴さんのことがずっと好きでした。愛しています」 言った。言ってしまった。美鈴さんは驚きの表情を浮かべている。当たり前だろう。 数ヶ月、ただ一緒に居る俺がイキナリの愛の告白だ。固まるのも当然だ。 「わ、私も……私も○○さんの事が好きです」 だから、俺も美鈴さんの言葉に反応できなかった。 「え? い、今何て」 「私も○○さんの事が好きでした。○○さんと同じでしたね」 あぁ、もしかしたらこの寒さのおかげで俺の告白は成功したのかもしれない。 俺はこの幻想郷で今のところ一番寒いこの日に感謝しながら何時までも暖かい美鈴さんの手を握っていた。 7スレ目 75(6スレ目 402続き) 夕方 紅魔館 正門 ○○視点 寒かった冬が過ぎ去って春を告げる妖精が嬉しそうに飛び回っているが、幻想郷はまだ寒い日が続いている。 無論、この紅魔館も寒さの例外ではなく特に門の番として日々鍛錬と見張りをしている門番達は堪ったものではない。 だが去年、美鈴さんに告白し見事OKを貰った俺にとってはこんな寒さなど関係ない。 俺の心の中は美鈴さんの事で一杯なのである。 しかし、恋人として付き合い始めて短いながらも時間が経ったが未だに言えない事がある。 ……今の俺の本当の気持ちだ。今の俺は真剣に美鈴さんに結婚を申し込みたい…… 確かに去年、しかも冬に告白したばかりで早過ぎると誰もが言うだろう。 しかし、俺はこの幻想郷で短期間だが長い年月を過ぎたような経験をした。 紅魔館で美鈴さんの恋人となった後、毎日美鈴さんと一緒に文字通り血の滲む様な修行に励んだ。 美鈴さんと一緒に職務中に談笑して咲夜さんのナイフに襲われた。 美鈴さんの苦労を少しでも楽に出来るように嫌いな勉学をして魔法を学んだ。 美鈴さんが喜んでくれると願って香霖堂で買ったイヤリングをプレゼントした。 美鈴さんと一緒に年を越した。一緒に神社に初詣にも行った。 美鈴さんから手作りのチョコレートを貰った。 チョコレートのお返しに自分で作ったクナイをプレゼントした。 美鈴さんと一緒に笑った。 美鈴さんと一緒に敵を迎え撃った。 美鈴さんが迎え撃ってボロボロになった俺を看護してくれた。 そんな美鈴さんと恋人としてではなく夫婦として一緒に時を過ごしたい 「○○さん。どうしたんですか?悩みなら聞きますよ」 同じ門番をしているメイド達に話しかけられた。 「いや、ちょっとな……なぁ、お前等ってどう結婚の申し込みされたらOKする?」 「え、○○さん! とうとう美鈴さんに結婚の申し込みですね!」 「ちょ、声でかい! 美鈴さんに聞かれたらどうするんだよ!?」 「大丈夫ですよ。美鈴さん今、お嬢様に呼ばれて館内にいますから」 「そうか……て、お前等今とうとうって言わなかったか?」 「言いましたよ。まさか○○さん、もしかして隠してるつもりでした?」 「……どういう意味だよ」 「そのまんまの意味です。多分、気付いてなかったのは○○さんと美鈴さんぐらいですよ」 「そ、そこまで露骨だったのか……何か、急に不安になってきた」 「でっ、でも○○さんならきっと大丈夫です! でも不安があるなら少しですが付き合いますよ」 「これでも、幻想郷の少女ですから! 今日は咲夜さんも大目に見てくれます!……多分」 俺はメイド達に感謝し、結婚の申し込みの必勝法を教えてもらう事にした。 役に立つかはどうかは別として。 同刻 紅魔館内 レミリアお嬢様の部屋 美鈴視点 「で、中国。貴女の気持ちはどうなの?」 え~と、門の番として今日は真面目に勤務していた私は咲夜さんに呼ばれてお嬢様の前まで来て…… 私……何かしたっけ?後、私の名前は中国じゃなくて美鈴です。紅 美鈴。 「え~と……あの~お嬢様?一体、何のお話でしょうか?」 「何を言って……まさかまだ○○から何も聞いてないの?」 「○○さんからって……特に思い当たる節が無いのですが……」 「あの、小心者は……仕方ない。じゃあ、私から言ってあげr」 「お嬢様、そういうのは直接本人から聞かないと意味が無いですよ」 本当に私は何で呼ばれたんだろうか。目の前では、お嬢様が咲夜さんに口を塞がれている。 コントかなぁ?でも違ったら絶対怒られるだろうから笑わない方がいいなぁ。 「分かった咲夜。分かったから手を離して。ゴホン、美鈴。貴女は○○の事をどう思っているの?」 お嬢様が聞いてくる。あれ、中国じゃない。 「え、○○さんですか? とても優しくて良い人だと思いますけど」 「そうじゃなくて、貴女は○○の彼女なんでしょう。その彼女としてどう思っているか聞いているの」 「彼女として……分かりません。でも、絶対に離れたくないです。」 もっと○○さんと一緒に門番を続けたい。 もっと○○さんと戦いたい。 もっと○○さんの笑顔が見たい。 もっと○○さんと話したい。 もっと○○さんと一緒に時を過ごしたい 「それが貴女の気持ち?」 お嬢様が尋ねる。だから私も答える。私が○○さんに言いたい本当の気持ち。 「ハイ。私は……」 私はお嬢様に自分の気持ちを伝える。私が○○さんをどう思っているか。 私の話を聞いているお嬢様の表情は何時もと違う気がする。 「……そう、分かったわ。戻っていいわよ。あぁ、今日はもう仕事に戻らなくていいわ。○○も」 「分かりました。では失礼します」 そして、私はお嬢様の部屋から出て門に向かった。 美鈴が出て行った後、部屋の中で咲夜はレミリアに尋ねた。 「お嬢様。あの二人、どうなりますか?」 「その答えは言わないわよ。だって直ぐに答えは出てくるんですもの」 「そうですか」 「それにしても今日は良い日ね。こんなにも月が紅いんですもの」 館を出ると幻想郷はもう夕方から夜へと変わっていた。 門では○○さんがメイド達に礼を言っていた。そして、私は気づいてこっちを見た○○さんに言った。 「○○さん。今日はもう終っていいとお嬢様が言ってましたよ」 「そうですか。じゃあ、今から散歩にでも行きませんか?」 どうせ、この後は用事が無いので○○さんの提案に乗り散歩に出かけることにした。 夜 幻想郷 夜空 ○○視点 俺と美鈴さんは今、幻想郷の空を飛んでいる。眼前には幻想郷を照らす月が見える。 何故、俺が空を飛べるかというと、簡単に言うとパチュリー様から教えてもらった最初の魔法のおかげだ。 俺の隣では美鈴さんが風を受けて気持ちよさそうに目を細めている。 さっき、(自称)幻想郷の少女であるメイド達に教えを受けていたが、さっぱり役に立ちそうになかった。 どれもこれも自分の恋愛感を言うだけ言って後は頑張れの一言で終っていたからだ。 やはり、自分の気持ちを正直に言おう。 「美鈴さん。俺達が始めてあったときの事、覚えてます?」 俺は、空の上で止まって美鈴さんに尋ねる。美鈴さんも止まって答えてくれる。 「勿論、覚えてますよ。今日と同じ紅い三日月の夜でしたね」 「そうです。あの時、美鈴さんが来なかったら俺は多分、妖怪の餌でしたからね」 「そうでしょうね。初めて紅魔館の門番になったときも生傷が絶えませんでしたからね」 「そうそう。懐かしいですね」 そんな俺と美鈴さんが始めてあった時からを笑いながら話す。 それだけでも幸せだった。でも、人間とは欲が深いものである。 この幸せをもっと増やしたいと思うのも人間としては当然だろう。 「美鈴さん。俺が美鈴さんに告白して何ヶ月が経ったか分かりますか?」 「問題ですか? え~と、5ヶ月ぐらいですね」 「そうです。で、美鈴さんに言いたい事があるんです」 「何ですか?」 俺は意を決する。断られても後悔などしない。するはずが無い。 だから、俺は言う。目の前に居る最愛の人に俺の考えた単純で最高の言葉を 「美鈴さん。いや、美鈴……結婚しよう」 幻想郷の時が止まった。いや、実際には動いているが俺には止まったような気がした。 多分、俺の顔は月に照らされなくても紅いだろう。 よく見ると、美鈴さんの顔も紅く染まっている。それは月の光なのかはどうかは分からないが。 某日 紅魔館 中庭 ?視点 今日は、この紅魔館でパーティーが開かれていた。 主催はレミリア。しかし、主役ではない。 主役は、黒いタキシードに身を包んだ男と純白のドレスを着た女。 「ね、言ったでしょう。直ぐに答えは出てくるって」 そう、呟いたのは小さき吸血鬼。 しかし、その言葉は男と女を祝福する声の中に消えていくだけだった。 以下、後書き 御覧いただき真に有難うございます。現行スレ 55です。 この作品はプロポスレ@Wiki美鈴2の6スレ目 402 の後日談です。 しかし、 402の話を見ていない方も居ると思いましたので始めて呼んでも話が分かるようにしました。 まぁ、個人的な意見としては是非 402の話も読んでいただきたいところですが強制はしません。 長々と書き続けましたが以上、これにて了です。有難うございました。 6スレ目 657-661 「○○、いるの?」 「あ、はい。今行きます」 幻想郷に来て早一ヶ月。 異能の力を持つが故に現世の人達から弾き出され、森を浮浪者のごとく彷徨ってて、ようやく出た場所がここだった。 森の中でリボンを付けた女の子に食われかけ、あわやというところを今俺を呼んだ紅魔館のメイド長、十六夜咲夜さんに助けられた。 それ以来、俺はこの館の主人であるレミリア=スカーレット様に気に入られ、ここで執事として生活している。 ……執事と言っても名ばかりで、実際の仕事は炊事やら洗濯やら掃除など。これってメイドの仕事だよな……? まぁ同僚のメイド妖精はこれっぽっちも役に立たないし、咲夜さんに全ての仕事を押し付けるのも男として居心地が悪いので、この待遇で満足している。 ああ、レミリア様に血を与えるという仕事が俺専用にあった。他にも妹様の遊び相手とか……俺、そのうち死にそう。 俺は一応他の一般人とは違い、特殊な能力を持ってはいるが、そんなもんここの人達に通用するわけがない。レベルが違いすぎる。 ていうか、ここの人(人じゃない御方ばっかりか)たちどうやって空飛んでんの…… 「咲夜さん、何か用ですか?」 「どうもまた命知らずな侵入者がやってきたみたいなの。美鈴が壁の修理をしてるから、手伝ってあげて」 「承知しました」 俺は恭しく頭を下げる。 ここの人達は皆強力だ。俺なんか小指一つで成す術の無いまま殺されてしまう。マジで。 俺は死にたくない。だから礼節は欠かさず守っている。 咲夜さんは同じ境遇だからなのか、よく親切にしてくれるけど… 「美鈴さーん」 「あ、○○さん!」 俺が声をかけると、美鈴さんが嬉しそうな顔で振り向いた。 美鈴さんは一見人間に見えるが、妖怪だ。中国系の服装を身に纏い、紅魔館の門番を仰せつかっている。 彼女はどうも周囲に男っ気が無かったらしく(というか、俺のここでの知り合いは女性ばかりだ)、新しくこの館で仕えることになった俺を可愛がってくれている。 「咲夜さんに言われて、壁の修理の手伝いに来ました」 「あ、じゃあここにセメントあるから塗ってって」 「はい」 幻想郷には魔法があるからそれで直せばいいのに……とも思うが、そう便利なものじゃないらしい。 まぁ、紅魔館で唯一魔法が使えるパチュリー様は外に出ない人だからな。 しばらく修理作業に没頭していると、ふと美鈴さんが怪我をしていることに気付いた。 「その傷、大丈夫ですか?」 「え? ああ、このくらいなら平気ですよ」 「侵入者、強かったんですか?」 「まさか、スペルカードを使うまでも無かったですよ」 美鈴さんはにっこり笑う。 この人の強さは知ってるけど、それでも女の人が傷付くのは正直いただけない。 「あまり無理しないでくださいよ」 「心配してくれてるんですか?」 「そりゃ……まぁ」 「大丈夫ですよ、お姉さん強いんですから!」 えっへん、と美鈴さんが胸を張る。 この人はどうも俺に対してお姉さんぶろうとする。何でも他の人からは自分の扱いが酷いからだかなんだか…… ちなみに胸を張ったとき、そのたわわに実った大きな胸がブルンブルン…… ……ゲフン、ゲフン。 修理が終わったところで丁度昼食の時間になった。監視用の妖精を残し、美鈴さんと食堂に向かう。 メイドの妖精たちは自分たちの食事を作ることしか出来ないので、自分の食事は自分で作らなくちゃいけない。 ……何のために妖精を雇っているのか、理解に苦しむ…… 「今日は○○さんのためにご馳走しちゃいますよ」 「え? でも悪いですよ」 「いえいえ、手伝ってくれたおかげです」 「でも手伝ったのは咲夜さんに指示されたからで……」 「もうっ、お姉さんのいうことは素直に聞きなさい!」 美鈴さんがぷりぷり怒る。 これ以上の遠慮は失礼だし、身の危険も感じてくるので、仕方なく承知する。 怒った顔も可愛いなぁ……と思ったのは秘密だ。 美鈴さんは大きなフライパンを軽々と操り、想像に違わず炒飯を二人前作った。 「いただきます」 俺は感謝の意を込めて手を合わせて頭を下げ、レンゲで炒飯を掬って食べる。 ……ふと隣を見れば、美鈴さんがジーっと真剣な目でこちらを見ていた。感想が聞きたいのだろう。 「美味しいです、凄く」 「良かった!」 美鈴さんが満面の笑みを浮かべる。 「みんなせっかく作ってあげても何も言わずに食べるだけで……○○さんの口に合って良かったぁ」 そう言って微笑む美鈴さんは……とても綺麗だ。 その後無我夢中で炒飯に喰らい付いていると、 「ねぇ、○○さん」 と、美鈴さんが俺の名を呼んだ。 俺も食べる手を止めて、 「はい、なんでしょう」 「○○さんって、いつも一歩引いてますよね」 「……はい?」 「私、○○さんが笑ったところを見たことがないなぁ」 美鈴さんは両手を組んで、そんなことを仰られる。 ……そんなこと言われても、困る。 「笑ってるじゃないですか」 「いえ、○○さんの笑い方は社交的な感じがします。心の底から笑ってません」 「……」 真剣な表情で顔を覗き込まれ、思わず目を逸らしてしまう。 確かに、そのことについて思うところが無いわけでもない。 この幻想郷に来て、いきなり食べられそうになったあの恐怖。 トラウマ、と呼ぶべきなのだろうか。あれ以来、どうもここの人達に対して心の内を開けない。 「……すみません」 「あ、べ、別に責めてるわけじゃありませんから、そんな辛そうな顔しないでください」 「そんな顔してました?」 「ええ」 そうか。 辛いのかな、俺…… 「ねぇ」 美鈴さんが俺の手を取る。 思わず胸が高鳴ってしまうが、なんとか表情には出さずに済んだ。 「もう少し、肩の力を抜いていいと思いますよ。確かに、ここは外の世界とは環境が違うでしょう。 でも、みんな――少なくともこの紅魔館の人達は、貴方をどうこうしようなんて思っていません。 貴方はもう幻想郷の住人なんですから、もっとこの世界を楽しんだ方がいいですよ」 握った手から体温が伝わる。 体温だけじゃなくて、心も……伝わった、気がする。 「なんとか……頑張ってみようと思います」 「はい、頑張ってください! 大丈夫、○○さんを害そうとする輩は私が成敗しますから!」 「……ははっ、期待してます」 外の世界を追い出されて。 ここに来て、いきなり殺されかけて。 色々波乱万丈な人生を歩んでるけど、俺、ここで頑張っていこう。 目の前の、この人が俺を信じてくれる限り…… 「……まぁ手なんか握っちゃって羨ましいわねぇ」 「!?」 「ささささささ咲夜さん!?」 突然声をかけられ、慌てて握った手を離す。 見れば、そこには変ににこやかすぎる笑みを浮かべた咲夜さんが…… 「○○、ちょっといらっしゃい」 「はっ、な、何か御用でしょうか」 「ええ、仕事を頼みたいの。仕事を……ね」 咲夜さんは目を紅く染めて……紅!? ……怖い。行きたくない。 「た、助けてお姉さん」 「む、無理です」 「さっき私が成敗しますとか言ってたじゃないですか!」 「お姉さんにも出来ることと出来ないことがあるんですー!」 「早く来なさい!」 「はい!」 ああ、頑張ろうと誓ったばかりなのにくじけそうです。 誰か俺を助けてください。 「大丈夫よ、あまり痛くしないから」 「痛いことするんですか!?」 へるぷみー。 7スレ目 217-218 紅い館の玄関を開け、何時ものように歩を進める。 俺は軽く手を挙げながら、真剣な目つきで門の傍らに立つ彼女に声を掛けた。 「よう、美鈴」 「あ、○○さん」 「今日もお勤め、ごくろーさんです」 挙げた手をそのまま曲げて、軽く敬礼のマネゴトなんぞをしてみせる。 「どうも。 ○○さんは…散歩ですか?」 「うんにゃ、昼飯。 たまには外でと思ってな」 そう言ってもう片方の手に持った包みを見せると、急に彼女がもじもじしだした。 「あー…うー…そのぉ」 「どした美鈴?」 意味のない言葉と共にぐねぐねと身を捩る美鈴。その目は俺の持つ包みに注がれて…って 「…もしかして、昼飯?」 「はいぃ…午前中の失敗で」 (うおおおおぉぉぉぉ………) 言い終るより早く、どこぞの初号機とタメ張る位の唸り声が彼女のお腹から響く。 やがてそれが収まると同時に、真っ赤になった美鈴が蚊の鳴くような声で、 「抜かれちゃい、まして」 「…それはそれは」 そう言えば少し前に例の白黒魔法使いが来ていたっけか。 「…それで、良ければ分けてもらえない、かな…と」 断る理由は見当たらないが、如何せん量が量だ、分けるには心許ない。 数秒間考えた後に俺が出した結論は、 「よし、俺が軽く作って来てやる」 「え? そんな、そこまでして貰うわけには」 「いいからいいから。 気にすんなよ」 美鈴の答えを一笑に付して、俺は館へとんぼ返りする。 さて、何にするかな? 「ほい、ぅお待たせぇ!」 「わ、早いですね!?」 「はっは。 軽くって言ったろ?」 「はぁ。 で、それは?」 怪訝そうな顔で、俺の手にしたお盆-正確にはそれに乗った楕円形の物体を指差す美鈴。 「うむ、俺のいた世界の食べ物でな。 ヤキソバパンだ」 「やきそばぱん…」 流石に知らないか。 だがなぜ紅魔館に中華ソバやオタ○クソースがあるのか、 俺としてはそっちの方が気にかかるのだが…今度咲夜さんに訊いて見るとしよう。 「こ、これ、頂いても?」 ンな飢餓感に満ち満ちた目をして訊かれるとコッチが恐いですメイリンさん。 「どーぞどーぞ」 「では、いただきます…」 ぱくりと一口かじった美鈴の横に俺も腰を下ろし、包みを開ける。 ふと隣を見ると、俯いたままで小刻みに体を震わせている美鈴の姿が目に入った。 「な、なぁ美鈴? どうかし」 「…お」 「お?」 「美味しいですぅ~…」 よく見ると目じりに涙まで溜めて口をもぐもぐさせている。 「そ、そうか? そりゃ何よりだ」 尻がむず痒くなるような居た堪れなさを感じつつ弁当を口に運ぶ俺の隣、 美鈴が栗鼠の如くパンを頬張る光景は、それからしばらくの間続いたのだった。 「ごちそうさまでした…」 「お粗末さんでした…でいいのか?」 「たぶん」 「そっか」 どちらからともなく笑いが漏れる。 空の弁当箱を包み終えた俺に 「○○さん、その、また…お願いできます?」 「あぁ、ヤキソバパン? お安い御用だ」 「ありがとうございます…」 ニコリと笑う美鈴を見て、俺の心に暖かいものが広がる。 ついでに僅かな悪戯心も。 「ところで…俺からも一つお願いがある」 「はい?」 いざ言うとなると緊張するが、チャンスは今しかないのだ、踏ん張れ俺! 「食休みに…その、膝枕を、だな」 「はぁ、いいですよ。 どうぞ」 「…あれ、意外にあっさり? もうちょっと照れるとか」 「言わないで下さい、これでも心臓バクバクしてるんです」 「そりゃ触って確かめろと言う…いや待て膝蹴りよりも膝枕がいいなぁ俺は!」 さっき食ったばっかの弁当との対面を全力で拒否して、座り直した美鈴の膝に頭を乗せる。 おお、やっぱり女の子の体ってーのはやーらかいもんなんだなぁ…。 「…悪いな」 「はい?」 「こんな状態じゃ門番が出来んだろ」 「いえいえ、これもやきそばぱんのためです」 「左様でございますか」 ある意味正直な返答に思わず苦笑を漏らしてしまう。 そんな俺を見たからか、彼女も笑みを浮かべる。 柔らかな笑顔の頬に、僅かな朱色。 「でも、貴方にこうしてあげたかったのも本心ですよ?」 「…………」 「あのぉ、○○さん?」 まずい、今のは非常にまずい。 完全な不意打ちです、クリティカルです。 彼女の顔を直視出来ず、強引に顔を横に向けながら、何とか一言だけ口にする。 「…眠くなってきたから、寝る」 「あ、もしかして照れて」 「…ぐー、ぐー」 「こら、狸寝入りしない!」 ポコポコと側頭部を打擲されながら、ではあるが。 俺は柔らかな日差しと柔らかな枕と共に、至上の昼下がりを堪能したのだった。 after? 「どうするんだ、この二人」 「しばらくこのまま、が一番かしら」 「………起こさないのか?」 「起きた時の反応が楽しみでしょう」 「…天狗が来て記事になるかも、だぜ?」 「それもまた面白、よ」 「うっへぇ…悪い上司だぜ」 「ぅん…め~りん~」 「くぅ…くぅ…」 7スレ目 293 「ごろん」 美鈴の膝枕。 「んん……めーりん、柔らかい…………」 「もう、何を馬鹿なこと言ってるんですか……」 「ほんとのことだもん……」 「って、ちょっと膝枕でうつぶせは……!」 美鈴のお腹に顔を埋めてみる。 「めーりん、温かい……いい匂い…………」 「もう…………本当にしょうがないですね、○○さんは…………」 抱えるようにして頭を優しく撫でてくれた。 7スレ目 303 今日から、ゴールデンウィークで久しぶりに出かけることにした。 「美鈴は何処に行きたい?」 て、聞いてみたら 「私は、○○さんと一緒なら何処にでも付いて行きますよ」 7スレ目 674 「俺も今日付で門番になった。そんなわけだから頼むぜ相方さん。ああ心配すんな、 俺は思ってるほどヤワじゃないぞ。足腰は強い方だから長時間突っ立ってるのも 苦じゃないし、日射病への防御も済んd……あ?戦力外?うるせーな、どうせ凡人だよ。 だがよ、侵入者を門前に暫く留めておく位は出来るぜ?口は達者だからな。言わば お前が錠前なら俺はドアノブだ、多少は通り難いように渋くなってやるさ……何より、 勤務中はお前を退屈させない、これが俺の最大の任務だ」
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○━・━・━・━・━・━・━・━□━・━・━・━…━・━・━・━☆━・━・━・━・━・━・━・━◇ 【紅美鈴】 . ※最新のステ:- ※最新の変更:- ○━・━・━・━・━・━・━・━□━・━・━・━…━・━・━・━☆━・━・━・━・━・━・━・━◇ 初登場:32スレ49 私の名前は紅美鈴(ほんめいりん) 気軽に美鈴姉さんって呼んでいいよ♪ 【中国】って呼ぶなよ、いいな、絶対呼ぶなよ! 別のスレではくれないみすずだった。どこかのスレでほんみりんとか呼ばれてそうなオカン 紅魔館の門番。わりと気のいい感じ。 「人を奴隷みたいにこき使う 凶悪狂暴メイド長」ッテダレノコトナンダロウ?咲夜さんは違うな、だって咲夜さんは超凶悪狂暴(ry
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■咲夜3 「咲夜お手」 「わん」 「咲夜おすわり」 「わふん」 「うぎぎぎぎgかぁわいいなぁー咲夜はぁ~」 「??」 「よーし、パパ咲夜と一緒に風呂に入るぞぉ~」 カポーン 「こら咲夜!あばれるんじゃない!風呂桶に毛が入るじゃないか!」 「く~ん」・・・ 「ほ~らよしよし良い子良い子、あとでジャンキー食わせてやるよ」 「わん!わん!」 5スレ目 304 ─────────────────────────────────────────────────────────── 月がこんなに綺麗だから、思わず紅魔館の屋根に登ってしまった。 何で紅魔館nかって?消去法でここしか残らなかったんだよ。 まず候補に入ったのが永遠亭。だが、月見だんごに何を盛られるか分かったもんじゃないから却下。 次に候補として上がったのは博麗神社。毎年毎年どんちゃん騒ぎで収集が付かなくなるから却下。 あと、萃香に月見酒の呑み比べなどを挑まれようものなら最悪だ。月見酒はしんみりと嗜むのが通なのだよ。 で、残るは紅魔館。ここは湖が近くて涼むには最高の場所だ。レミリアは霊夢の所に行ってて不在だけど。 ちなみに正式に招待されてないから不法侵入扱いなんだなこれが。カリオストロよろしく壁をよじ登って潜入する。 「よっ、と。おぉ、絶景かな絶景かな」 遠くの山やら空の雲やらが月明かりに照らされて浮かび上がる。手を伸ばせば月さえも掴めそうだ。 しかし風が強い。庭の木々はざわめき、空の雲はもの凄い勢いで流れて行く。 「あら、あなたも涼みに来たの? 呼んだ覚えは無いんだけれどね…」 どうやら先客がいたようだ。屋敷のメイド長が屋根の上で佇んでいた。 この強風でも靴下とスカートの間の絶対領域は揺ぎ無い。少しくらい見えても良いものの… え?何がって?そりゃあ旦那、こっちはスカートを履いたメイドさんを見上げる形になるんだぜ? 「屋根とメイドと夕涼み、か。なんかミスマッチで面白いな」 「もう深夜よ? それに、招待していない客人には即刻退場して頂かないとね」 「堅いこと言うなって。隣座るぞ? だめか?」 そう言いながら腰を降ろす。世の中やったもの勝ちなのだよワトスン君。 「言いながら座らないの。……仕方が無いわね。今夜の月に免じて特別よ?」 「サンキュ。いやぁ、屋根の上から見る夜景はいいなぁ」 「この辺りにはここ以外に建物が無いから、見渡す限り真っ暗よ?」 「なあに、どんなに暗い夜でも俺の北極星はいつでも輝いているから問題無い」 そう言いながら咲夜の肩を抱き寄せ……ようとしたが逃げられた。 「……その程度じゃあ口説いている内には入らないわね」 そうは言っているが、頬が少し紅く染まっているように見えるのは、屋敷の壁の色のせいだろうか? 「その割には顔、真っ赤だぞ?」 「えっ? あ、そ、そんなことは……」 「嘘。暗くて見えないよ」 「っ!?」 おぉ慌ててる慌ててる、こんな珍しい光景滅多にお目に掛かれないからな。いやぁご馳走様でした。 「ま、いつもお仕事お疲れ様ってことで」 「言うようになったわね……仕返しよ」 刹那、時の流れが止まったかと思うと ちゅ 頬に何か柔らかいものが触れた感触と同時に時が動き出す。 「……真っ暗で見えないわね?」 「そ、そうだな……」 「……ふふっ」 「あれ、今珍しく笑った? 笑ったよな?」 「…………さぁ」 うーむ、どうも昨夜さんは難しいな…… 5スレ目 585 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「お嬢様の命令なの。ごめんなさい…」 咲夜さんの声に、いつもの優しさは……ない。 何かの冗談かと思いたかった。しかし、咲夜さんの目の色を見て冗談でないというは分かった。 「…っはは、何でさ」 乾いた笑い。 普段の「オレ」を演じるコトは、できなかった。 「自分では気付いていないみたいだけど、あなたはイレギュラーな存在。 スキマ妖怪の能力もお嬢様の運命操作も通用しない。そんなあなたが負の方向へ目覚めたら……」 幻想郷のパワーバランスは崩れて、世界そのものが崩壊する……か。図書館の主も言っていたな。 つまり、スキマ妖怪の力で元の世界へ戻せないのなら―― あとは俺を殺すしか方法が無いというのか。 いくらイレギュラーな存在とはいえ、今の肉体は生身の人間そのもの。殺すなら今のうちという訳だ。 ぶしゅり。 そんな音と共に、オレは地に伏した。どうやら右足を斬られたらしい。 ……逃がすつもりは毛頭無いってことか。 「他に方法が無かったの。容赦はしないわ」 二度目の衝撃。 銀色に光るナイフの刃が、今度は左足を切り裂いた。 容赦しているんだかしていないんだか、わからない。 足を刺すなんて面倒な事をする前に、腹でも頭でも刺せたのに。 そう。その気になれば、赤子の手をひねるぐらい簡単に、俺を殺せる。 時を止めて、1080度全方位からナイフの集中砲火を浴びせればいい。 何故だか、俺は。 咲夜さんに看取られて最期を迎えられるなら、幸せかなぁ……などと考え始めていた。 それで、気付いてしまった。 つまりオレは、どうしようもなく咲夜さんのコトが好きだったというコトに。 「これで最期ね。何か言い残すことはあるかしら? もう少し抵抗するかと思ったけど、何もしてこないのね」 見れば、咲夜さんはナイフを振り上げている途中だった。 ここで何も言わなければ、彼女はナイフを振り下ろすだろう。 ……だけど、そんなコトは、出来るはずがない。 「馬鹿なこと言うな。俺が、あなたの事を傷つけられる筈が無い。 それに、オレはあなたに殺されたって別に構わない。 最期まで昨夜さんの傍にいられて、オレは本当に幸せだったんだからさ これだけは最期に言っておく」 俺はな。…お前に殺されるなら、後悔なんて一つたりともないんだか…r 急に目の前が真っ白に染まり、俺の身体は地面に崩れ落ちた。 どうやら両足からの出血が予想を遥かに上回る量で、体中の血液が抜け落ちたらしい。 これがウワサの出血多量ってヤツか。 ――ナイフは、いつまでたっても落ちてこない。 当然だ。 咲夜さんは、ナイフを捨てて俺の身体を抱き起こしているのだから。 もう目の前は白一面の世界で何も見えないハズなのに、ふと瞼を開いてみると… 咲夜さんは泣いていた。 あぁ、もう少しだけ……この顔を眺めていたい。 …でも、そろそろ限界だ。 まぁ、単なる貧血に過ぎないだろう。 咲夜さんは必死に何かを叫んでいるけど、もう何も聞こえない。 ――次に目が覚めて、紅魔館か永遠亭のベッドで起きた時に、また彼女に会えると期待して 俺は瞳を閉じた。 Ending No.19 伝えられなかった想い(咲夜編) (後日談を見たければ、ノーマル以上でノーコンティニュークリアをめざそう!!) 5スレ目 599 ─────────────────────────────────────────────────────────── 咲夜さんにアタックをしかける事数週間 努力の甲斐あってか、遂に向こうからアプローチが来た! そう、それは激しい雨の降る日だった…… ……雨は雨でも、ナイフの雨だったけどな! 「う! あああああああああ…… ヒトゴロシーーーッ!! ハァ、ハァ、ハァ いきなり何をするんですか咲夜さん!! 死んでしまうじゃないですか!!」 「あら? 少し激し過ぎたかしら? ごめんなさい。 うふっ、あなたって案外ノーマルなのね。 でも人殺しよばわりはひどいわ。 また今度、あなたの準備が出来てから、ゆっくりと愛を確かめあいましょう、○○」 「さ、咲夜さん! そんな! それが君の愛し方だなんて! 激しいよ咲夜さん! 激し過ぎるでヤンス~~~~~~!!」 正直、反省してる だが俺は謝らない 5スレ目 823 ─────────────────────────────────────────────────────────── 121 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/12(日) 02 16 31 [ 3xLW6UFg ] あーあ、抱いてもいいのよとか誘惑してきたさくよさんをただぎゅっと抱き締めて ちょっとだけ困惑されつつもそっと抱き締め返されてそのままほんわかのんびりしたひと時を過ごしてーなぁー 122 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/12(日) 11 56 56 [ KTEsP7Cg ] 121 さくよさんと申したか 123 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/12(日) 15 17 41 [ 7/c0..Vw ] 121 さくよさん? 咲夜さんじゃないの? ところで、スレちがいで申し訳ないが。 貴方に合うSSを探すスレで紹介している以外に、オリキャラ(ドーリム)小説がのったサイト誰かしらない? 124 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/12(日) 15 25 26 [ N6O1WR7U ] 121を見て本の精を思い出した。 で、 121の内容で本の精を書いてみる。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 「〇〇、私を抱いてもいいのよ」 咲夜(さきよ)がいきなりそんな事を言って来た。 次の瞬間、俺と咲夜は自分の部屋に移動していた。 ―― 恐らく時を止めたのだろう 俺は無言で咲夜に近づく。 「(……所詮は元人間か)」 咲夜は何かを呟いた。 その目に映っているモノ、それは失望。 俺はそれに気付かずに咲夜を抱きしめた。 ―― 数十秒経過 「…〇〇 ?」 咲夜は抱きしめられたまま困惑したような声で俺の名前を呼ぶ。 「んー?」 俺は咲夜の温もりを感じながら、生返事を返した。 ……やばい。なんか、眠たくなって来た。 「どうして ?」 何が【どうして】なのかよく解らない。半分寝ている頭をフル回転させて考える が、全く解らない。 「俺は咲夜が抱いていいって、言ったから抱きしめたなんだけど……」 咲夜はキョトンとした後、笑いを堪えるように肩を震わせる。 その瞳から失望の影は消え、あるのは【呆れ】と少しの【喜び】だった。 そして、現在の情況に今気がついた様に赤くなり、おずおずと俺の身体を抱き返 した。 残り頁数 ――????頁 6スレ目 121-124 ─────────────────────────────────────────────────────────── 223 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 05 25 50 [ ZUVDTdVQ ] 「咲夜さん!! 俺、貴女の事が――ってか既にいないし! 消えたし!」 224 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 05 45 38 [ aB4sagP. ] 斬新な振られ方だw 225 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 06 41 19 [ JhUuo/D2 ] そこは恥ずかしがって逃げたに90crn 226 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 14 03 24 [ x3eeEr8E ] いやいや、幻想卿を出る日がかならずくるから故意に避けてるんだよ。 227 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 14 07 04 [ NwuH/ogg ] 良い方に解釈すれば廊下の影あたりで真っ赤っか……かな。 228 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 15 02 19 [ pYWeKQjI ] そして、廊下の影から○○を見つめるようになる……かな。 229 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 21 38 16 [ QlRGW/MI ] 更に後ろの影からお嬢様が恨めしそうに見つめるように……かな。 230 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 21 45 10 [ jtJDY/4g ] で、その事をお嬢様に見られてさらに赤面……かな。 6スレ目 223-230 ─────────────────────────────────────────────────────────── 歪んだ世界の中を歩いていく。数歩先に見えるのは鬼火。それ以外は出鱈目としか言いようのない空間。 鬼火は道標、この空間で迷わないためのもの。これが無ければ自分自身も出鱈目の一部になってしまう。 どれぐらい進んだだろうか。鬼火の火が広がり、空間の一部が穴になった。 ――その先に見えるのは最近になってありつけた就職先。 穴をくぐり、地面に足を乗せ……られなかった。 「だぁっ!?」 急に足場が無くなり、思わず声を上げる。そのまま回転し、地面に一点倒立。 ……要は着地に失敗して頭からまっ逆さまに落ちた。 「ぷっ、ぷくくく……」 「……っ、くくっ……」 周囲から笑いが漏れる。……よりによって門の近くで降ろしやがって。 「……警備のメイドさん達?頼むから根っこになった俺の頭を地面から抜いてやってほしいんだけれど」 俺の台詞を聞いた瞬間、門の向こうにいたメイド達が爆笑し…… 突然、頭で立った。 この言い方は正確じゃない。詳しく説明すると『爆笑していたメイド達が次の瞬間杭のように逆さまになって地面に突き立ってた』、ということだ。 しかしスカートは裾を紐で縛ってあって捲れていない。……くそう。こういう場合はおふぁんつも丸見えだろうが。 「お帰りなさい、__。荷物はちゃんと紫に頼んだかしら」 そして背後に気配。……どうやったのか考えたくは無いがこの惨状(男的な意味で)の犯人であり、俺の上司でもある人。 「ええ、食料品は食堂の保管庫、消耗品は備品倉庫の方に頼みました。……というか抜いて下さい。これじゃあ生殺しですよ咲夜さん」 スカートの中身を見られたくないからという意外に乙女ッチーな理由で俺の後ろに立った咲夜さんが、思いっきり俺の頭を蹴り飛ばした。 「あだぁっ!」 首の骨に負担がかかり、ちょっと嫌な音が鳴った。 「ふざけていないで納品数のチェックをしなさい。特に食料品は見直しをちゃんとお願いね。場合によってはいろいろしなくちゃいけないから」 何をですか!?そう聞けないのがつらい。 「……わかりました」 痛む首を押さえ立ち上がる。しかし誰もいない。 「相変わらず多忙な人だな……」 ふと地面を見るとメッセージが。 『ポケット』 すぐに今着ている服のポケットを探す。すると紙片が出てきた。 そこに書かれていたメッセージを見て苦笑する。 「……まったく」 そして、地面のメッセージを靴で消して、自分の勤務に戻るために目の前の館……紅魔館へと走った。 *** *** 少し前まではただのイチャスレ閲覧者だった自分が、まさか本当にこちら側へ来れるとは。 幻想郷に着いたとき、最初に思ったのがこの一言だった。 着いた当初はとりあえず村に住まわせてもらい、畑を耕したりしていたが、『ちょっと待て』と心の中で突っ込みを入れられた。 『畑仕事してないで少しは東方キャラと仲良くなろうぜ』 その一言から俺は鍬を放り投げ、受難の日々を送った。 語れば長い話を一気に省略し、現在は紅魔館の使用人として過ごしている。 というわけで、今俺はある部屋の前に立っている。服装は最初に着ていたよそ行きの服と違い、使用人としての制服を身に付けていた。 「メイド長、納品数の点検が終了いたしました」 公私で呼び方を変える性格なので、仕事中は名前ではなく役職で呼ぶ。 「そう、入って」 「失礼します」 中に入ると、咲夜さんが簡素な執務机に乗った書類に目を通していた。 「口頭で報告を頼める?」 「あ、はい。こちらに搬入された物資は搬入前から搬入後のマイナスはありませんでした。ただ……」 咲夜さんに言われ、点検の結果を報告する。 「ただ?」 「何者かがリストに書き込みを加えたようで、必要とは言えない代物まで購入させられましたが」 「……たとえば?」 声が低くなる。 「主に従業員の私物ですね。ゲーム、コミック……中には『おねがいレ○リア』というのもありました」 あえて伏字にしたのはうちの主の尊厳に関わるから、と言っておこう。 「まったく、困ったものね……」 さすがにあきれが行動に出たのか動いていた手が止まり、はあ、とため息をつく。 「いくら__が外の世界を行き来できるからって、呆れたものだわ」 ここで必要なものにはどうしても幻想郷には無い物資も存在する。だけに外の世界を知っている人間が必要だった。 最初のうちは咲夜さんが行っていたらしいのだが、メイド長としての事務もあるために時間が限られてしまう。 そういうわけで俺が来るまでの間はメイド達が交代で物資調達をしていたらしい。 しかし、たまに向こうの人間をいろいろな意味で食べてしまう不遜な者もいたらしく、博麗の巫女も正直頭を抱えていたようだ。 そこでつい最近まで外にいた俺が登場。身の安全と衣食住を保障され、めでたく買い出し要員としての地位を手に入れた。 「正直困りますよ。いつぞやなんて『セー○ームーン』全巻買って来いなんて指示もありましたし」 「馬鹿正直に買うあなたもあなただけれど、ね」 「まあ、セ○ムンについてはフランドール様の希望ですから」 メイドならともかく上司(?)、しかも能力が『すべてを破壊する程度』の妹様に逆らおうものなら残機がいくつあっても足りない。 むしろコンティニューすら出来ない。 「後はこれとか……ですね。メイド長、もとい咲夜さん」 俺が取り出したのは白い袋。 「何で名前で呼んだのかしら……って」 仕事中だというのにプライベートの呼び方を使った俺が気になり、こちらを向いた咲夜さん。 袋の中には一枚のチケットとそのおまけ。 「大丈夫です、他のメイドにも、ましてや紫さんにも気づかれてませんよ。……命がかかってますし」 実は買い出しに出る前に咲夜さんに一枚の紙と言伝を預かっていた。 『これの交換をお願いね』、と。 紙……引換票に書いてあった店名を見たら昔バイトしていたところだったり、咲夜さんってこういうのが好きなんだ、とか思ったり。 そんな感じで買い出し中に交換、彼女の即席スペル『ベクター○ラップ』で封印していた。 そして、冒頭に出てきた紙片にはこう書かれていた。『報告時にブツを持って来い』と。 「恥ずかしかったんですからね。ちょうど付き合いの長かった店長にレジやってもらって、その間ずっとからかわれっぱなしで……」 咲夜さんにブツ……劇場版プリキュア&デジモンのチケット+プリキュアポーチを渡した。 「それは悪かったわ。でも私自身が行こうにも時間も無いし、あなたに頼むしかなかったのよ」 「……役に立てて嬉しいです」 おそらくお嬢様と行くつもりなのだろう。咲夜さんの顔が微笑んでいた。 「報告の続きですが、先ほど言ったとおり余計な買い物をしたせいで少々金銭面でのマイナスがあります。 赤字というほどではありませんが、それなりの節制は必要かと」 館の維持費やメイド達の食費、その他諸々。それをすべてやりくりしているのは咲夜さんだ。 「そう……今月も厳しそうね……」 「まあ、彼女らにもその辺は覚悟をさせておきましょう。以上で報告は終わりです」 そう言って部屋を出ようとした時。 「待ちなさい」 咲夜さんの声が俺に放たれた。 「何でしょうか、メイド長」 「あなたに頼みたい事があるの」 *** *** 「…………言いだしっぺが遅いのもなんだかな……」 現在俺がいるのは幻想郷の外。横○駅地下のトイレの前にいる。 紫さんが無駄に気を利かせてスキマをこのトイレに繋げたのだ。 で。俺が待っている人はもちろん咲夜さんだ。頼みたい事……『一緒に映画を見に行きましょう』という言葉に同意し、こうして外の世界に来た。 咲夜さんはなぜか張り切って二日分の仕事をこなし、後はメイドさん達でも出来る仕事だけを残していた。 しかし、遅い。時間を守らないなんて珍しい事だ。……大方紫さんが軽くからかってるんだろう。 「お待たせ」 「遅いですよ咲……っ」 後ろを向いた瞬間さまざまな感情が俺の中にわきあがった。 ……主に大きかったのが『驚愕』、そして『笑い』。 何しろ、小さいのだ。咲夜さんが。全体的に。 大体で小学校高学年、大きく見積もっても中学生くらいにしか見えない外見。 普段の咲夜さんからは考えられないほどの可愛らしい子供服。 そして……肩に下げられてる特典のプリキュアポーチ。 思わず床に突っ伏していた。バンバン叩きながら笑っていた。 「ちょwwwwwww咲夜さんwwwwwwww」 無論直後にナイフを突きつけられたわけだが。 「今の状態だったらあなたを殺しても少しの罰で済むわよね?」 「ごめんなさい」 ナイフを収め、チケットを取り出した。 「仕方ないでしょ?このチケット親子ペアなんだから」 見てみれば、確かに『大人1名様と小人(3歳~中学生)の1名様』と書いてある。 「でも律儀にポーチを持って歩くだなんて……」 「いいじゃないの別に。子供の姿に戻ったんだからそれぐらい許してよ」 「まあ、ギャップがおかしすぎていいんですけど……って、『戻った』?」 咲夜さんの言葉に疑問を感じた。何故『なった』じゃなくて『戻った』なんだ? 「この姿が私の本当の姿。あっちでは他の連中に見下されない為と作業がこなせるだけの体が必要だったから大人の姿になっていたの」 「……なるほど」 確かにこの姿じゃあ、実力を抜きにしても少し前の俺みたく爆笑してしまいそうだ。……主にギャップで。 「それにね」 咲夜さんが続ける。 「いつも甘えられてばっかりだったから、たまには甘えたいな……とか思ったりしたわけで」 顔がほんのりと赤くなる。 ……あれ?今すごく可愛くなってませんか咲夜さん? 「驚いたかしら?私、中身はまだ子供だから……甘えたい時だって、あるのよ」 あー、うん。これなんて最終兵器侍女長?体格差でどうしてもなってしまう上目遣いとかその指先を弄るしぐさとか…… 「……驚きましたよ。ええ、真面目な咲夜さんにこんなにも可愛い一面があるなんて思いもしませんでした」 「かっ……」 おお、真っ赤になった。お約束すぎますよ咲夜さん。 「……こんな俺でよかったら、思う存分甘えてください。というか俺にだけ甘えてください」 微笑みながら咲夜さんへ言葉を渡す。 「本当に、いいの?」 「ええ」 顔を上げ、年齢相応の笑みを浮かべる。 「ありがとう、__」 思わず頭を撫でようとする手を理性で止め、俺も笑顔で返した。 「それだったら、私の呼び方を変えてほしいな」 「呼び方、ですか?」 「ええ。今の姿でだけ、咲夜、って呼んでほしいの。あと敬語も抜きにして」 一応は年上なんだし、と思っていたが、本人がいいのであれば。 「わ、わかったよ。咲夜……」 つい出そうになる『さん』をこらえていると咲夜さんが吹き出す。 「それでいいの」 笑いながら俺の手を引く。 「ほら!早く行きましょう!」 「あ、ああ」 傍から見れば兄の手を妹が引っ張っているように見えるだろう。 それでも俺は幸せだった。……ようやく見つけることが出来たから。 *** *** 「ずいぶん幸せそうじゃない」 「あ、顔に出ていましたか?」 「ええ。まったく、私は熱いのが苦手なのよ」 「すみません。すぐに室温を……」 「そっちじゃないわ」 「……はい?」 「あなたよあ・な・た。まったく、その立場だからこそ平然としていられるようなものだけど他のメイド達はもう怒り心頭よ」 「はあ……」 「で、彼に返事は?」 「……すいません、仰る意味がよくわからないのですが」 「……呆れた。仕事ばかりに集中するからそうなるのよ」 「すいません」 「話すと彼がかわいそうだけど、あなたのような鈍な者には言わなきゃわからないみたいだから教えてあげる。 前にあなたが彼をキネマに誘った時の『俺にだけ甘えてください』っていう言葉、覚えてるかしら?」 「み、見ていたんですか!?」 「その辺の言及は後にして。アレ、彼からあなたへの告白よ。『君の素顔を俺だけに見せてくれ』……って所かしらね」 「え?」 「ああもうまったくダメだわこの大馬鹿者!しかもその後に『呼び捨てにしてほしいの』だなんて気があるみたいな言い方しちゃって!」 「…………」 「極めつけはその後もたまに仕事を先に終わらせて休んでは外の世界に行ってるそうじゃないの? これで今更『あなたの気持ちに気づいていませんでした』とか言うつもり!?」 「…………」 「……咲夜?って気絶してるし。あーもうこの超絶鈍感娘!……__!__はどこにいるの!?この馬鹿ひっぱたいて起こしてやりなさい!」 *** *** さーくやおねえさまぁぁぁぁ(ナイフ 失礼しました。 現在(2006/12)公開中の映画「ふたりはプリキュアS☆S チクタク危機一髪」は時がテーマらしいので「咲夜さんに見せたいな」とか思ってたらこんな事に。 誰かふたりはアリマリB☆S歌ってくれる勇者はいないのか? 6スレ目 570 ─────────────────────────────────────────────────────────── 今日は、クリスマス・イブ。 そして、幻想郷の住人が紅魔館に集まっている。 外界ではクリスマスを恋人と過ごしているが幻想郷には男が殆ど居ない。 だから、恋愛沙汰は(女同士でない限り)あるはずが無い。 だから、イブは皆が広い紅魔館の大広間に集まって宴会をするのだ。 「お~い、○○も飲もうよ。ノリ悪いな~」 と、萃香が背中から覆いかぶさってきた。 てか、酒ぐらいってレベルじゃねぇぞ! 一体、どれだけ飲んだ!? しかし、周りを見ると確かに他の連中はかなりの量を飲んでいる。 スキマ妖怪と亡霊の姫様は文字通り浴びるほど酒を飲みながら料理を食べている。 ……まぁ、あの人達は別格だから気にしないでおこう。 そもそも、俺はこの幻想郷に来て数ヶ月しか居ない。 ある日、イキナリこの幻想郷に迷い込み途方にくれていた。 そこを、紅魔館の美鈴さんが助けてくれ色々あって今は、この紅魔館で執事をしている。 執事と言っても紅魔館のレミリアお嬢様のお世話では無く、その他、雑用が殆どだが…… その時、この紅魔館のメイドである十六夜 咲夜さんにもお世話になった。 力のチの字にも満たない俺に体術やナイフの投げ方を教わった。 時には、紅魔館のパチュリー様にも頼み込んで魔法を教わらしてくれたこともあった。 本人曰く、 「弱い人間は紅魔館には要らない。だから、強くなってくれないと困る」 だそうだが、俺はそんな一生懸命に教えてくれた咲夜さんに、いつしか淡い恋心が芽生えていた。 「てか、俺は執事だから酔えるほど飲めないんだよ。仕事もあるし」 と、俺は後ろに抱きついている萃香に言った。 萃香は目を丸くしていたが我に返って言った。 「エー、○○ってまだ仕事あるの? ……まぁ良いや。飲めー!!」 「だから、飲まないって言ってるだろうが、この酒乱!」 と、俺は萃香に綺麗な背負い投げを決めた後、大広間から出て行った。 頭が少し、クラクラする。 どうも、酒の匂いに酔ったみたいだからテラスに移動することにした。 俺がテラスに行くと、其処には咲夜さんが一人で空を見ていた。 そういえば、大広間には居なかったな。 こんな所に居たのかと思い、俺は咲夜さんに声を掛けた。 「咲夜さん。なんでここに? 大広間には行かなくてもいいんですか?」 「あぁ、○○。どうも酔いすぎたみたいだからここで休憩してるの」 「咲夜さんもですか。まぁ、俺は酒の匂いで酔ったみたいですけどね」 と、軽く会話を交わしながら俺は咲夜さんの隣に並んで空を見た。 冬の空は視界が澄んでいて星が良く見える。 「匂いで酔うなんて、○○ってそんなにお酒苦手だったの?」 「いえ、アルコールには強いと思うんですけど、どうもあそこの空気は苦手だった見たいで」 「まぁ、あれだけ酒気と妖気に包まれてたら並の人間はそうなるわね」 と、咲夜さんと俺は笑いながら話している。 「そうだ。さっき大広間から出て来るときに持ってきたんだけど○○も一緒に飲む?」 と、咲夜さんが俺にワインを見せてきた。 「頂きます」 「そう。ハイ、グラス。注いであげるわよ」 と、咲夜さんが俺にグラスを渡してそれにワインを入れてくる。 真っ赤な色のワインだ。この紅魔館に良く似合う。 咲夜さんも自分のグラスにワインを注いでいる。 「乾杯」 「乾杯」 と、俺と咲夜さんは二人だけの乾杯をし、ワインを飲んだ。 ワインの味はとても口当たりの良い素晴らしいものだ。 素人の俺が分かる位なのだからさぞかし高い物なんだろう。 そして、飲みながら話すこと数十分。ワインも空になっていた。 しかし、一本のワインを二人で飲んだのに全然、酔いはしなかった。 「さて、じゃあそろそろ戻ろうかしら」 「そうですね。……あぁ、そうだ。咲夜さんに渡したいものがあったんだ」 「私に?」 俺は自分の服の内ポケットから小さな箱を取り出した。 俺に色々なことを教えてくれた咲夜さんにささやかなプレゼントだ。 そして、俺は咲夜さんにプレゼントを渡した。 咲夜さんが箱を開ける。中には懐中時計が入ってあった。 俺が咲夜さんに気に入ってもらおうと香霖堂の店主に頼み込んで貰った物だ。 「気に入ってもらえるといいんですが……」 「……ありがとう、○○。じゃあ、私からもプレゼントよ」 と、イキナリ俺と咲夜さんの周りがテラスでなく紅魔館の屋上になっていた。 これが、咲夜さんの時間を操る程度の能力なのだろう。 紅魔館の屋上は明かりも無く星や月が先ほどよりも明るく見える。 「私からのクリスマスプレゼントよ。気に入ってもらえた?」 「凄い。幻想郷の景色とはこれほど素晴しいものだったんですね。とても気に入りましたよ」 「良かった。じゃあ、もう一つ言いたいことがあるの」 「なんですか?」 俺が聞くと咲夜さんは顔を少し朱に染めていった。 「私は貴方のことが好きになったみたい。良かったら付き合ってもらえるかしら」 今度は、俺の頭の中の時間が止まった。咲夜さんが俺の事が好き? それって、俺も咲夜さんが好きだから両思いって事ですか。 咲夜さんは俺の方を見ている。 だから、俺もその期待に応える。 「俺も……俺も、咲夜さんのことが大好きですよ、喜んでお付き合いさせてください」 そして、咲夜さんに近づき口付けをする。 これほど、このまま一生、時が止まればいいと思った事は後にも先にも無いだろう。 「今よ! そのまま押し倒して!」 「何やってるの○○! もっと咲夜さんを抱きしめて!」 「咲夜さん……お幸せに」 「咲夜、○○。私の了承も無しに恋人とは……まぁ、いいだろう。今日は特別ね」 と、スキマ妖怪のスキマ実況で下の大広間にいる人達全員がこの二人を見ていたのは別の問題。 ――――後書き―――― 皆さん、メリークリスマス・イブ。 今回は、クリスマス・イブということで長編にしてみました。 まだ、至らない点もあると思いますがこれからも頑張って生きたいと思います。 では、最後までご覧くださって有難うございます。 皆様も残り数日を健康にお過ごしてください。 メリークリスマス。 6スレ目 579 ─────────────────────────────────────────────────────────── ―――メイドの仕事、一人じゃ大変でしょう? 俺でよければ、お手伝いさせてくれないかな? 7スレ目 668 ─────────────────────────────────────────────────────────── 事の起こりは数日前……夜雀が俺の家に来てから 『きっといいコンサートになるから来てね!! あ、あと、あなたの恋人も絶対連れてくること! 絶対よ!!』 と、何故かニヤニヤしながら言ったことからだった。 ・ ・ ・ 「ふぅん……いい音色ね、騒霊と夜雀もやるじゃない」 「ふふ、喜んでもらえて何より」 そして今、俺は恋人の咲夜と一緒に夜雀&騒霊のコンサートに来ていた。 咲夜が褒めるだけあり、彼女たちの奏でる音色は素晴らしいものだった。 俺たち以外の全観客が惚れ惚れとして聴き入っているのがその証拠だ。 曲のジャンルがロック、ポップ、クラシックだの バラバラなのも彼女達らしいといえば彼女達らしい。 そして、やけにハプニングが多いのも幻想郷ならではだろうか? 例えば……確か3曲目「魔理沙はとんでもないものを盗んでいきました」を歌っている最中 妙な服を着た謎の5人組が「すぐに呼びましょ陰陽師! Let s GO!」と歌いながら乱入。 さらに、なぜか永遠亭の面々が乱入して「えーマジ初月? キモーイ」だの 「患部で止まってすぐ溶けて高熱などの症状を緩和します」だの歌っており 某混沌教授以上にカオスだったのは忘れられない。 ああ、乱入といえば数曲前 スウェディッシュポップというおしゃれでポップな曲を演奏していたときに 突如として悪魔のような3人組が 「SATSUGAIせよ! SATSUGAIせよ!」 と乱入してきたのはビックリした。 その3人のうち、一番危なそうな奴が 「バイオリン、トランペット、キーボードなど、まとめてレ○プしてくれるわー!!」 と叫んだとたん、キレた騒霊三姉妹の「大霊車 コンチェルト・グロッソ」が発動。 ただ、そいつはマトリックスのような動きで全弾回避してしまった。 スゲェ…… 彼らは、一体何者だったのだろうか? 噂によると、隙間がどこからか呼び寄せたらしいが 定かではない。 なお、咲夜は「SATSUGAIせよ!」の歌に ウットリしてたような気がしたが、気のせいと言うことにしておこう。 と言うか、気のせいであってほしい。 「SATSUGAIせよ……ふふふ」 マジ気のせいであってほしい。 ……そんなこんなでコンサートももう終盤。 俺と咲夜は寄り添うようにして心地よい音色と歌声に耳を傾ける。 そして、演奏されていた曲が終わり―――― 「みんな、今日はありがとう! 本当に……本当に名残惜しいけれど、次の曲が最後になるわ!!」 観客の間に「えーー」という落胆の声が広がる。 もっと、聴いていたかったのだろう。 「残念だな……あと一曲か」 「そうね、私ももっと聴いていたかったわ」 かくいう俺も……そして、咲夜もやはり名残惜しかった。 「これから歌う最後の曲は、このコンサートに来てくれている、あるカップルに捧げます……ふふふ」 へー、カップルかぁ……誰だろうな。 上白沢先生とその彼氏かな? それとも、ドールマスターアリスと●●のコンビか? こないだ、決闘したとか聞いたが……●●が勝って、うまく結ばれあったんだっけか。 あの二人は曲のネタになりそうだしなーーーあっはっはw 「幻想郷初公開! 曲名は――――――――――よ!!」 「「――――は?」」 曲名を聞いた瞬間、俺と咲夜は同時に間の抜けた声を上げた。 そして、俺の頭の中で全てが繋がる。 なぜ、ミスティアは俺をコンサートに誘う時、あんなにニヤニヤしていたのか。 なぜ、ミスティアは必ず咲夜も連れてくるように言っていたのか。 「なお、スペシャルサンクスは文々。新聞記者の射命丸 文さん!! 彼女の情報をもとに、この歌を作ったわ!!」 あいつは―――― ミスティアと騒霊達は―――― 「紅魔館のメイド長 十六夜咲夜 と 異邦人 ○○の愛の軌跡……たっぷり聴いていきなさい!」 俺たちのことを歌にしやがった!! 「ラストナンバー……『十六夜咲夜が倒せない』!!」 うpろだ267 ─────────────────────────────────────────────────────────── 『十六夜咲夜が倒せない』 ―――――― 気がついたら いつもレミリアを狙い そしていつも同じ場所で負けて ―――――― ○○「今日もまた、立ちふさがるか……俺の愛の前に」 咲夜「今日もまた、立ち向かうのね……弱いくせに」 ○○「やかましい! 今日こそ、お前を倒してレミリア様に俺の想いを聞いてもらうんだ!!」 咲夜「懲りないわね…時間も押してるし、30秒で始末してあげる」 ―――――― あきらめずに 殺人ドールに 挑戦するけど すぐに 地に倒れるよ ―――――― ○○「ぐぅっ……あ、諦めて……たまる…か!!」 咲夜「なかなか頑張るわね……なら、もう一発喰らいなさい。幻符「殺人ドール」!!」 ○○「ぎにゃああああああああ!!」 ―――――― 弾幕スペカがあれば ラクに レミリアの部屋に 着くのに ―――――― ○○「ち…くしょ……弾幕やスペルカードさえ…あれば……」 咲夜「まだ喋る元気があるの? なら、もう一発」 ○○「え? いや ちょっと……もういっぱいいっぱいなんですけどってNOOOOOOO!!」 ―――――― 何回やっても 何回やっても 十六夜 咲夜がたおせないよ あのナイフは何回やっても よけれない ―――――― ○○「い、痛い 痛い! ってか、マジ刺さってるんですけど!!」 咲夜「刺してるのよ……そろそろ、終わりにするわ――――」 ―――――― 必死にかわして 逃げ回っても いずれは時間止められる ―――――― ○○「て、てめえ また時間止めるつもりか!? 卑怯ナリよ その能力!! 」 咲夜「黙りなさい侵入者! 幻世『ザ・ワールド』!!」 ○○「……(青年硬直中)」 咲夜「時は止まる……はい、ジャスト30秒でチェックメイトね」 ……… …… … ―――――― 裏口侵入 試してみたけど 完璧メイドにゃ 通じない! ―――――― ○○「くくく……前は失敗したが、ここから侵入すればあの殺人メイドに見つからずに―――――」 咲夜「―――― ネズミが一匹」 ○○「!!??」 咲夜「こんなところで何をしてるのかしら?」 ―――――― だけど 次は 絶対会うために 僕は あいつに勝って 最後に笑ってやる ―――――― (少女(が)ネズミ駆除中) ○○「おーーーぼえーーーーてろーーーーー!!」 咲夜「まったく……しつこいんだから」 (それにしても、あそこまで、強く想い…想われるって……どんなものなのかしら…?) ・ ・ ・ ―――――― 気がついたら ライフもう 少ししかない そしていつも そこでリポDつかう ―――――― ○○「くそ……あの中華門番、てこずらせやがって……ファイト 一発! 諦めてたまるかよ!!」 ―――――― あきらめずに 咲夜さんまで たどり着くけれど すぐに少女処刑中 ―――――― 咲夜「最近、レミリア様を狙う あなたを見てると不愉快になってくるわ……」 (私、最近おかしい……この男を見ていると…胸がもやもやして…落ち着かない。) ○○「え? ひょっとして今日機嫌悪いのかってミギャアアアアアアアアアア!!」 ―――――― 紅色マジック あれば ラクに 咲夜さんは たおせるけど ―――――― ○○「くそぅ……マジ許さん この殺人メイドめ……だが! 今日の文々。新聞の記事から得た情報によると――――」 『紅色マジック : レミリアを倒せば入手できる。咲夜の弱点武器。』 (5面記事『ティウンティウンな同人ゲーム『メガマリ』最強攻略』より抜粋) ○○「――――つまり、レミリアを倒せば おまえは楽に倒せるってことだったんだよ!!」 咲夜「……大馬鹿ね」 ○○「グスン……」 (『な、なんだってー!!』って返してほしかったのに……) ―――――― 何回やっても 何回やっても レミリアまで 辿り着けないよ デフレワールド 何回やってもよけれない ―――――― ○○「いてて……あーーーもーーーー! レミリアから武器ゲットする以前に 辿り着けねぇよ!!」 咲夜「お嬢様には近寄らせないって言ったでしょう? だいたい……レミリア様を倒すって、本末転倒じゃないの?」 (信じられない……私の最高のスペカ『デフレーションワールド』を無傷とはいえないまでも死なずに切りぬけるなんて……) ○○「いーんだよ! まずはお前を倒せればそれでいい!! ギャフンと言わせてやる!!」 咲夜「………」 ―――――― デレかけている お茶目なメイドが 素直になれずに SATUGAI ―――――― 咲夜「ぎ…ぎゃふん……(////⊿//)」 ○○「……」 咲夜「……」 ○○「……そ、それはひょっとしてギャグで――――」 咲夜「――――ッ! 『デフレーションワールド』!!」 (な……何、言ってるのよ私ーーーー!!) ○○「どうみても、実はお茶目な性格です!! 本当にありがとうござい ひでぶッ!!」 ―――――― 風呂から侵入 試してみたけど あいつが入ってちゃ 意味がない! ―――――― ○○「げ……」 咲夜「あ…あなた……なんで、お風呂場に……」 ○○「い…いや、ここから侵入してレミリアを倒しに行こうと…」 咲夜「~~~~~~~ッ!!」 (少女滅殺中) 咲夜「こ、今度やったら 殺人ドール100連発よ!!」 (み、見られちゃった……この人に…私の裸……) ○○「は…はひ……」 (こ、こいつの身体……すごくキレイだったな……) ―――――― だけど 次は絶対勝つために 僕の 変わる想いに 白黒つけてやる ―――――― ○○「……レミリア一筋だったはずなのに……なんで俺は――――」 咲夜「……あの男は、ただの侵入者のはずなのに……どうして私は――――」 「「―――― 気がついたら、あの女(男)のことばかり考えてるんだろう?」」 ・ ・ ・ ―――――― 弾幕スペカがあれば ラクに 貴方の元まで つくけど ―――――― ○○「ハー…ハー……くそ、弾幕やスペルカードさえあれば、あいつのところまで楽に行けるんだがな……」 咲夜「き、今日も来たのね……いいかげん諦めたらいいのに」 ○○「ハハ……諦めの悪いのが俺の持ち味なんでね……」 ―――――― 何回やっても 何回やっても 愛しい咲夜がたおせないよ あのナイフは 何回やっても よけれない ―――――― ○○「……く…そぅ……」 (ここに来るまでの体力の消耗がマジで痛い……かわしきれねぇ……) 咲夜「あ、あんまり無理しないほうがいいわよ……あなた、普通の人間なんだから」 (どうして、ここまでやるの……? ただ、私に勝つためだけのために、どうしてここまで?) ○○「うるさい……普通の人間だからって無礼るな!!」 (咲夜に勝って……彼女に俺の想いを聞いてもらうんだ!!) ―――――― 必死にかわして 逃げ回っても いずれは時間止められる ―――――― 咲夜「幻世『ザ・ワールド』!! 時は止まる」 ○○「………(青年硬直中?)」 (あれ? 時間止まってるのになんで見えてるんだ?) 咲夜「……(///σ//)ちゅっ………」 (……じ、時間が止まってるから…大丈夫よね…) ○○「!!!???」 (な……なにイイィィィ!!) 咲夜「と、時は動き出す……」 ○○「お、おま……今、キス……」 咲夜「!!?? な…なんで、時は止まっていたはずなのに……」 ―――――― 時を止めてのキス見えたけれど 『忘れなさい』とか ありえない!! ―――――― ○○「い、いや……時間止まってたけど見えていたぞ。動けなかったし。」 咲夜「……ッ! ま、まさか……」 (少女照れ隠し(もとい殺人)中) ○○「ちょ! タイム! タイム! タイム! それ以上は死ぬって!!」 咲夜「同じタイプの能力を持っていたなんて……さ、さっき私がしたこと、今すぐ忘れなさい!!」 ○○「そ、そんな御無体な!!」 咲夜「いいえ! 忘れさせてあげるわ!!」 ―――――― だから 次は絶対勝つために 僕の この愛だけは 最後まで取っておく ―――――― ○○「や、やだ! 好きな人にキスされたこと、絶対忘れたくない!!」 咲夜「え?」 ○○「あ……」 (……言っちまったよ、俺……) 咲夜「……嘘?」 (え? え? ……○○も……好き……?) ○○「うっ、嘘なんて言うか! ……ほ、本当だよ(ボソッ)」 「「………」」 咲夜「……~~~~~~~!!!」 (ああ……ど、どうしよう……!) ○○「ど、どうした?」 咲夜「げ、幻世『ザ・ワールド』!!」 (と、とにかくいったん距離を置かなきゃ! ドキドキが止まらなくて、考えがまとまらない!!) ―――――― 倒せないよ……(いないから)―――――― ○○「……逃げられた…… えーと…不戦勝? … …… ……… 納得できるかこんな『勝ち方』! ってか 逃がすかぁーーーー!! むぁーーーーてぇええええええい!! さぁーーくぅーーーやぁーーーーーー!!」 咲夜(ッ!? お願いだから、追って来ないで! こんな真っ赤な顔してる私、見られたくないから――――!!) ・ ・ ・ 「なお、二人はこの後、紅魔館の中を12時間ほど鬼ごっこした揚句、ようやくくっつきましたとさ……ひゅーひゅー!!」 「「(////⊿//)」」 ひゅーひゅー!! 「あはは! 二人とも、これからも仲良くね――――!!」 ……こうして、大喝采のうちに夜雀と騒霊のコンサートは幕を閉じた。 余談だが、数日後……咲夜さんは時間を止めて 「――――何回やっても 何回やっても 愛しい咲夜がたおせないよ」 と頬を染めながら歌っていた。 そして、それを偶然見てしまった俺は またもや照れ隠しがわりにSATSUGAIされてしまった。 The End 曲の元ネタ『ttp //www.youtube.com/watch?v=KLbFctG3tw0』 うpろだ269 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「咲夜」 「何ですか○○さん」 「いや・・・君は今夜も綺麗だな、と思ってさ」 ぼっ、と音がしたかのように真っ赤になった 相変わらず彼女は可愛い 「なななななにをおっしゃてるんですか!?」 「はっはっは、赤くなっても可愛いな君は、家のメイドにならないか?」 「○○、吸血鬼は独占欲が強くてよ?」 おおっと、レミリア嬢から目をつけられてはこまったこまった 「おいおいレミリア嬢、そんなに睨むな、か弱い私はにらまれただけで震えあがってしまうよ」 わざとらしく恐がって見せる 「・・・」 やはり怒らせてしまう訳だが 「紫との交渉を任せたい」 「私が交渉役!?冗談じゃ無い!あんな化物となぜ俺が対峙せねばならんのだ」 「・・・其処を何とか頼みたいのよ、お願い」 「・・・代償は高いぜ?俺の命がかかってるからなぁ」 この馬鹿なお嬢様が何かやらかしたらしく、面と向かって対峙する訳にも行かないので俺というクッションが必要ならしい 結局断れないんだけどねぇ・・・ 用件は聞いたので席を立つ 「食事は?」 「結構、用件も聞いたし帰らせてもらうよ」 「そう・・・咲夜、玄関まで送りなさい」 「はい」 席を立ち、玄関へ歩き出す その後を彼女がついててきている 玄関まであと少しだ 「あの・・・今回のお仕事は大丈夫なんでしょうか?」 「安心しなさい、私が責任を持って遂行しよう」 「いえ、その・・・○○さんが・・・」 ああそうか、心配してくれているのか なんといじらしい、乙女だ 「ありがとう咲夜、心配は無用だ・・・逃げ足だけは一級品だからね」 視界から消えてみせる 脚にだけは自信がある、人間の視界から姿を消す事は容易だ 突然の出来事に驚いている咲夜を― 壁に押し付けるように、両腕を拘束する 「きゃっ!?な、なにを」 「君の肌は実に美しい、その細い首筋、ぞっとするほど、だ」 そう、まるで磔のイエスのような 「一人の男としても、人狼という種としても、君が欲しくなってしまうよ」 細い首筋に、ざらついた舌を蛞蝓のように這わせる 「あっ、ん、ふ、ぁあっ」 「このまま、薔薇のような、珠のような、血を」 「はぁっ・・・○○さん?」 「ふふ、安心しなさい、そんなことをしたらレミリア嬢に殺されてしまうよ」 ぱっと、身を離す、何事もなかったつもりで 彼女は乱れた服を調え、私を見る 「なぁ咲夜、俺の事は・・・好きか?」 「あ・・・は、はい!」 「そうかそうか、じゃあレミリア嬢に伝えておいてくれ、今回の貸しは十六夜咲夜を貰う、とな」 「はい!そう伝えておきます」 「それじゃあ、御休み、咲夜」 「おやすみなさい○○さん」 大掛かりな門が閉じる、彼女との小さな小さな壁 さて、死なない程度にがんばってこようかな、彼女の、いや俺のために うpろだ341 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「愛してる」 「え? あ、あの……」 そう呟き、青年は己の身体を使い、少女を壁に追い詰める。 少女は背を壁に密着させ、2人の距離は僅か20センチ程度。その距離が ゆっくりと縮まってゆく。 少女は脇から逃げようとするが、青年は少女の背後にある壁に片腕を立てて、少女の逃亡を阻止した。 間髪入れず、もう片方の手を少女の頬に添えて、少女らしく瑞々しい唇に情欲のまま自らの唇を重ねる。 「~~~~ッ!?」 少女の瞳が大きく見開かれ、声にならない叫びが響き渡った。 想いの丈をぶつけられるように、唇が強く……だが優しく押し付けられる。 仄かに匂う青年の匂いが、麻薬のように少女の精神を惑わしていった。 少女は青年が押しつけてくる唇を、首を振りもぎろうとする。 だが、その動きには、ほとんど力が込められていない。 少女は、スラッとした細い両腕で青年彼を引き離そうと、その胸を押す。 だが、その動きにも、ほとんど力が込められていない。 青年は少女が本気で嫌がってはいないことを理解していた。 少女がその気になれば、この状態から脱出することはおろか、青年を叩き伏せることなど造作もないからだ。 にもかかわらず、少女は青年のされるがままに、その唇を貪られ か細く身を震わせる。 既に、少女の頬は紅潮し、その吐息は熱く上気していた。 青年の温かい吐息が頬に、首筋にかかり、その心地よさにゾクゾクと背筋を震わせる。 じわじわと湧き上がる甘い快楽に、少女が身を任せようとした矢先―――― 「ん……ぅ……!?」 少女の瞳が再び、驚きに見開かれる。 青年の舌が少女の口の中までを侵略しはじめたのだ。 既に、心臓の鼓動音はドクン、ドクンと彼女自身の耳に聞こえるほどに激しく高鳴り 少女は――――これ以上されたら自分はどうなってしまうのか――――という恐怖を表情に孕ませる。 その間にも、青年は思うがままに少女の口腔内を嬲り者にしていく。 まずは、唇の裏側を撫で回し、次いで優しく歯と歯茎の間に沿って舌を滑らせる。 そして、最後に少女の脳髄が蕩かされ痺れたように動かない舌を優しく蹂躙し、痺れを解きほぐしてゆく。 少女の四肢から、力が抜けてゆき、膝がガクガクと力なく震える。 けれども、少女が抱いていた恐怖は期待に塗りかえられ、少女は青年の唇と舌に貪られるままになってしまっていた。 少女自身の舌がもみゃくちゃに、めちゃくちゃに掻き回され、彼女は 氷が溶けるように じわじわと痺れが溶けてゆくのを実感していた。 「…ん……ぅ…」 青年は少女の腰に左手を回し、ともすれば崩れ落ちそうになる少女の体を支えた。 そして、少女の左手首を優しく掴み、そのまま己の指を滑らせ少女の指に絡める。 少女が、自らの舌をおずおずと、だが自ら青年の舌に絡めようとしたその時…… ――――! ――――……! 少女の茹った意識に、何者かの声が届く。 「―――――!!」 はっとして視線を声が聞こえた方向に走らせるが、そこには誰一人いない。 しかし、声は次第に近づいて来ている。 このままでは、十秒と経たずに青年と少女にはち合わせるだろう。 もし、このまま見つかったら。と恐ろしい想像が少女の頭をよぎった。 僅かに残った総動員させ、甘く蕩かされていた思考を必死で修復していく。 そして、さらに声が近付いてきた その時―――― 「ありゃ……」 青年が間の抜けた声を上げた。 それもそのはず、今の今まで腕の中に抱いていた少女が一瞬で消えてしまったからだ。 「やり過ぎたかな?」 その一秒後に、ニ人のメイドが曲がり角から姿を現すのを青年は見た。 ・ ・ ・ 一方、こちらは紅魔館のとある一室―――― 「……何やってるのよ 咲夜、ノックもなしに」 突然の乱入者に、少女の主――――レミリアは僅かに不機嫌そうな声をあげた。 ただ、その瞳には怒りの色はほとんど無く、どこか咲夜の姿を楽しんでいるような節がある。 「はぁ……はぁ……は…ぁ…」 咲夜は、荒い息をつきながら、閉じられた部屋の扉を背に座り込んでしまっていた。 その顔は耳までもが紅色に染まっており、レミリアに言葉を返すこともできない。 ○○の手から逃れ、手近にあった空き部屋に飛び込んだのだが、何故主がここにいるのかと不思議に思う。 しかし、やはり今はそれどころでは無かった。 未だフルスロットルで激動する心臓の鼓動を止めるのに精一杯だ。 「はぁ……」 しばらく時間がたち、ようやく落ち着いたのか、まずは「も、申し訳ございません、レミリア様」と、座り込んだまま頭を下げ一言。 「……部屋の外で、あの男とよろしくやっていると思ったら」 「――――!!??」 主にはすべて見透かされている。 その事実に再び咲夜の心臓の鼓動が跳ね上がった。 「ううっ……」 弱々しい呻き声をあげ、茹った顔を主に見られまいと俯く。 そんな従者の貴重な姿を生温かい視線で見守りながら、レミリアはふと首を傾げた。 何故、咲夜はいつまでも座り込んでいるのだろうか――――と。 「どうしたのよ、いつまでも座り込んじゃって?」 「い、いえ……それがその……」 「?」 「こ…腰が……」 ほのかに想いを寄せる男に強引に唇を奪われた時、あまりの驚きと、喜びと、心地よさのために、腰が砕けてしまったのだ。 その事実をレミリアに告白することを恥じ、俯きながらボソボソと口を濁す。 咲夜は――――時を止めた世界で動けるのは、彼女のみであることに――――己の能力にこの上なく感謝していた。 必死で這いずり、手近の部屋に逃げ込む無様な姿、見られたらたまったものでは無い。 たとえそれが、愛しいあの男であったとしても。 「ぷっ」 あまりの可笑しさと、咲夜の愛らしさにレミリアは噴き出す。 瀟洒で常に氷のように表情を崩さない自分の従者がずいぶんと変わったものだ、と。 そして、咲夜の背後に視線を移して―――― 「――――だそうよ、○○」 「え?」 咲夜が引き攣った顔でゆっくりと背後を振り返る。 いつの間にか、背後の扉は開かれており…… そこには先程まで咲夜の唇を思うがままに蹂躙していた男が彼女をニヤニヤと見下ろしていた。 とたん、咲夜の心臓の鼓動が三度跳ね上がる。 「い、いつの間に!?」 「ほら、○○……咲夜を介抱してあげなさい」 レミリアが、○○に勝るとも劣らない程度に顔をニヤつかせて命じる。 「はいよ」 無論、○○がレミリアの命令を拒む理由などは無い。 むしろ、やるなと言われてもしただろう。 ○○は、両腕をそれぞれ咲夜の背と膝の下に回し、軽々と持ち上げた。 「や、ちょ、ちょっと! 降ろして! 降ろしなさい!」 「ヤダね」 抱えあげられながら、腕の中で咲夜は足をじたばたさせてもがく。 そんな彼女を笑顔で見つめながら、○○は子供のようにペロリと舌を出し片目をつぶる。 しかし、未だ彼の腕の中では、再び頬を紅く染めだした少女が暴れていた。 だから、○○は僅かな悲哀を表情に滲ませて―――― 「……嫌なのか?」 と、一言。 とたん、叱られた子供のように咲夜は大人しくなる。 悲哀が一杯に織り込まれた○○の表情と言葉に、抵抗する気概さえも挫かれてしまったのだ。 「…ぅ……」 この男は本当にずるい、そんな顔で、そんな聞き方をされたら断れないじゃない――――と、咲夜は心の中で呻き声をあげた。 「それじゃあ失礼します、レミリア様」 ○○はレミリアに退出の礼を尽くし、開いていたドアから外に出ようとする。 無論、彼の腕の中には咲夜姫が抱えられたまま。 「え、ちょっと……どうして外へ…?」 「ん? いや、だから咲夜の部屋に行って介抱するんだが」 あまりの衝撃に咲夜の目の前が真っ暗になった。 咲夜の部屋は、今彼女がいる部屋から歩いて5分程度。 この館の中ではそれほど遠いわけではないが、今の咲夜にとっては その距離も時間も那由他に等しい。 もし、こんな姿 誰かに見られたら――――と考えると、何のために必死に○○から逃げたのかわからない。 「や…ダメ! お願い それだけは許して!」 「いいじゃん、見せつけてやれば」 「やっ、やめ――――!」 外に出ると、いきなり通りがかったメイドと鉢合わせした。 彼女は○○の腕の中に咲夜が抱きかかえられているのを見て、あんぐり口を開ける。 まるで、鳩が豆鉄砲を喰らったかのように。 咲夜が覚えているのはそこまでだった。 あまりの羞恥と――――本人は気付いてはいないが――――それに勝るとも劣らない喜びに気を失ってしまったのである。 そして案の定、向こう2カ月は紅魔館はその話題でもちきりになってしまった。 天狗の少女のカメラにその場面を抑えられなかったのが、不幸中の幸いとも言えた。 『初めてのチュウ 咲夜受編』end うpろだ419 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「咲夜さん!あなたに会ったその日から、俺の時間は止められてしまいました!!」 返事は 「私があなたの時間を止めたのならなら今度はあなたの時間を動かしてあげる」 ってもらいたいな 7スレ目 800 ─────────────────────────────────────────────────────────── 拝啓 木々の紅葉も日ごとに深まってまいりましたが、 貴方にはますますのご隆昌のこととお慶び申し上げます。 また、採用試験の節には皆様方に大変お世話になり、ありがとうございます。 そのうえ、採用内定をいただきまして誠にありがとうございます。 早速、採用承諾書をお届けいたしますので、どうぞよろしくお願いします。 なお、本採用までの残り少ない日々をさらなる勉学に当て、完璧な従者になるためにがんばります。 そして、従者になった暁には少しでもお役に立てるような執事になれるように努力を怠らないように心がけます。 今後ともご指導くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。 貴方のいっそうのご繁栄と皆様のご健勝をお祈りいたしまして、お礼のご挨拶とさせていただきます。 敬具 平成××年 ○月△日 丸々 ○○ 紅魔館 当主 レミリア・スカーレット 様 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「ふぅ・・・」 俺はペンを置き、ぐっと伸びをした。 集中し物事に取り組んだ後に来る脱力感が気持ちいい。 先日、あの真っ赤な真っ赤な紅魔館に就職試験を受けに行った。 何故あの紅の悪魔のいる紅魔館なのかというと、その・・・なんだ、一目惚れってやつだ。 三ヶ月ほど前、里でのバイト中に見かけた銀髪でメイド服の少女。彼女に恋をしたから。 その後は毎日大変だった。 執事になろうと決めた。 周りの友人達は馬鹿にしたので〆た。 執事の勉強をしようと独学で頑張った。 ただ彼女と同じ場所で、同じ時間の中働きたいと思ったから。 だが独学には限界がある。 そんな時、紅魔館の図書館の事を知った。 幸い紅魔館の図書館は一般人も入れたので、勉強ついでに下見もできた。 感想・・・広い、綺麗、広い、紅い、紅い。多少目に悪い気もしたが、慣れればどうってこと無い。 それからは里と図書館を行き来する日々が続いた。 そんなある日、館内で彼女と会話を交わすことができた。 何時ものように図書館で勉強していた時に、声をかけられた。 「執事になりたいんですって?普通の人間ががんばるわね」 俺は緊張のあまり、しどろもどろで言いたい事も言えなかった。 彼女はそんな俺を見て言った。 「まともに話が出来ないんじゃあ、執事なんて無理ね」 その一言で俺は落ち込んだ。情けないと思った。 やはりこんな男が紅魔館で執事など馬鹿げている。 彼女はさらに続けた。 「でも、貴方はこのところ毎日ここに来て勉強しているらしいじゃない。努力は何時か実るものよ、がんばりなさい」 やる気再浮上。 その日は図書館から20冊ほど本を借りていったので、司書さんが結構驚いていた。 そして運命の日、採用試験の日がやってきた。 受験するのは俺一人でなんだか心細かったが、門の前では中国風の・・・そう、美鈴さんから激を入れてもらった。 「緊張しないで。○○さんなら絶対受かりますから!」 何度も図書館に通う内に、門番の美鈴さんと仲良くなっていた。 美鈴さんのその言葉と笑顔に自分の緊張が大分和らいだ。 館に入ると、内勤の妖精メイドさんに待合室に案内された。 待合室は他の部屋と比べて質素だった。恐らく集中するために無駄な装飾品を取っ払ったのだろう。ありがたい配慮だ。 時が来るまで何度も何度も脳内でイメージトレーニングをする。 ・・・あれ? 戸って押し戸、引き戸? ・・・・・・あれ? 当主の名前なんだっけ? ・・・・・・・・・あれ? 俺やばくね? 助けてメイド長。 「えー○○さん、準備が済みましたので、出てすぐ左手側の部屋へ行ってください」 「は、はい!」 来た。 素早く案内状の当主の名前を確認し、身形をもう一度整え、さらにもう一度名前を確認し決戦の場へと向かった。 「いやー、緊張してたな俺」 面接時のことは全て忘れてしまった。 確か面接官には図書館の子悪魔さんと副メイド長と、彼女がいた。それしか覚えていない。 精一杯自分をアピールできたと思う。 変なミスは・・・・歩く時手と足が同時に出ていた事ぐらいだ。 彼女はどう見てくれたのだろうか。 今目の前に採用内定書があるが、やはりこんな紙切れよりも本人から直接どうだったかを聞きたい。 「そういや来週からか・・・」 来週から研修期間に入る。実際に館内での仕事を体験し、執事になるための本格的な勉強をする期間。 恐らく彼女と接する機会がぐっと増えるだろう。 そして研修を乗り越え本採用が決まれば、さらに彼女との距離が縮まる。 何年かかるか解らないが、執事長となり彼女の隣に立つ事も夢ではない。 「っしゃ! やる気出てきた」 この想いがあればどんな苦しい時でも頑張れそうだ。 一目惚れから始まったこの恋物語、今やっと序盤が過ぎたところだ。 目指すはゴールの職場結婚のみ。他のフラグは全部無視だ。 「うおおおおお!!! 待っててくれマイスウィートォォォォ!!!」 「おい○○! こんな夜中に五月蝿いぞ!!」 「あ、すみません」 隣の家のハクタクに怒られた。 10スレ目 133 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ちょっと・・・もう少しどうにかならないの?」 「だから無理だって!これ以上は」 里のとある店、軒先に並べられて商品からして雑貨屋、万屋であろうか 薬に服、履き物、鍋だの装飾品だの一貫性がない 「もうちょっと・・・ね?いいでしょ?」 メイド服のリボン?をするりと解き、胸元をはだけてみせる 「・・・乳でかくして出直しな」 「っ!もういいわよっ!お邪魔しました!」 会計に座っていた俺の頬を銀のナイフが掠っていった 「こえー・・・あ・・・代金」 しょうがないので紅魔館に請求書を、そんな風に考えたときナイフが貫いているのは壁だけでないことに気づいた 「あ、お金・・・お金をナイフで刺すなと何度言えば・・・」 壁のナイフを引き抜いて、お金を回収、こんな状態でもちゃんと使えるのが幻想郷のいいところだな 「しかし・・・俺の理性はいつまで持つかなぁ」 強がって見せても、さっきのはだけた胸元が、目に焼きついてしまっているのだった 「・・・私ってやっぱり魅力ないのかなぁ?」 胸は無いけど、スタイルも悪くないと思うし 何よりメイド服といえば問答無用のリーサルウェポンって言ってたのになぁ(byパチュリー 何処かの誰かも「胸が無い?馬鹿だな、そこがいいんじゃないか!!」って言ってたし 「あ、そうか」 お嬢様に頼んでみよう 「お色気むんむんな服ぅ?」 「はいっ!どうしてもTKOしてやりたい奴がいるんです!」 お色気むんむんなTKO?話がまったく見えてこないわ 「それと!明日おやすみをください!」 「え、ええいいわよ好きになさい」 ありがとうございますと一礼し、十六夜咲夜は退室した 「・・・勢いでOKしたけど・・・明日紅魔館は機能するのかしら?」 はぁ・・・あの咲夜が、何事だろうか? 「おはよう美鈴!行ってくるわねっ!」 「い、いってらっしゃいませ・・・」 翌日朝、勢い良く館を出て行く咲夜、それを何事かと噂する妖精メイド そして驚き桃の木山椒の木で一日を迎えた美鈴、そんなこんなでメイド長不在の紅魔館は一日を乗り切れるのか!!? 「あれ?まだ閉まってるのね・・・どうせ鍵掛けてないんでしょ」 予想通り裏口のドアは簡単に開いた、泥棒でも入ったらどうするつもりなのかと小一時間 「おはよう・・・暗いわね」 部屋どころか家が暗い、この家の主はいまだ目を覚ましていないらしい 「寝室は何処かしら?」 襖を開けるとすぐにわかった、布団の敷いてるのだから当然か 「・・・あ、寝てるのね」 寝息が聞こえる、上下する胸・・・起きる気配はない 何を思ったのか、私は彼のいる布団にもぐりこんだ 「あ、暖かい・・・・・・」 何だろうこの暖かさ、すごく、安心できる―― 「ん・・・」 朝か、少し寝過ごしたかな、だいぶ明るい・・・なんか腕が重・・・ 「え?・・・・え?」 現状を整理しよう、俺は今目を覚ました、昨日まで、寝付くまではこの布団には俺しかいなかったはず なのに俺の腕の中には見覚えのある少女、十六夜咲夜が?・・・居るねぇ 夢なはずはない、今起きたんだから 「・・・・事後?」 彼女は俺の腕の中にすっぽり納まる感じで、でも微妙に隙間風が・・・うーさむ、いやそういうことではなくて 「んん・・・あれ・・・?」 ばっちりと目が合った、完全に、お互いに固まった 「お、おはよう・・・」 「お、おはようございます」 とりあえず布団を出た、続いて彼女も 「あー・・・着替えるから台所の方に行っててくれるか?」 「は、ひゃい!」 噛んだな 「まぁつまりお布団暖かそうだなぁ、と思って、気付いたらすやすやと・・・そういうことだな?」 「はい・・・ごめんなさい」 「いや、謝らなくても別に・・・美味そうな朝食と君の抱き心地で十分」 「ば、ばか!」 あ、また赤くなった、まぁそれはおいといて・・・和食も上手だなぁ、メイドなのに 「・・・ごちそーさん」 「おそまつさまでした」 また沈黙、台所には食器を洗う音のみ 沈黙に耐えかねた俺は 「ねぇ」 「・・・なんだ?」 先に話しかけてきたのは彼女の方だった 「今日・・・お店の手伝いしてもいいかしら?」 「は?いや、俺は別に構わんが・・・せっかくの休みだろ?」 「ええそうよ、私の休みなんだから私のしたいことをするの、だから今日は貴方のお手伝い」 「ふむ、まぁ・・・いいけどな」 「ありがとーございましたー・・・十六夜、今ので食油切れたから倉庫から出してきてくれ」 「幾つあればいい?」 「うーん、5つあれば大丈夫だろ」 「わかった」 昼過ぎ、なかなかどうして今日は儲かっている 塩と油の在庫が尽きるかもしれない、寒くなってきたからなぁ、油の方は相当売れる、食油も売れる 「一月分の売り上げが今日だけで・・・」 「いらっしゃい、油?ちょっと待ってくれ、もう直ぐ」 「○○ー持って来たわよ」 「お、丁度来た、ありがと十六夜、早速一つ」 持って来た油が直ぐ売れた そういえばさっきからお客さんがニヤニヤと、生暖かい目で見てくる 「そういえば噂になってるのよ、○○ちゃんが嫁さん貰ったって」 「はぁぁぁああああ!!?なんで?いったいどこから」 「え?彼女は違うの?」 十六夜咲夜のほうを、みて、おばちゃんはそう言った 「え?わ、私はそういうのじゃ」 真っ赤になって照れながら否定する十六夜、その様子を見て更にニヤニヤするおばちゃん おばちゃんは去り際に 「非のないところに煙は立たないわね、んふふふふ」 といって去って行った 「あー・・・」 気まずい空気、今朝のような感じだ 「なぁ十六夜・・・いや、咲夜」 「えっ?な、に?」 「前々から言おうか悩んでたんだがな、今日を逃したら言えないような気がするんだ、だから言わせてくれ」 いつの間にか常連になっていた彼女、安くしろオマケしろと五月蝿いメイド、何だかんだでいつの間にか 「俺は君が好きだ、愛してる・・・俺と結婚してくれないか?」 「え、あ、そ、その・・・お、お嬢様に聞いてみないと」 「咲夜!・・・俺は君の気持ちが知りたい」 「あ・・・はい、不束者ですが、よろしくお願いします」 「咲夜・・・此方こそ、これからもよろしくな」 俺は今度こそしっかりと、彼女を抱きしめた、もうそこに隙間風なんて通らないように 「!?おねー様?何で泣いてるのっ?」 「嗚呼フラン・・・娘が嫁にいくときの両親の気持ちが、痛いほどわかったわ」 「おねーさま・・・でも悲しんでいられないでしょ?咲夜がいない紅魔館が荒れ放題じゃ咲夜も安心してお嫁にいけないよ?」 「そうね・・・小悪魔を司書からメイド長にしてがんばってもらうしかないわね」 「(いや、あんたががんばれよ)」 哀れ小悪魔、仕事量が一気に増えるけど君なら乗り切れるはずだ!がんばれ小悪魔!負けるな小悪魔! ~新婚生活はまだ始まったばかりだ!~ 10スレ目 281 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「咲夜、今夜出かけようか」 客の途絶えた昼時 ぼーっと店番をする俺は、昼飯の片づけをしている咲夜に、話しかけた 聞こえているとは思うが返事がない 少し間をおいて 「いいけど・・・変な事したら駄目だからね」 たぶん台所で赤くなっているのだろう ほんとに初心な娘だ、思わずからかいたくもなるが・・・我慢 「ほら、今夜は十六夜だろ?月見しようぜ」 結局その後客はあまり来なかったので早めに店じまいした 「けど大丈夫かしら、こんな夜に山に登るなんて・・・妖怪とか」 「大丈夫だって、お前と俺のデュエットなら妖怪なんて楽勝さ」 「コンビ、もしくはタッグ・・・だと思うけど」 今はまだ夕方、俺は背中に酒瓶、片手にランタン 咲夜は弁当と・・・シーツを持っている 後1時間もあれば日も暮れるだろう 「荷物持とうか?」 「ん、大丈夫よ」 山とはいえ一応道になっているので歩きづらい事はないが・・・ 「歩きづらかったら言え、おぶってやる」 「大丈夫・・・貴方って過保護なのね」 前にも言われたぞそれ、お嬢様並みに過保護って言われたなぁ・・・はぁ 「おお・・・ギリギリ夕焼けも見れたな」 「ほんと・・・綺麗」 山頂に着くとシートを広げて寝転がった 手近な木にランタンを下げ明かりをとる、思ったよりは明るい、やはり山頂は違うな 「はい、どうぞ」 「ん、いただきます・・・うん、美味い」 さんどうぃっちと熱い紅茶、吐く息が白くなる・・・程ではないがやはりは寒いのに変わりない 「咲夜、コッチにおいで」 夕食を食べ終わり、後片付けを済ませた咲夜を呼び寄せた 何も言わず、寄り添うように 肩が軽く触れるぐらいの距離 遠慮がちに距離をつめる、俺はそれがじれったい 「ああもう!よい、っしょ」 胴に手を回し、持ち上げて、抱き寄せた 「ッ~!?」 俺の腕の中にすっぽりと納まってしまう咲夜、小さい・・・こんなに小さかったんだなぁ 「ほら・・・ソラを見て」 高く上がった月、満月 彼女と同じ・・・十六夜 「わぁ・・・綺麗」 言葉を交わすのも忘れて、丸い丸い大きな月に、魅入ってしまった 「今までありがとう・・・ばいばい」 「どうした?」 「十六夜にね、今までお世話になりました、って言ったの」 「?」 「もうこんな機会ないだろうから」 「またくればいいだろ、年に一回ぐらいは見に来ればいいさ」 「違うわよ・・・十六夜の私が見る最後の十六夜ってこと」 「?」 「だから!・・・これからもよろしくね、アナタ」 「っ!?あ、ああ・・・よろしく、咲夜」 俺達は口付けを交わした、自然と、そうなった 「ひゃっ!や、やだ、んっ」 咲夜は俺に背中を預けるかたちで座っている、つまりまぁ・・・無防備なわけで 首や、鎖骨に口付けしたり、下を這わせてみたり、色々と調子に乗ってみた、言い訳するなれば月のせいだと言っておく 「ここがいいの?」 「や、ち、違んっ」 リボンを解いて胸元をはだけさせた 「咲夜・・・その・・・いいかな?」 「・・・こんなにも月が綺麗だから、い、いいよ」 「出来るだけ優しk「たーんたーんたーぬきの・・・きん・・・た」 藪から上機嫌で飛び出してきたのはどっかの屋台の雀 「え、あ・・・・お邪魔でしたか?お邪魔ですね、あはは」 みすちー は 逃げ出した 「・・・」 「・・・」 完全に、空気をぶち壊してくれた 「えーと・・・咲夜?」 「あ、あはは」 そういうムードでもなくなったので、そそくさと退散する事にした 山を降りて、静かな里の通りを歩く、何処も寝静まっている 神社の方で明かりが見えたので宴会でもやっているのだろう 「ねぇ○○」 「ん?どうした?」 「ぎゅーって・・・して?」 「・・・」 「んー・・・ありがと」 「・・・さ、もうすぐ家だ」 「ええ、帰りましょう」 手を繋いで、夜のお出かけを名残惜しむように、ゆっくり、ゆっくりと、歩んでいった 「そうだ咲夜」 「何?」 「鶏肉が食べたいなぁ」 「それじゃあ飛びきり息のいい雀を捕まえてきますね♪」 まださっきの事を根に持ってました みすちー は 逃げ出した! しかし回り込まれた END 10スレ目 356 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「俺はな、お前の時計を動かす鍵になりたいんだ」 7スレ目 830 ─────────────────────────────────────────────────────────── 咲夜さん、さーやって呼んでもいいですか? 「何故部下に呼び捨てにされなければならないのかしら。」 …スミマセン。じゃあさーちゃんで 「ちゃん付けにされるのはガラじゃないわ。」 …ナカナカテゴワイデスネ。じゃあ可愛くさっきゅんなんてどうでしょう? 「私はパチュリー様ではないのですよ?」 ……ソーデスカ。わかりました、みんなと同じメイド長と呼ぶことにします。 「…。(それでは愛が感じられないわ)」 どうかしましたか? 「だめよ、あなたは今まで通り名前で呼びなさい」 こんな咲夜さんですか? 7スレ目848 ───────────────────────────────────────────────────────────
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ネタバレ:優勝は咲夜さん 解説 美鈴トーナメントがあって咲夜さんトーナメントが無いのはおかしい、ということで開催された咲夜さんオンリーのトーナメント。 ただしうp主は別人。 神キャラも参戦しているが全員1Pカラーなので安心だ。 美鈴とは違ってわりと弾幕しているものの、やっぱり(?)こっちもスタンド使い率がやけに高い。 出場キャラクター 十六夜咲夜 咲夜ブランドー 朔 改変咲夜OS いぬさくや GOD長 影咲夜 咲夜Sブランドー 関連大会 美鈴トーナメント 萃香トーナメント コメント 朔おもろかった。 -- 名無しさん (2009-02-05 23 12 35) 朔もっと出番増えないかなー。むっちゃ好きなんだけど -- 名無しさん (2009-02-05 23 17 02) 朔かっこいいな。 -- 名無しさん (2009-02-05 23 31 57) ただ朔はコンボキラーなんだよな・・・ 凶キャラのタッグ動画とかならでられそうではあるが -- 名無しさん (2009-02-05 23 40 22) 朔は紙だから一発でもそれなりに減るんだけどね。 -- 名無しさん (2009-02-06 19 06 19) 朔よりもいぬさくやのルミナスはどう対処すればいいんだ? -- 名無しさん (2009-02-06 19 35 27) 朔結婚してくれ -- 名無しさん (2009-02-06 20 56 53) 1キャラのアレンジだけで大会開けるとか、東方はやっぱすごいなぁ。 -- 名無しさん (2009-02-06 21 18 32) ↑3:今のところはガードするしか対処法はない。AIだとp2nameで反応するようにしないと -- 名無しさん (2009-02-06 21 54 31) 神咲夜もスタンド使いだったとは知らなかったなぁ -- 名無しさん (2009-02-06 22 00 55) この調子でこれからも○○トーナメントが開かれるといいけど……そもそも需要はあるのか? -- 名無しさん (2009-02-06 22 02 38) 需要以前に供給がね・・・霊夢トーナメントなら開けるくらいキャラいるかな? -- 名無しさん (2009-02-06 22 13 25) 萃香なら供給万全で確実な需要があるなw -- 名無しさん (2009-02-06 22 22 36) ↑2霊夢ならやれそうかなあ。霊夢・たみふる・ハクレイム・世紀末・吸血とか、ゆっくりは…なんか違うな。鬼巫女…は無理かw -- 名無しさん (2009-02-06 23 03 22) ↑最近闇巫女霊夢というのも出たな……あと作ろうぜスレ出身で南斗霊夢というのもいる。他にもいるかも…… -- 名無しさん (2009-02-06 23 13 34) レミリアだけってのも出来そうじゃね?普通のレミリア×2、聖帝レミリア、03RIAでどうよ?…さすがに少ないか。いっそメガリスや神レミリアも(ry -- 名無しさん (2009-02-07 00 28 36) レミリア×2、聖帝、ジェネリア、03RIA、メガリス ええとあと二人足りんな RSPと神レミリアは無理だ -- 名無しさん (2009-02-07 00 40 52) ↑4 普通の霊夢自体結構種類があることについさっき気づいた。どれだけいるんだろう? -- 名無しさん (2009-02-07 00 48 11) ↑アレンジならいいけど原作再現系が何人もトナメに出たら流石に見分けがつかねーw -- 名無しさん (2009-02-07 00 56 29) 萃香トーナメントsassokukiteta -- 名無しさん (2009-02-07 17 20 24) ↑訂正。萃香トーナメント早速来てた -- 名無しさん (2009-02-07 17 21 08) 霊夢トーナメント来てたぜ -- 名無しさん (2009-04-04 11 08 41) 名前 コメント
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春は曙。 春眠暁を覚えず。 そんな言葉がピッタリ当てはまるぐらいに眠くなるような天気の春。 そんなことはおかまいなしで、いつものようにいつものやつがやってきた。 「○○さん!敵がやってきました!配置について下さい!」 前方に見慣れた白黒(仮)の姿を発見する。 今日もまた、図書館あたりに用でもあるのだろうか。 こんなポカポカした春の一日ぐらい、寝かせてくれたっていいのに。 「了解した」 紅魔館から○○さんが出てくる。 配置は、私の後ろだ。主に、私のサポートをしてくれている。 「今日こそ・・・あの憎き魔法使いを倒しますよ!」 「ああ、もちろんそのつもりだ」 ○○さんは紅魔館で働いている。 主な仕事は雑用や買出し係、料理などである。 ちなみに、私の協力もあって弾幕の腕はまあまあなので、私のサポートも担当している。 「来ました!○○さん!」 いつもの常套句から、いつものビームを打ってくる白黒(仮)。 「言われなくても、わかっている!」 避けながら、平然と言う○○さん。 最初は全く戦えなかった○○さんだったが、私が少し鍛えてあげましょうかと提案すると、彼は喜んで受けてくれた。 ○○さんはすごかった。 私の教えをあっという間に飲み込んで、私には及ばないながらも、その辺の氷の妖精位なら倒せるようになっていた。 この間約2ヶ月。驚くべき成長だ。 おかげで、私も負けじと腕を磨き始めている。 切磋琢磨ってやつだろう。 「えい!」 いつもどおりの弾幕を放つ。 ○○さんはそれを補助するかのように弾幕を放つ。 それを避け、憎き白黒(仮)も弾幕を放つ。 「美鈴、右!右!」 「く・・・・」 四方八方から襲ってくるレーザー。 主に、私が狙われている。 避けるのに力を使い始め、弾幕が疎かとなる。 こうなってくると、苦しい状況となる。 メインは私なのだから、私が攻撃しないと、サポートの○○さんの弾幕だけでは、力不足だ。 「美鈴、そっちに避けたらまずい!」 「!!」 追い込まれた。レーザーをかわした所に、お得意のマスタースパークが飛んできた。 これは・・・・避けられないか。 止むをえず腕をクロスさせて頭を隠して攻撃を受ける体勢へ。 と、次の瞬間。 「間に合え!」 「!?」 横から衝撃。 何事かと吹っ飛ばされながら見てみると、○○さんが私を突き飛ばしていた。 「な・・・・・」 そして、○○さんの姿はマスタースパークに飲み込まれた。 突き飛ばされて倒れる私。 勝利を確信し、門を突き抜けようとする白黒(仮)。 私を倒したと思ったのだろう。 このまま煙に紛れて攻撃してもよかったが、それ以上にやることがあった。 「○○さん!」 私が○○さんを探している間に白黒(仮)がもう通っていってしまったが、そんなことどうだっていい。 「○○さん!○○さん!どこですか!?」 煙のせいで姿を確認することが出来ない。 私は彼の名を呼び続けた。 すると、ようやく返事が返ってきた。 「ふぅ・・・やれやれ、危なかったな」 「○○さん!・・・・大丈夫ですか!」 「そんな大きな声出さなくても、大丈夫さ。なんとか避けれたみたいだ」 彼を見てみる。 少し服が破けているが、確かに外傷は見当たらない。 「あーあ、また負けちゃったな」 白黒が通ったほうを見ながら、彼は呟く。 「ごめん、美鈴。俺もまだまだみたいだ」 「そんなこと・・・・いいんです」 「・・・え?」 「どうして、あんな真似を・・・」 「・・・・?」 「どうして、あんな真似を、したんですか?」 「・・・あんな真似、とは?」 「・・・・どうして、私を・・・・・・庇ったんですか?」 私は妖怪である。 あのぐらいの攻撃なら、受けたってすぐ回復できる。 でも、○○さんは人間だ。 下手したら、・・・・今ので取り返しがつかなくなるような事が起きたって、不思議ではない。 「・・・・・男が女を守るのは、当然じゃないか」 「え・・・・?」 今彼に似合わない台詞を聞いてしまった気がする。 思ったとおり、彼は少し顔を赤くしていた。 「いや、だってさ、男が女に守られながら戦うって結構情けないわけだよ。 だからさ、ここぞっていう時ぐらいかっこつけさせてくれたっていいじゃないか」 「・・・・・○○・・・さん・・・」 「まぁ、実際はそんなこと考えないで、体が勝手に動いちゃったりしたんだけどね・・・・・・って美鈴!?」 私は思わず彼に抱きついた。 「ちょ、美鈴、どうしたのさ!?」 逞しくなった彼の胸。 最初はあんなに弱そうだったのに、いつの間にこんなに成長したんだろう。 「・・・・すみません、何でもないんです。ただ、・・・・・・ちょっと今の言葉が嬉しくて」 「え?あれで?」 「・・・・・うん。あまり、女扱いされたこと、なかったから、私」 「・・・・・・・そうか」 「・・・・・・・うん」 「・・・・」 「・・・・」 ・・・なんだか変な雰囲気になってしまった。 腕を放そうにも、腕が動いてくれない。 ―――まるで、脳がずっとこのままでいいと言っているかのように。 「なぁ、美鈴」 「・・・・・・・・なんでしょうか?」 しばらく続いた心地よい沈黙を、彼が破った。 「俺さ・・・・強くなってるかなぁ」 「・・・・・最初に比べたら、強くなってますよ。私が、保証します」 「・・・・師匠が保証してくれるなら、心配ないか」 「そうですよ」 すると、彼は私を抱いたまま横になった。 ちょっと、恥ずかしい。というか、かなり恥ずかしい。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 真下に○○さんの顔。 必然的に見つめあう位置になってしまう。 「なぁ、美鈴」 「・・・・・は、はい!なんですか?」 本日2回目のこのやり取り。 思わず彼の顔に見とれてしまうところだった。 「大事な話があるんだ」 「・・・・・大事な・・・・・・・話ですか?」 「ああ」 彼は私を放し、体を起こして、座った。 「俺さ、実は・・・・・・・咲夜さんに誘われてるんだ」 「・・・・・え?」 今、彼はなんと言った?咲夜さんに誘われている? 「こっちのメイド隊に入らないかって、誘われてるんだ」 「・・・・・」 ○○さんは今、門番隊に所属している。 私が、○○さんの修行のために、引き入れたからである。 「返事は・・・・・待ってもらっている。どうやら、俺のことを気に入ったらしいんだ」 「・・・そうですか」 「あとは・・・・・美鈴、君次第なんだ」 「・・・・どういうことですか?」 「・・・・・・・君は門番隊隊長だ。決める権利は、君にある」 「・・・・・・・・・○○さんは、どうしたいですか?」 私の考えは決まっている。 あとは、彼の意思次第。 「・・・・・・・・・・・やっぱり、今、言うしかないか」 「・・・・・?」 何だろうと思っていると、彼は急に真剣な顔になって座りなおした。 思わず、こっちも座りなおした。 「・・・・・・美鈴、よく聞いてくれ。 ・・・・・・・・僕は、君のことが好きだ。師匠としてではなく、一人の女性として、好きだ。 妖怪であってもいい。妖怪の、君が、好きだ。 もし、君が僕と同じ感情を抱いていないのならば・・・・・・僕は潔く諦め、向こうの隊へ行ってくる。この話は忘れてくれても構わない。 もし、それ以外なら・・・・・・・・・・・僕がここに留まることを、許して欲しい」 ・・・・・聞いてしまった。彼の言うこと、全部。一字一句逃さず。 このときほど、私が真剣に話を聞いたことなんてないだろう。 私の返事なんて、とっくに決まっている。 「うわっ!」 ―――私は、迷うことなく彼に飛びついた。 「・・・・・・・・ようこそ、門番隊へ。歓迎します!私の・・・・・・・・・弟子であり、恋人である、○○、さん!」 「・・・・・・・・ああ、これからも、よろしく頼むよ。俺の師匠兼、隊長兼、恋人の・・・・美鈴。」 そうして、自然と、私たちは唇を重ねあった。 ・・・・・窓から、メイド長が見ているのも知らずに。 「あの二人は・・・・魔理沙に進入を許しておいて何をやっているのかしら・・・・」 このあと、お叱りを受けたのは言うまでもない話だ。 11スレ目 535 ─────────────────────────────────────────────────────────── 紅魔館の門に一組の男女が眠そうに座っていた 「暇だねぇ・・・」 「そうですね・・・」 「・・・・」 「・・・・」 「でもこういうのもたまにはいいねぇ・・・」 「同感ですね・・・」 「・・・・」 「・・・・」 「やっぱり暇だねぇ・・・」 「そうですねぇ・・・」 「口調移ったねぇ・・・」 「そうですねぇ・・・」 「あ、白黒が来たねぇ・・・」 「そうですねぇ・・・」 ビューン!ドンガラガッシャーン!! 「・・・・・行っちゃったねぇ・・・」 「そうですねぇ・・・・」 「・・・通してよかったのかねぇ・・・」 「たまにはいいんじゃないですかねぇ・・・」 「そうかねぇ・・・」 「いいわけないでしょ?」 「!?」 「!!」 「あんたたち・・・門番の仕事もせずに幸せそうにダラダラと・・・・今週はおやつ抜き!」 「マジっすか~」 「マジなんですか~」 「はぁ・・・アンタが来てから美鈴も大分変わったわね・・・・・・」 11スレ目 125 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「わわっ!?」 突然吹き抜けていった風 その風は私の帽子を絡め取って、空まで持ち上げていった お気に入りだったのに、そんなことを考えながら帽子を見送った 「よ、っと」 あんなに高い位置にあった帽子、不可能なはずの高さに届いた手 ぼすっ 深く積もっていた雪が、彼の着地によって踏み固められた 「○○さん・・・危ないですよ、というか何処から現れたんですか?」 彼は高い塀を指差して、笑った 「ほらよ、次は飛ばすなよ」 渡されたのは私の帽子、彼が取ってくれた帽子 「あ、ありがとうございます・・・」 塀を見てみた 高さは4m弱、帽子が飛んでいた高さはその倍ぐらいあったはず・・・波紋? 「こんなに寒いのにご苦労様だな」 「仕事ですから・・・○○さんがくれたコートもありますし」 ○○さんがくれた(借りた)コートはとても暖かい 私が着ると膝を隠してしまうぐらい長くて大きい、私が二人ぐらい入るだろう 何でトレンチというかは知らないが、きっとトレンチさんが作ったんだろう 「このコートも、さっきの帽子も、色々お世話になりっぱなしで・・・」 「気にするな、俺が好きでやってることだ」 わたしの頭をくしゃくしゃと、撫でてくれた それが思いのほか嬉しいというか幸せというか 「・・・今度何かお礼をさせてください」 「だから気にするなって」 「私がしたいからするんです、何か欲しいものとかして欲しいこととか・・・何かないですか?」 「あー・・・んー・・・そうだな・・・恋人は欲しいが・・・それは外法か」 ブツブツと独り言を繰り返す○○さん 特に何かあるわけではなさそうだ、それはそれで困るが 「そうだ!○○さん!甘いお菓子は好きですか!?」 「あ、ああ、嫌いじゃ無いが・・・?」 いつもお世話になっているのだから、こういう行事を有効活用しなきゃ 「ふふふ、2月の真ん中を楽しみにしててくださいね」 「あ、ああ?楽しみにしとくよ・・・??じゃあまたな」 ○○さんはふらふらと何処かへと歩いていった すぐに姿は見えなくなったけど、一時見えなくなった背中を眺め続けた 咲夜さんから聞いておいて良かった バレンタインなんか全然知らなかった、でも今は知っている チョコといっても色々あるらしいからなぁ やっぱりあげ方にも工夫をしなきゃいけないのかな 胸に挟んであげるとか「溶けちゃった・・・全部舐め取ってくださいね」とかきゃーきゃー美鈴のエッチ! 「駄目ですよ○○さん、そこは違いますよ。うへへ」 「中国ー。みりん・・・美鈴っ!」 「は、はいっ!?」 「なに門前で涎たらしながらニヤニヤしてるのよ、気色悪いわね」 いけないいけない、へんな世界に入ってたらしい しかし咲夜さんが呼びにきたとなると・・・ 「冷えたでしょ?一緒に紅茶でもどう?もう交代の時間だし・・・」 咲夜さんは優しいなぁ、私の周りには優しい人がいっぱいいるなぁ、私は幸せだなあ だからこそ、少しでも恩返しというか、感謝の気持ちを表すというか、そういうことがしたい そうだ、咲夜さんにもチョコレートをあげよう でもその前に色々とバレンタインについて聞かなきゃ、チョコをあげる日ということしか知らない 「喜んで、色々聞きたい事もありますし」 「何かしら?聞きたい事って」 「それは紅茶でも飲みながらゆっくりと」 ああ、来月が楽しみだ それまでに色々な試練があったりなかったり 彼は喜んでくれるだろうか?そもそもどうやって入手しようか? まぁ色々考えるのは話を聞いてからにしよう、それからでも遅くない end 12スレ目 287 うpろだ805 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「美鈴、よければ俺も一緒に門番やらせてくれないかな。 1日とかそんなじゃなく、出来れば君と、ずっとね」 11スレ目 983 ─────────────────────────────────────────────────────────── 北斗神拳っぽい何かを使える程度の能力を会得したので、 スレの趣旨に反するがめーりんをいじめる事にした。 まずは能力を用いて彼女のスピードを上回り後ろに回る。 そして肩こりのツボを突きマッサージする。 後ろを取られるどころかみるみる間に上半身の力を奪われてしまえば、 拳法の達人であるめーりんはきっと恥ずかしいだろう。 上半身を無力化すれば次は下半身だ。 先程の攻撃で脱力しためーりんを押し倒し、 靴を脱がし、足のツボを責める。 全身のコリをほぐしながら意識を覚醒させるツボだ。 これによりめーりんは朦朧とする意識を無理矢理引き戻され、 長らく体がほぐれていく感覚を味あわされるのだ。 そして全身が弛緩しきっためー「○○君仕事サボって何書いてるんですか?」 「も、門番長!見ないで下さい・・・!」 「駄目ですよー、 う・・・ふむふむ」 「え、あ、門番長。 なんでそんな袖を捲くって手をわきわきと・・・」 「○○君がそんな趣味だとは知らなかったのですよ・・・ 人にやられて嫌な事は・・・自分が体感すれば一番分かりますね?」 じゃあなんでそんな笑顔なんですか門番長。 え、あ、ちょ、 肩気持ちいい、肩がアッー! 12スレ目 89 ─────────────────────────────────────────────────────────── 駄目だ・・・ どうしても中国だと「血夜糊嶺闘」みたいな当て字の民明書房っぽいネタを連想してしまう。 「・・・という訳で敗者は勝者に手取り足取りで甘味を食べさせられるという屈辱を受けるのです!」 「てか民明書房の本て幻想入りしてたんだな・・・」 「じゃあまあとりあえずさっさと負けて下さい○○さん」 「いやいやもうちょっと目的の為に手段を選ぼうな?」 「え、つまり○○さんは私にフルボッコにされたいんですか?」 「いやまあそうなる結果は分かってるがせめて形式的にも倒すくらいしないと決闘にならないでしょうが」 「では全身の関節を外してひざ枕しながら食べさせるのと、 全身の関節を外して口移しで食べさせるのならどちらが良いですか?」 「やっぱもう普通に渡そうぜ」 12スレ目 508 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「さーくやさんっ」 「ん?どうしたの美鈴」 休みの時間と睡眠時間を削り、いつもお世話になってるおふた形のために作った、カカオ練り菓子 「これを、どうぞ」 「これは・・・ああなるほど、今日はバレンタインだったわね」 咲夜さんは渡したチョコを一つ、口に放り込んだ 「んー、悪くないわね・・・これから本命の方へ?」 「ななななななにをを、唯私は日ごろお世話になっている咲夜さんと○○さんの為に感謝の気持ちを込めてチョコを作ったわけで別に○○さんにアプローチだとかせっかくのバレンタインを利用しない手は無いだとかチョコだけでなく色々な想いを込めてとかそういうことは一切無くてですね!」 「はいはい、今日は大目に見てあげるから、さっさと渡しに行って来なさい」 紅魔館を出て(咲夜さんに追い出されて)○○さんの家へ向かう 異性に対するチョコの渡し方はパチュリー様の所有する本で学習済みだ 今更恥ずかしいとか、そういう迷いは無い 皆がしているなら恥ずかしくないのだ 「○○さーん、美鈴ですー」 こんこんと、ドアをノックすると、中からばたばたと言う足音が聞こえた 玄関が開く、渡す準備はとっくに出来ている さぁ! 「よぅ、どうし・・・た・・・」 「チョコをッ!渡しにきましたッッ!!」 まぁ聞いてくれよブラザー 美鈴が訪ねてきたんだ 何の用かと玄関まで足を運び、扉を開けたさ まず思ったのは、胸、胸部、おっぱい いやいや、美鈴の胸がでかい事ぐらい俺でも知ってるさ まぁとりあえず胸に目が行ってね、その谷間になんか挟んであるのよ、よく見たらさ ハート型のチョコレートらしき物体、カレールーと言う可能性も無きには有らずだけどね チョコを渡すのに、胸に挟む必要が何処に有るのだろうか? いや、ない そんなのは成年向けのコミックスででもやってくださいって話ですよ 美鈴は羞恥に頬を染めて、ってそりゃ恥ずかしいだろうね、見てる俺のほうが恥ずかしいよ 俺が固まってると、美鈴が不安そうな顔になってしまったからね チョコを取りましたよ、胸に触れない努力はした、努力はしたよ?結果だけを見つめる社会って嫌だねまったく チョコを一口、かじってみた 予想通り甘かった、チョコの味がしたとしか言いようが無い だけど、俺がチョコを食べる姿を見て、嬉しそうにしている美鈴を見ていると、チョコは何倍にも美味しく思えた 「美味しかったよ・・・ありがとな」 俺はいつもみたいに頭を撫でた 撫でると言うには乱暴に、くしゃくしゃと 美鈴は目を細めて、えへへ、と笑っていた 「ん?」 胸の谷間に、チョコが融けてついてる 俺が硬直して取るまでの間に融けてしまったらしい 「・・・美鈴」 「ひゃぁっ!?○、○○さん!?そ、そんなところ、んっ」 「だってほら、せっかく作ってくれたチョコだ、俺は残したくない」 「だ、だからって、んぅ、はぁ、んんっ」 「 心の綺麗な人にしか見えない文字です (ドラッグしても見えません) 」 「そうだ、来月にお返ししなくちゃな・・・何が良い?」 「・・・これは、いつもお世話になってる・・・お礼です、だから、お返しされたら、またお返ししなくちゃいけなくて」 「いいんじゃないか?お返しのお返しのお返しの・・・そうやって行けば」 美鈴は解らないといった感じで、首をかしげた その仕草すら、可愛いと感じてしまう俺がいる 「何かをされたらお返しをせにゃならん、だからさ・・・与えるのと、お返しとで・・・ずっと一緒にいられるだろ?」 「あ・・・」 「だからさ・・・俺はお前とずっと一緒にいたいから、これからずっと一緒にいれば、与えてお返しの繰り返しだろ?それに・・・俺はお前に色々してもらってるしな」 美鈴は、何でか顔を赤くして、俯いてしまった 「どうした?」 「嬉しいですけど・・・恥ずかしくて」 彼女は言う 自分をここまで好きでいてくれる人が居る そしてその人のに負けないぐらい、その人の事が好きだと言う事 その事が、幸せすぎて 少し前の私なら、受け入れる事すら恐れていた幸せを、こうやって噛み締めていられるのがとても・・・嬉しいのだ、と そうやって話す彼女は、とてもいい女で 美鈴は俺の嫁 と叫びたくなったが、止めておいた 「○○さん・・・ホワイトデーなんですが・・・」 「おお、なんか欲しいのあるか?」 「その・・・ええと・・・子供」 「それは無理だ」 end 12スレ目 948 うpろだ911 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「……なんだ、これは?」 俺は手渡されたものをまじまじと見つめた。 箱。綺麗なピンク色の包装紙に包まれた掌よりちょっとばかし大きいかというくらいの箱である。 「こ、これは――あのー、その、チョコ……よ」 チョコ。何故こんなときに――とも思ったがすぐに今日がバレンタインデイだと気づく。なるほど、嬉しいことをしてくれる。 「これは中国が作ってくれたのか?」 「ええ、そう――っていうか中国って言うな」 「まぁまぁ。それは嬉しいな、中国が俺のために作ってくれたチョコなんだろ?」 「勿論――ってだから中国って」 中国――こと美鈴が言い終える前に俺はその口を唇で塞いだ。 「ありがとな、美鈴」 「――!……っもう」 顔を真っ赤に染め、少し視線を逸らしながら彼女は言った。 その仕草がなんだかすごく可愛らしくて俺は美鈴を抱き寄せた。 12スレ目 911 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「針よし、竿よし、仕掛けよしっと。うん、ちゃんと全部揃ってる」 俺が幻想郷に迷い込んでからはや幾月が過ぎた。 右も左もわからない俺がふらふら彷徨ってたまたま紅魔館を通りかかったところ レミリアに拾われてからここで住むことになった。 最初はただの食料としか見ていなかったのだろうけれどいつの間にか紅魔館の住人の一人に落ち着いた。 屋敷の中で唯一の男手として重い物の持ち運びなどの肉体労働の仕事を任されていて丁稚みたいな立場にいる。 今日は久しぶりに貰えた休みということで冬の寒い日が続いている中珍しく暖かいので 湖に釣りに行こうと準備をしているのである。 釣具一式を持って門から出て行こうとするといつもそこに居る彼女の姿はなく代わりのメイドの姿があった。 「おや? 今日は美鈴いないんだ?」 「はい。今日は非番なんでさっき散歩に行くって言って出ていきましたよ」 「ふーん、そっか。じゃ俺も釣りに行ってくるから。お勤め頑張ってくれ」 「はい。お気をつけていってらっしゃい」 門番の娘と軽く挨拶をして別れたあとお目当ての釣りポイントまで歩いていく。 前に見つけた場所なのだが珍しく霧が薄く、天気がいいと日の光が差し込みぽかぽかと暖かいので俺のお気に入りの場所だ。 餌を針に付け釣り糸をたらす。しばらくウキを見つめていると後ろから声をかけられた。 「釣れてますかー?」 「いや、さっき始めたばかりだから」 振り向くとそこには紅魔館の門番である紅美鈴がいた。 彼女は俺の隣りに座り込んでウキを見つめていた。 「で、美鈴はなぜここに?」 「いやー、せっかくのお休みなんですけど別にこれといった用もなくて ちょっと散歩していたら○○さんが釣りをしているのが見えたんでちょっと見学に」 「そっか」 「そういえば、○○さんびく持ってきてないんですか?」 「うん。あれば便利なんだろうけど、いらないかな」 「え? なんでですか? って引いてます! 引いてますよ!」 慌てている美鈴を横目にウキを見るとたしかにチョコチョコと浮き沈みを繰り返していた。 タイミングを合わせて竿を持ち上げるとそこには小さなハヤが針にかかってピチピチとしていた。 「小さいですね」 「ああ小さいな」 俺は手早く針を外すと湖に魚を放した。 「とまぁ、こんな雑魚しか釣れないのでびくがいらないって訳」 「なるほど。ところで私もここにいていいですか?」 「別にかまわないけど、面白いことなんてないよ? 魚だってさっきみたいのばかりだし」 「構いません。見てるだけでも楽しいですから」 その後他愛のない話をしながら釣りを続けて4、5匹釣れた後ぱったりと当たりが無くなった。 となると、この陽気のせいでどうも眠くなってしまう。 うつらうつらしながらウキを眺めていてふと隣りが静かなのに気がつき横を見るとすやすやと眠る美鈴がいた。 スリットからのぞくふとももにちょっとドキッとしてしまったのは内緒だ。 なんとか視線を戻しウキに注意を向けようとするがどうしても美鈴のふともものことが浮かんできて悶々としてしまう。 「う~ん、○○さん……」 急に名前を呼ばれたため今まで変なことを考えていたこともあり、ビクッとして慌てて美鈴の方を見るが 眠ったままでいるので寝言だと解り、釣りに戻ろうとしたが続けて出てきた言葉に俺は固まってしまった。 「○○さ~ん、わたし○○さんのこと好きです~。えへへ~言っちゃいました~」 まさか俺のことをからかっているんじゃないかと思い、ほっぺをぷにぷにとつついてみたりうにょーんと伸ばしてみても一向に反応がないので本当に寝言だとわかった。 しかし、寝言だとしても嬉しくないわけではない。どことなくとっつきにくい人ばかりの中で一番気さくな彼女だからこそ一番早く仲良くなれた。 最初は友達みたいな感覚だった。でも太極拳の真似事をしたり一緒に食事をしたりしていつしか、もし彼女と恋人になれたらどんなにいいかと考えるようになっていた。 けれども、もし断られたらどうしようかという不安があり、結局何の行動も起こせていないのである。 むにゃむにゃと眠る美鈴の横でこれが起きてるときに言ってくれたならどんなに良かっただろうと俺は考えていた―― 「美鈴、起きて、そろそろ帰るよ」 「う~ん、ふぇっ!? 私眠っちゃってました!?」 「うん、気持ちよさそうに眠ってたから起こさないでおいた。疲れていたんだろうね」 周りの風景は黄昏色に染められ湖から少し霧が流れてきてちょっと神秘的だ。 「うわぁ、長い間眠っちゃってたんだなぁ。よだれ垂れてませんよね? 顔に跡ついてませんよね?」 わたわたしている美鈴をみながら釣り道具の片付けをしながらちょっといじわるをしたくなってしまった。 「ああ、そういえば美鈴寝言で面白いこと言ってたよ。俺のこと好きだって告白されちゃったよ」 「ええええっ!?!? わ、わたしそんなこと言ってたんですか!?」 夕日より真っ赤になって頭からぶしゅーと湯気を上げる美鈴。俺は更に言葉を続けた。 「それでさ、もしその言葉がただの寝言ならそう言ってほしい。俺も忘れる。でも美鈴の本当の気持ちなら今改めてその気持ちを伝えてほしい」 「えっ」 しゃべりながら我ながら卑怯な手だなと思った。もし俺のことをどうでもいいと思っていたらこの恋心は捨ててしまえばいい。 本当ならば願ったり叶ったりで美鈴と付き合えばいい。そしてその責任は美鈴に押し付けている形になっている。 つくづく臆病でヘタレだな俺は、と自己嫌悪していると美鈴は覚悟を決めたのかしっかりと俺を見つめて口を開いた。 「……○○さん、もっといろいろなことが言えればいいんですがこれしか思い浮かびませんでした。○○さん、私はあなたが好きです」 夕日を背負い、薄く靄がかかった景色の中しっかりと俺を見つめている美鈴はこのうえなく美しかった。 まるでゲームで見た黄金の別離の中消え行く騎士王のように。 ならば俺も彼女の思いに答えなくては―― 「……俺もだ。いつからかはわからない。でも気がつくといつも君のことを考えていた。美鈴、君が好きだ。俺とずっと一緒にいてほしい」 一瞬、しかし二人にとっては永遠のように感じられた時間が過ぎたあと、美鈴の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ始めた。 「め、美鈴?」 「うっ、ぐすっ、よ、よかったぁっ、こ、断られたらどうしようかとっ……」 俺は美鈴に駆け寄りぎゅっと抱きしめた。 「うぅっ、こわかった、ほんとうはずっとまえからすきだったけど、こわくて、あしがすくんで、いえなかったんですぅ……」 やれやれ、どうやら俺たち似たものどうしだったらしい。 「大丈夫だよ、美鈴。これは夢じゃないし、俺はちゃんとここにいる」 「う、うわあぁん、○○さん、○○さぁん……」 縋りついて胸に顔をうずめて泣きじゃくる美鈴。俺はそっと背中を撫で続けた。 優しい気持ちで胸がいっぱいになる。でもやっぱり美鈴は泣き顔より笑顔の方がいい。 俺は美鈴の頬に手を当てると 「あっ――」 そっと口をふさいだ―― 帰り道、美鈴は付き合っていることがバレたら恥ずかしいから内緒にしておきたいと言ってきたので二人きりのときしかイチャイチャしないことと約束したのだが ときおり、唇に手を当てて顔を赤らめていればだいたい何があったのかわかるし、数日後文々。新聞にあのキスしている場面をバッチリ捉えた写真が載っていたので 隠すどころか幻想郷全ての公認カップルになってしまい、恥ずかしさのあまり美鈴はオーバーヒートして倒れてしまった。そして―― 「針よし、竿よし、仕掛けよしっと。うん、ちゃんと全部揃ってる」 久しぶりの休み、俺はまた釣りに出かけようとしていた。2人分の竿を持って。 「○○さ~ん、遅いですよ」 「悪い、準備してたら遅くなった」 門には白いシャツ、洗いざらしのズボンという格好の美鈴がいた。彼女なりのおめかしらしい。けどそれが美鈴らしい。 「ふふふ、今日こそは○○さんより多くおっきい魚釣ってみますよ」 「おっ、言ったな。俺だって負けないぞ」 軽い言い合いをして、けれども手はしっかりと繋いでいつもの釣り場に向かう。 抜けるような青空、今日もいい釣り日和だ―― 13スレ目 102 ─────────────────────────────────────────────────────────── 『…よし、あとは包むだけか。』 俺○○はチョコレートを作っているまぁ慣れない事をしているので十回ぐらい失敗したが… 『…まぁそんなことはどうでもいいか』 などと独り言を言ってチョコの出来具合いを見てみる 『よし、我ながらいいできだ。』 ちなみにチョコレートの作り方はパチュリーさんに本を借りた。後でお礼言いにいかなくちゃな などと考えながら作業しているといつのまにかできていた。 さぁ届けにいくかな紅魔館の門の前で毎日頑張っているあの愛しの人へ 13スレ目 501 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「隊長、○○さん来てますよ」 「早く行ってあげてくださいよ、ほらほら」 紅魔館のメイド達にも、昼休みがある。 だが門番隊に限っては、いつ来るかわからない侵入者に対処するため 休憩は交代制だ。 隊長である美鈴も例外ではない。 館内で働いている○○とは必ずしも同じ時間に休めるとは限らないのだが、 部下のメイド達の(多分におせっかいじみた)好意のおかげで、 最近はよく二人で昼食を取っている。 二人で過ごせる数少ない時間だ。 今日も、休憩中に詰所に向かう○○の姿を見かけたメイドが美鈴を呼びに来た。 「……すみません、ちょっと抜けますね」 「ごゆっくりー」 詰所へ走る。付き合い始めてもうしばらく経った今でも、 これから会えるというだけで心が躍った。 「……ふぅ」 「あれ、○○さんどうしたんですか?」 昼食のサンドイッチを食べながら、 ○○が小さくため息をついたのを、美鈴は見逃さなかった。 「ん?いや、大丈夫。何でもな……ふあ」 心配をかけまいと取り繕おうとする側から、あくびが一つ出る。 「疲れてるんじゃないですか?」 以前からの仕事である館内の雑務に加え、 最近の○○は空いた時間で鍛錬を行っている。 美鈴と恋仲になってからは門番隊への転属を希望しているのだが、 結界の外から来たただの人間である○○では、侵入者との戦闘を含む仕事には就けない。 そのため、寝る間も惜しんで基礎訓練や魔法の勉強に励んでいるのだが、 さすがに少しこたえているようだ。 「がんばってくれるのは嬉しいですけど、無理して身体を壊しちゃだめですよ?」 「うん……でも少しでも早く、近くで美鈴を支えられるようになりたいと思ってさ」 「……ありがとうございます」 とは言え、疲労が溜まっているらしい○○のことが、美鈴は心配だった。 「―そうだ、○○さん中華料理は苦手じゃないですか?」 「いや、むしろ好きな方だけど……なんで?」 「良かった。○○さんのために、今度元気が出る秘伝の特製スープを作りますね!」 「え?美鈴って料理できるんだ」 「もう、失礼ですね。華人小娘の二つ名は伊達じゃありませんよ? 三食付き住み込みのお仕事で作る機会は多くないですけど、 咲夜さんが創作中華に凝った時だって結構アドバイスしたんですよ」 確かに、○○は今まで美鈴が調理をしているのを見たことがなかったが、 言われてみれば不得意なイメージは浮かばない。 何より美鈴の手料理が食べられるのは嬉しかった。 「じゃあ、お願いしようかな」 「任せてください!えーと……四日くらいしたら時間ができるので、 その時に作りますね」 「うん、楽しみにしてる。 ……あ、そろそろ戻らないと」 そう言って、○○は仕事に戻っていった。 「……よし」 ○○が見えなくなると、美鈴は小さくつぶやいて気合を入れた。 スープの材料はちょうど揃っている。 ただ、四日後に作る、というのは嘘だ。 遠慮させてしまうといけないと思って言わなかったが、 完成まで三日三晩煮込まなければならない。 「○○さんには、元気でいてほしいですからね」 今晩から始めれば四日後には出来上がりだ。 勤務中は厨房担当のメイドに頼んで見ていてもらうことにして、 時間が空いた時は自分で付いていればいい。 美鈴は準備にとりかかることにした。 ☆一日目 「……あら?」 夜の巡回中、咲夜はふと足を止めた。 何だか良い匂いがする。 食欲をそそられるような匂いだ。 「何だろう。厨房の方みたいね」 使うのは問題ないとしても、食事時でもないのに誰が使っているのか。 夜勤のメイドが夜食でも作っているのだろうか。 一応、確かめておく必要がある。 咲夜は厨房に向かった。 ―入り口にメイドが立っている。 どうも門番隊らしい。 「あ、メイド長」 「こんな時間に何をやっているのかしら?」 「……咲夜さん?」 奥から声が聞こえた。 聞き覚えのある声だった。 程なく声の主がやって来る。 「すみません、ちょっと厨房使わせてもらってます」 「それはいいけど……美鈴、もう遅いのにどうしたの?」 「ええ、ちょっと作りたいものが」 そこまで言って、美鈴は横に立っているメイドに目をやった。 ちょうど休憩時間で手の空いていた彼女は、厨房に入る美鈴を見て 鍋の番を買って出てくれたのだ。 「ほら、大丈夫だから貴女はもう休みなさい?」 「えー、だって隊長の『手料理でラブラブ大作戦』がうまくいくかどうか心配で……」 「っ!?べ、別にそんなんじゃありませんよ!ほら、明日も早いんだから!」 メイドを追い立てるように帰した後、横に咲夜がいたことを思い出したらしく、 美鈴は顔を赤らめた。 「手料理でラブラブって……○○に?」 「ええ、そうですけど……で、でも別にそういうつもりじゃなくて、 ○○さんが最近疲れてるようだから元気が出るようにと思って」 なるほど、中では寸胴鍋が湯気を立てている。 側に寄ってみると、良い匂いが一段と強くなった。 だが覗き込んでも、鍋の中身がなんなのかよくわからない。 ……底から浮かんでくる泡が虹色なのは気のせいだろうか? 「変なもの入れてないでしょうね?」 「生薬とかは入ってますけど、身体に良くないものは入れてませんよ。 本当は秘密ですけど、咲夜さんになら教えてもいいです。 まずですね……」 「や、教えてくれなくていいわ」 気にはなる。気にはなるが、知らない方がいいような気がして、 咲夜は美鈴の言葉をさえぎった。 「そうですか?まあ最終的にはスープを飲むもので、材料はほとんどダシなんですけどね。 これは美味しくて、よく効きますよ。○○さんもきっと元気になってくれます!」 目を輝かせてそう言う美鈴をしばらく眺めていた咲夜は、 やがて肩をすくめると微笑を浮かべ、ぽんぽんと美鈴の肩を叩いた。 「ま、がんばりなさいな」 それだけ言って、咲夜は厨房を後にした。 途中、○○が向こうから歩いてきた。 本を何冊も抱えているところを見ると、 図書館から魔法の勉強用に本を借りてきたところらしい。 「…………幸せ者」 すれ違いざまに、声をかける。 何のことかわからないらしく、ぽかんとしている○○を置いて、 咲夜は足早に立ち去った。 ☆二日目 今晩も、美鈴は誰もいない厨房で鍋の側に付いていた。 「うん、いい感じ」 経過は順調だ。やっぱり愛情を込めているから、などと考え一人赤面する。 「……何を作っているのかしら?」 と、いつの間にか誰かが厨房に来ていた。 「お嬢様!?」 「あら、美鈴なの。それは何?」 やって来たのはレミリアだった。 普段なら厨房に入ってくることなど滅多にないのだが。 「な、何故こんなところへ?」 「なんだか変わった、いい匂いがしたものだから。どれどれ……」 そのままでは届かないので、少し浮かび上がって鍋の中を覗き込んでいる。 「えーっと、これは……スープですが」 「そう。美味しそうね」 答えながら、美鈴は何となく悪い予感がしていた。 「これ、私がもらうわね」 ……予感は的中してしまったらしい。 「あっ、あの!」 「何?」 レミリアには何とかして諦めてもらわなければならない。 こんなに一生懸命作っているのも、○○に食べてほしいからなのだ。 「まだ完成していないんです。何日か煮込まないといけなくて」 「そうなの?じゃあ出来上がってからもらうことにするわ」 逆にカウンターで追い詰められてしまったが、ここで膝をつくわけにはいかない。 「ま、まだ入れてない材料があるんです」 「出来上がってからでいいと言っているでしょう?」 「いやその、それがですね」 とにかく今は、何としても状況を打開したかった。 「―にんにく、なんですが……」 本当は、にんにくを入れなければならないわけではない。 が、ついそんな言葉が口をついて出た。 聞いた瞬間、レミリアの表情が引きつる。 「ほう、にんにく…… よりによって私の屋敷で、にんにく入りの料理を作ろうとしていたと言うの。 それなりの覚悟はできているんでしょうね」 怒りに満ちた声が、ゆっくりと、絞り出すように発せられた。 (あれ、私もしかして生命の危機にさらされてる?) 言ってしまった以上取り消すこともできない。 絶体絶命かと思われた時だった。 「ああお嬢様、こちらでしたか ……どうなさったんですか?」 レミリアを探して入ってきた咲夜は、 ただならぬ空気を察したらしく、レミリアに尋ねる。 「門番の謀反よ」 「ち、違いますよー!」 「じゃあその鍋は何なの!?」 「?……お嬢様、その鍋でしたら」 咲夜は身をかがめると、レミリアに耳打ちした。 「は?手料理でラブラブ?」 「そうです」 「いや咲夜さん、だから私はただ」 「……でもにんにくを入れるって言うのよ」 「……そうなの、美鈴?」 昨夜のメイドの言葉をそのまま受け取っている咲夜に申し開きをしようとした美鈴は、 突然飛んできた質問に黙ってしまった。 今更レミリアの前で、とっさに思いついただけですとは言えない。 お仕置きは覚悟の上で美鈴は小さく頷いた。 「事情が事情だから許してやってもいいけれど…… このままここで作らせるわけにはいかないわね」 意外にもレミリアは怒りを静めたようだ。 部下の恋愛事情が、退屈しのぎになると思ったのかもしれない。 「ああ、それでしたらお嬢様。外に場所を移させては?」 「そうね。門の外ならまあいいでしょう」 「―そういうわけだから、美鈴。 続きは何とかして外でやりなさいね? さ、お嬢様。お腹が空いているのでしたら、何か軽いものでも用意しますわ」 そう言って、咲夜はレミリアを連れて行ってしまった。 とりあえず、目前の危険は回避された。 が。 「……どうしましょうか」 外での煮炊きをどうするか。 言った以上にんにくも入れなければならないが、 もちろん紅魔館にはないので調達してこなければならない。 厨房の隅で作る分には隠し通せたが、 外で作っていれば目立つことこの上ない。 ○○に見られて、外で作ることになった経緯を話すことになれば、余計な気を使わせてしまう。 それでは最初に嘘をついた意味がない。 問題は山積みだった。 ☆3日目 良い天気だ。 春が近いせいか、風もそろそろ暖かくなってきた。 さわやかな気候とはうらはらに、美鈴は疲れていた。 昨夜の内に何とか門の脇にかまどを組むことができた。 既に火を焚いて鍋を移し、風除けとカモフラージュのためにテントを張った。 ○○が来ても、何とかばれないようにはできるだろう。 にんにくは咲夜に昨日説明できなかった事情を話し、 お使いの時に買ってきてもらうことになった。 これで一通り対策を取ることは出来たが、 一晩であれこれと動き回った結果、だいぶ消耗してしまっている。 「隊長、正門前方に飛行物体確認!霧雨魔理沙です!」 そしてこんな時に限って、侵入者がやってくるのだ。 「……総員、迎撃体制の配置に着いて!」 「待ってください、館内から連絡です…… 今日は一応お客様なので、そのまま通せということです」 ほっと息をつく。 魔理沙を乗せた箒はすぐに門の前まで飛んできて、美鈴の前に着陸した。 「よぉ門番。今日はいつもみたいな出迎えはないんだな」 「館内から連絡がありましたからね。お客様だということで」 「ああ、フランと遊んでやる約束があったんだ。ところで」 魔理沙は親指を立てて、美鈴の横のテントを指した。 「そりゃいったい何だ?中から美味そうな匂いがするんだが」 「……秘密です」 「……まあいいけどな。気をつけた方がいいぜ? 色々寄ってきそうな匂いだからな」 門の中へ入っていく魔理沙の背中を見送った美鈴は、 急に不安にかられてテントの中を覗いた。 中には誰もいない。異状もない。 鍋の上の虚空から突き出た、お玉を持った手を除けば。 「……はっ!」 一難去ってまた一難などという言葉が頭をよぎるのを隅に追いやり、 牽制程度の力を込めて、弾を放つ。 手は瞬時に消えて弾をよけた。 そして次の瞬間、空中に現れたスキマから顔だけを出したのは八雲紫だった。 「紅魔館の方に何だか面白そうな気配がしたから来てみたんだけど…… 少しぐらい味見してもいいじゃないの」 「貴女に食べさせる分はないですよ。 それは○○さんのための元気が出るスープです」 構えを取る美鈴に対し、紫はあくまでも悠然と話しかけてくる。 「元気が出るって……貴方達そんなに毎晩がんばってるのかしら?」 「な……そういう意味じゃありません!」 ついつい声が大きくなるが、相手はどこ吹く風といった様子だ。 「……まあ、そういうことなら私は退散するわ。 ああ、それと先に謝っておくわね」 「?何をですか」 紫は心底気の毒そうな顔で言葉を続ける。 「何も白玉楼に遊びに来てる時にスキマを開ける必要はなかったなと思って。 このスキマは閉じるけど、時間の問題でしょうね」 「あ、ちょっと紫さんいったい何を……」 姿を消そうとする紫に追いすがろうとした美鈴は、 背筋に寒気にも似た感覚を覚えてテントの外に飛び出した。 圧倒的なプレッシャーが近づいてくる。 幻想郷屈指の大妖怪とはいえ、半ばからかいにきただけだった紫と比べ、 これは強大な捕食者の存在感だ。 「……隊長!」 部下のメイドが駆け寄ってくる。 「落ち着いて!どこから来るかわかりますか? 正面?それとも裏から?」 「真上です!上空から何か近づいてきます!」 思わず見上げた空から、ゆっくりと降りてきたのは、 「ごきげんよう、門番さん」 ―西行寺幽々子だった。 いつもどおりの柔和な笑顔だが、 向かい合っているだけで押しつぶされそうな気迫を感じる。 「スキマからすごく美味しそうな匂いがしたから、 ちょっと通してもらおうとしたのに、紫ったらスキマを閉じちゃうんだもの。 ここまで来るのは大変だったわ~」 後ろでメイドが倒れた。 神経が耐え切れずに気を失ったらしい。 「一口だけで、いいのだけれど。 そのテントの中にあるお料理を、私にもいただけないかしら?」 「幽々子さまっ!」 息を切らせながら幽々子に続いて現れたのは、妖夢だった。 「美鈴さん、だまされてはいけません! 幽々子さまの一口は並の一口では……あうっ」 幽々子が手にした扇で妖夢を軽く叩く。 それだけなのに、妖夢が吹き飛ばされた。 「失礼なことを言わないの。 ……どうかしら? まあ、どうしてもだめと言うなら、 ちょっと倒れてもらってその間にいただくことにするわ」 折れそうな膝に力を込める。 「…………おおおおおおぉぉぉぉ!!」 絶望的な戦いとはいえ、退くわけにはいかない。 全ては○○のために。 気合を込めた叫びと共に、弾幕ごっこが始まった。 「……門の前が騒がしいようね」 「白玉楼の西行寺幽々子が来た模様ですが、 館内に侵入する意思はないようです」 咲夜はレミリアの前に紅茶のカップを置きながら言った。 「許可をいただけるなら、私が出ますが」 「……いいわ。大体目的の察しがつくから」 カップを持ち上げ、紅茶を一口飲む。 「門番、意外と善戦してるようね」 「ええ。格の違いを考えると、あっという間に勝負がつきそうなものですが」 例の鍋を守ろうとするために普段より能率が良くなっているのはいいが、 招かれざる客を増やしているのもあの鍋だ。 なかなかうまくいかないものである。 「咲夜、やっぱり行ってもらえるかしら。 これでまた作り直すなんてことになったら、いつまで経っても騒がしいことになるわ」 「……かしこまりました」 ☆できあがり 「美鈴、いる?」 ○○は門番詰所に来ている。 昨日は侵入者が来ているということでここへ来られなかった。 昼休みになったが、今日は会えるだろうか。 「……あ、○○さん!」 美鈴は既に詰め所に来ていた。 明るい笑顔だが、目の下には隈ができている。 昨日の激闘のせいなのだが、○○には知る由もない。 ただ、理由はわからなくても美鈴のことが心配されてならなかった。 「あの、美鈴大丈夫?何だか疲れてないか?」 「そ、そんなことないですよ!それより○○さん」 部屋の隅にあった、毛布で包んだ何かを机の上に持ってくる。 「この間言ってたスープ、ちょっと作っておいたんですよ。 良かったら食べてみてくれませんか?」 保温のための毛布をはがすと、中からは寸胴鍋が出てきた。 ……三日三晩かけて作ったことや、 昨日ギリギリのところで咲夜が間に合い、ようやく復活した妖夢も協力して なんとか幽々子から死守したことは黙っていた。 「さ、どうぞ」 蓋を取り、中のスープを鉢によそって○○の前に置く。 「いただきます」 透き通っていて、見た目からは味が想像できない。 れんげですくったスープを、○○は一口すすってみた。 美鈴は期待に満ちた表情で彼を見つめている。 「これは……」 うまい。うまいだけでなく、身体の底から力が湧いてくるようだ。 一口味わうと、さらにもう一口食べたくなる。 食べたくなくても食べてしまうとか、 薬でトリップするような感覚だとか、そういった意味ではない。 あくまで健康的に、身体が良い方向に引き上げられるような味。 一説に蓬莱の薬というものは非常に美味であるというが、 それにすら匹敵するのではないか。 感動を言葉にしきれず、○○が発したのはただ一言だった。 「うまい!」 「……良かった、喜んでもらえたみたいですね」 あっという間に平らげ、○○は一息ついた。 「まだおかわりありますからね」 二杯目をよそってもらいながら、○○はふと思いついたことを聞いてみた。 「なあ美鈴、このスープって人間にしか効かない?」 「いえ、妖怪にも効果がありますけど……何でですか?」 「いや、美鈴にも一緒に元気になってほしいから」 一匙すくって、美鈴に差し出す。 「はい、あーん」 「そ、そんな……恥ずかしいですよ」 「誰もいないみたいだから、いいかなと思って」 詰所には他の門番隊がいてもおかしくないはずだが、 確かに今は誰もいない。 隊長に気をつかって席を外したらしい。 「……あーん」 ためらいがちに開いた美鈴の口に、○○はれんげを滑り込ませた。 口が閉じ、スープを飲み込むのを確認してゆっくりと抜き取る。 美鈴はしばらく顔を赤くして○○の顔を見つめていたが、 やがて○○の手に手を絡めて、れんげを自分の手の中へと移した。 鉢から一匙すくい取る。 「お返しです。はい、あーん」 「……あーん」 「…………暑いわね、この部屋は」 「んむっ!?」 「さ、咲夜さん!?」 ちょうど○○が口を閉じたところで、 二人はいつの間にか横に咲夜が立っていたことに気付いた。 「―咲夜さん、どうしたんですか? あ、もしかして俺に急な仕事とか」 何とか口の中のスープを飲み込み、落ち着いた○○が問いかける。 さっきまでの光景を見られたと思うと顔が熱い。たぶん美鈴も、同じような状態だろう。 「逆よ。お嬢様から伝言。 貴方と美鈴に明日の夜まで休暇を与えるそうよ」 「休暇?どうしてまた急に」 「にんにく入りのスープを飲んで館の中にいられると気分が悪い、 ということにしておけと仰っていたわ」 実際の所は、粋な計らい、というようなものらしい。 普段なかなか二人で遠出する機会がないので、ありがたい。 咲夜は心なしか居心地の悪そうな様子で、それだけ伝えると部屋を出て行った。 「……休暇なんて久しぶりですよ」 「せっかくだから満喫しないとな。どこに行こうか、美鈴?」 「あ、ちょっと待ってください○○さん。 もう少しだけ」 そう言って、美鈴は置いてあった鉢とれんげを取った。 「あーん」 「……あーん」 ……結局出かける前に、鍋が空になるまで交互に食べさせあった。 結果、過剰に元気になった二人が休暇をフル活用し、 幻想郷中に甘い空気を撒き散らすことになるのだが、 それはまた別の話である。 14スレ目 31 うpろだ1017 ─────────────────────────────────────────────────────────── ある晴れた日のこと。 男は少女への愛を、高らかに叫んだ。 「美鈴ー! 愛してる、君が好きなんだ。君の全てが愛おしいんだ! 美鈴! めいりーん!!」 「ああ、嬉しいです○○さん! 私も愛してます! だからお願いもっと言って! もっとー!」 「めーりーん!!」 「もっとー!!」 そんな二人と少女たちのお話。 「由々しき事態です」 夕闇の中のティータイム。 十六夜咲夜は粛々と警鐘を鳴らす。 彼女のお仕えするお嬢様、レミリアはぴくりと片羽を振るわせた。 「何の事かしら?」 「あの二人のことです。さすがにもう限界かと」 あの二人とは○○と門番のことか。 つい先日、紅魔館を震撼させた傍迷惑な告白劇はなかなかの見物だった。 些細なすれ違いから、涙あり修羅場ありのラブコメディ。 最後は関係者(一方的に巻き込まれた者も含めて)によるライスシャワーならぬ弾幕シャワーで締めくくられたそ れは、レミリアのそれなりに長い記憶の中でも派手なものとして長く残るだろう。 「何か問題でも? あれでなかなか絵になるし、愉しいことじゃない」 「……そう、見えますか」 「ぁ、それがですね。本人たちとは違う所で多々問題が発生してるんです」 目を伏せて言葉を詰まらせた咲夜に変わり、説明役をかって出るは後ろに控えていた小悪魔。 胸元からメモ帳を取り出して咳払いを一つ。 「妖精メイドの皆さんから苦情が多く寄せられまして。曰く、『廊下でイチャイチャするな』『庭先でイチャイチ ャするな』『厨房でイチャイチャするな』『門前でイチャイチャするな』『私の前でイチャイチャするな』『浴場 でニチャニチャするな』エトセトラエトセトラ……」 「全部同じじゃない」 「最近は直接行動に移るものも出てきたんですよ。攻撃を仕掛けたり、何を間違ったかサカったメイドが○○さん に迫るなんてのもあります」 前者は歯牙にもかけられず、後者は九割がた美鈴に撃墜されるのが関の山であるが。 「ですから、問題なんです!」 咲夜、再起動。 ちなみに発情メイドの残り一割ほどはナイフで仕留められている。 「現にメイドの業務に支障をきたしております。即刻、あの二人に何らかの罰則を! もしくは異動命令を!」 「異動って……○○は何か仕事してたっけ」 「本人の希望もあって庭で花壇の面倒をさせております」 「それがまた問題に拍車をかけてまして……」 もともとは美鈴が門番長と兼任していた花壇の世話。 ○○がそれに就くことで美鈴は門番の仕事に専念できる筈、だったのだが。 「勤務エリアがお互い目と鼻の先じゃないですか。暇さえあれば職務中もイチャイチャベタベタと……」 「……それは、問題ね」 「大問題なんです!」 しかしここでふと思い至る。 怠慢かと思われた門番、しかし近頃は侵入者は全く現れない。 彼女の親友であるところの魔女も、最近は蔵書を盗みにくる黒白鼠が現れないといたくご機嫌であった。 眼下に見える花壇も荒れてはいない。 彼らの仕事に不備は見られないようだが。 「これはどういうこと?」 「えーっと……」 人目もはばからず門前で乳繰り合う二人。 そんな二人の邪魔をするような侵入者は、愛の障害とみなされる。 愛に生き、愛を守るEX美鈴の指先一つでダウンさ! そもそも二人の成形する桃色素敵空間に入り込める輩はいない。 恋符、愛に敗れたり。 ここに紅魔館の門は鉄壁と化したのだ。 「結構なことね。機会があれば遠目に見てみようかしら」 「お嬢様!!」 面白そうだし、と笑うお嬢様。 目が潰れてしまいます、と騒ぐ従者。 「どうやらお嬢様はあの二人を甘く見られているご様子ですね」 「実害はないからいいんじゃない。どうせ妖精メイドだって役に立たないのは変わらないんだし、いっそ全部のメ イドが○○に殺到するとか。それをばったばったと薙ぎ倒す美鈴。あら、割と愉しそうじゃない」 パチェも喜んでるし、と付け加える。 しかし流石はメイド長、待ってましたとばかりに小悪魔に目配せを送る。 頷き、一度退室する小悪魔。 「……そんなこともあろうかと、パチュリー様を先に説得して参りました」 「説得って、どうやって? パチェが本より優先するものがそうあるとは思えないんだけど」 「今日の昼、あの二人に休憩時間は図書館でゆっくりしていくよう勧めました。そして……」 「その結果がこちらでーす」 「あら、パチェ?」 戻ってきた小悪魔が小脇に抱えて運んできたのはパチュリー・ノーレッジその人。 だらりと伸びた四肢に力はなく、椅子に座らせてもぐったりとして動かない。 むきゅーの音も出ないとはこのことか。 「……れ、レミィ……」 「パチェ! どうしたの、しっかりなさい!」 「あの二人は……危険、よ……」 「パチェー!」 警告を最後にがくりと崩れ落ちる魔女。 それでも本を手から離さないのは流石だが、その本が恋愛詩集である辺りダメージを隠せない。 「バカップル糖分過剰摂取による動脈硬化、並びに消化吸収用のビタミンB不足によるものと思われますね」 「お解りいただけましたか、お嬢様。いま館内は危険度AAA。愛のモラルハザード馬鹿二匹を野放しにしている 状態。紅魔館改め桃魔館などと呼ばれてからでは遅いのです。何卒、御処置を」 「ふ、フフフ、面白いじゃない。ばかっぷるがどれだけのものよ。恐れてたまるものですか、私はレミリア・スカ ーレットよ! こうなったら是が非でも見物したくなってきたわ!」 駄目だこのお嬢様……早くなんとかしないと……。 不適に微笑むレミリア、どうやら向かうところ敵なし状態の『ばかっぷる』なるものに刺激されたご様子。 無駄にカリスマ溢れるその雄姿に咲夜は頭を抱えた。 空回りする主従を尻目にふう、と乾いた息を漏らす小悪魔。 「わかりました。もう建前も大義名分も無しです」 「……? 貴女、何を」 佇まいを改め、覚悟を決めた様子の彼女を何事かと見やる。 これまでの報告にも誇張や虚偽はないがそれ以上の被害でもあるのだろうか。 もともとこの場を設けたのは咲夜の提案、彼女はそれに追随する形だったのだが。 怪訝そうな咲夜をちらりと見、胸の前で指を組み訥々と小悪魔は語り出す。 「……正直なところ、キツいものがありまして。恋に敗れた女としては、焦がれた殿方が他の女性と仲睦まじくな されるお姿は、少し。ええ、少しだけちくりとしますね」 彼女が○○という男に心身ともに熱烈なアプローチをかけていたのは周知の事実だ。 であるならば彼の惚気ぶりを見て、心穏やかでいられる筈もなく。 その心情を慮ってか黙り顔を見合わせる主従。 小さく儚げに笑う彼女は、しかしやはり歴とした悪魔の眷属で。 「って咲夜さんが言ってました」 「んなっ!」 「へっ?」 今ここに明かされる驚愕の真実。 しのぶ恋、主にさえ気取られぬほど色も出さずに秘めるのが瀟洒たる所以か。 しかしそれも今となっては、砂上の楼閣に等しい。 鉄の仮面に入ったヒビは見る見るうちに綻びを大きくしていく。 「咲夜……あなた、そうだったの」 「ちちちち違います、違うんです! 言ってません私そんなこと言ってません!」 「恥ずかしがらなくてもいいですよー、咲夜さん。一緒に祝福のクナイ弾を雨霰とお二人にぶちかました仲じゃな いですかー」 「貴女も黙りなさい!」 「その話、もうちょっと詳しく聞きたいわね」 「おじょーさまー!!」 メイド長、大ハッスル。 頬といわず耳まで赤く染めて、ぱたぱたと両手を忙しなく意味もなく振る様は普段の彼女からは考えられない。 「いいでしょう、お話します。あれはお二人が結ばれた夜、そして同時に想いは届かぬものとなった夜。傷心の女 は二人、涙でウオツカを割って、儚く散った悲恋を肴にグラスを傾けたのです」 「嘘よ誤解よ捏造よ出鱈目よー!」 「ほうほう、それでそれで?」 お嬢様は興味津々。 一方で槍玉にあげられた従者はもう半泣きだ。 「『気のせいだと、何かの間違いだと思ってた。ううん、そう思い込んでたのかしらね。それでも私は現状に満足 していた。十分だったのよ、彼とたまに顔を合わせて、それで笑って挨拶して、労いの言葉をもらって……。でも いざああして突きつけられると、駄目ね。憎いとかじゃないのよ。本当。ただ、何をやってたんだろうって』」 「声帯模写っ? ていうかどこまで!」 「あなたそんな特技があったの」 それにしてもこの小悪魔、ノリノリである。 完璧な声真似に加えて物憂げな表情で再現されるそれは臨場感抜群。 時折声を詰まらせ、酒に見立てているのか紅茶をあおるなどと芸が細かい。 羞恥の小芝居は本人が泣こうが喚こうが耳を塞ごうが関係無しにノーカットで続けられた。 「――そして誓ったのです。いつか幸せをこの手に掴もうと! 私達、『正妻が駄目なら二号でもいいじゃない。 愛の人と書いてラ・マンと呼ぶのよ同盟』の名の下に!」 「ぁああああ! お黙れぇー!!」 咲夜、殴る! 殴る! 小悪魔、かわす! かわす! 「っ……! と、あの二人のせいでっ、色々と不都合が起きまして……っ!」 「いひゃいれふよ、ひゃふやひゃーん」 小悪魔のほっぺたをギリギリとひっぱりながら。 面の皮が分厚いのか伸びる伸びる。 おまけにちっとも痛そうに見えない。 「まあ、いいか。咲夜を泣かせたとあれば、俄然興味も湧いてきたし。私自ら動いてみようじゃないの」 「泣いてなんかいませんっ!」 「むしろ鳴かせてほし……あんっ、ダメっ。耳は弱いんですぅ」 無駄に艶っぽい声を上げるが、耳を引っ張られているだけだ。 「ともあれ、英断で御座います。この時間であれば、彼女は仕事中ですので……」 「○○は自室かしらね。そっちはそっちでなんとかなさいな。私は○○と話してくるわ」 「……お嬢様が○○に会うんですか? そちらは私から追って伝えるつもりだったのですが……」 「いけませんよー、咲夜さん。抜け駆け禁止って約束したじゃないですはひたたた」 「お・だ・ま・り・な・さ・い」 じゃれ合う二人を放っておいて、意気揚々と立ち上がるレミリア。 日はとっぷりと暮れていた。 いつぞやもそうだったが、あの人間が関わる夜は風変わりなものになる。 何にせよ、退屈しないのはいいことだ。 「ところで○○に異動を命じるとしたら、今度はどんな役職がいいと思う?」 「清掃班の人手はいつでも不足しておりますので、そちらに回すのがよろしいかと!」 「図書館勤務がいいと思いまーす!」 しかし小悪魔の彼女はともかく、咲夜ですらああだとは。 なかなかの拾い物だったのかもしれない。 だとするのなら、或いは―― 「――やっぱり私の側仕えとしておくのが、よかったかしらね」 その場を後にした彼女の顔には小さく笑みが浮かんでいた。 「はっ、今どこかでフラグの立つ音がしました。新たなルート開拓の予感! 難易度はHardですよー!」 「訳のわからないこと言ってないで、貴女も来なさい!」 「……むきゅー……」 そしてパチュリー置いてきぼり。 紅魔館の前庭。 夜風も涼しいその中で、三人の女が対峙している。 「あら、咲夜さんに小悪魔さんも。どうかしたんですか?」 にこやかに対応する美鈴。 もともと人当たりのよい彼女であったが、その笑顔はもはや後光が輝かんばかりだ。 愛って素敵。 「くぅっ! なんて輝き。これが正妻の余裕だとでもいうのでしょうかっ?」 「私の後ろに隠れない」 眩しいものでも見るかのように、手をかざしてよろめく小悪魔。 恐らく正妻以前に、彼女にはやましい所が多すぎるのではないだろうかと咲夜は思う。 まあ確かに、目の前の幸せいっぱい夢いっぱい、愛が豊かな胸いっぱい、な美鈴は直視に耐え難いものがある。 「……美鈴。貴女、最近は随分とご機嫌よね。今にも飛んでいってしまいそうなくらい」 咲夜さんは最近ずーっと不機嫌ですよねー、と呟いた小悪魔がドタマをしばかれた。えらく軽い音がした。 「そりゃあもう、愛しい○○さんと結ばれた私は上機嫌も右肩上がり! 天まで昇る勢いです!」 結ばれた、の辺りで小悪魔の目に濡れた色艶が瞬いた。 一方で咲夜の目からは一切の色彩が失せた。 「……そのせいかしら。足元が見えていないみたいだけど?」 「そんな! つま先から髪の先まで、私の身体で○○さんが見てないところなんてありませんよ! やん!」 いやだ私ったらなに言ってるんだろう、と恥じらう美鈴。 やだこいつなに言ってるんだろう、と歯軋る咲夜。 私も事故を装って何度も見せたんだけどなあ、と端っこに退避して小悪魔。 「……確認するのだけど、今この場に○○は居ないわね?」 「そうなんです。このあとお部屋で待ってる○○さんと二人っきりで、でへ、えへへへへぇ」 あーたまんねえ、とばかりに息を荒くする美鈴。 あーやってらんねえ、とばかりに溜め息を漏らす小悪魔。 あーもういいや、とばかりに呼気を鋭くする咲夜。 「……もういいわ。もうたくさん。もう知らない」 穏便に済ませる心積もりは、既に頭から消え失せた。 惚気はもういい。 惚気はもうたくさん。 どうなろうと、知ったことか。 取り出したナイフを一本、その切っ先を向ける。 「単刀直入に決めるわね、美鈴。貴女は、○○と別れる」 「……はい?」 快刀乱麻、一刀両断。 前置きも後書きも考えず、ただその一つを宣言した。 「ちょ、咲夜さん。もうちょっとやり方が――」 「囀らない」 もう少し手管足管回してやるものと思っていた小悪魔が口を挟もうとする。 しかしその口に銀のナイフが挟まった。 かちりと歯が刃を噛む。 これには流石の小悪魔も目を白黒と瞬かせてモールス信号で降参の意を表する。 「えーと、咲夜さん? 今、ものすっごい聞き捨てられるべき、且つ言い捨ててはいけないことを仰りませんでした?」 「一本釘を刺すだけでは足りない? 複刀でズタズタにしてあげるから、貴女は○○から身も心も引くの」 美鈴を纏う気ががらりと変わる。 咲夜も大量のナイフを周囲に浮かべた。 「なんでそんなこと言われなきゃいけないんですかっ!」 「○○の為にならないからよ。貴女が周りも向こうも見ないで振舞うから、彼までそれに影響される」 「○○さんは私のこと見てくれますもんっ!」 「ああそう、でもね――」 それを言うなら私も見ていたのだ、あの時から、彼の背中を、横顔を、ずっと。 でも今ではその度に、そのすぐ側に。 「貴女が見えるのが、とてもとても障るのよ!」 ヘッドドレスを掴み、投げ棄てる。 メイドから一人の女にフォームチェンジ。 事ここに至って、美鈴の方でも気づくものがあったらしい。 その様に少し怯んだが、それでも雄雄しく闘気を立ち昇らせる。 愛を守るため、EX美鈴スーパーモードここに見参である。 「私と○○さんは愛し合ってるんです! 誰であろうと何であろうと、手出し口出し後出し無用っ!」 「一人勝手に先走っておいて! こうして表に出てるんだから、出るトコ出てあげるわよっ!」 同時に地を蹴る二人。 ここに女の威信をかけた、弾幕勝負が始まった。 そしてその一方で。 「ひやー、修羅場ラバンバ。一人の男を巡って戦う二人の女、そしてそれを裏から見つめる私。どうしましょう。 ここはやはり、王道的に夕日をバックにクロスカウンターで共倒れしたお二方を、非道にも埋めちゃうとか。そし て哀しみに暮れる○○さんの心のスキマを埋めてみましょうか。Let s漁夫の利っ☆」 そこに降りかかる流れ弾! 流れ弾! 小悪魔、安地! 安地! その戦闘は熾烈を極め、その弾幕は鮮烈を窮めた。 弾と弾のぶつかり合い、魂と魂のぶつけ合い。 妖精メイドによる勝者予想集計は、メイド長4割、門番長3割、小悪魔1割、そしてその他(パチュリー様が乱 入して収める、お嬢様が乱入して勝ち残る、妹様が乱入してぶっ壊れる、自分が最後に勝つ等)が2割である。 そしてその結果は。 「○○さんは私が大好きーっ!!」 「見てるだけで何が悪いーっ!!」 「きゃー! ルール違反の相乗不可避弾幕! 皆さん見てる場合じゃないです逃げてー!!」 あたり一面総撃墜。 勝者も敗者も観客も、相打ちどころか丸ごと全部ノックアウトと相成った。 当然ながら、そんな状態で当初の目的が果たされることは無かったのである。 「全くもう。言い出したのは咲夜なのに、不甲斐無いったら無いわ」 「面目次第もありません……」 数日後、そこにはどうにか持ち直した咲夜の姿があった。 辛辣な言を愉しげに送るレミリア。 さらに後ろに小悪魔も控えている。 三名による、バカップル対策報告兼打ち上げのお茶会である。 「それにしても、さすがお嬢様ですねー。あのお二人もすっかり落ち着いて、苦情もサッパリなくなりました」 有耶無耶になったかと思われた二人の件であったが。 ○○と話し合ったらしいレミリアの采配により、屋敷内に所構わずイチャつくバカップル二人の姿はなかった。 両名、自身の仕事に今まで通り励んでいる。 仲のよさは相変わらず、愛も変わらずではあったが、時と場所を弁えるようにはなったらしい。 「○○のお願いを聞いてあげただけなんだけど。いや、それもこれもどれも私のカリスマの為せる業か」 「しかし、同じ部屋に住まわせただけでどうしてこうも変わるものでしょうか」 主のカリスマとやらを疑う訳ではないが、彼女にはその理由がイマイチ判らないらしい。 そう口にした彼女がやや憮然としているのはそれだけのせいではないだろうが。 「ふっふっふー。甘いですよ咲夜さん。適度な刺激こそが、愛しい二人をより燃え上がらせるのです!」 「……そういうものかしら」 「そういうものなの?」 「そういうものなんです」 したり顔で不敵に笑う小悪魔。 「普段からずーっとべったりだとやっぱりマンネリですからね。敢えて会えない時間を作ることでメリハリをつけ るんです。緩急ってやつです」 「せいぜい半日だけなのに?」 「たかが半日、されど半日ですよ、お嬢様。例を挙げてみましょう。○○さんと半日顔を合わせることが出来ず、 挨拶もされることのないままの咲夜さん。どうです?」 「あら、とんでもなく不機嫌」 「例になってないわよ!」 「ところがどっこい、その後廊下でばったり○○さんに出くわし二言三言会話する咲夜さん」 「あら、とてつもなく上機嫌」 「お嬢様ぁー!」 ちなみに今日はいまだ会話なし。 多分この後も会うことなし。 「そして何より! 同じ部屋でベッドは一つ! それでやっぱり枕は一つ!」 「枕は二つじゃないの?」 「腕枕って素敵だと思いませんか、咲夜さん?」 「私に聞かないでっ」 たまに膝枕、どちらかと言えば肩枕、あるいはそれは胸枕。 「二人が中で何をしているか。気になりませんかお嬢様?」 「気になるわ。見てないの咲夜?」 「見てません。見たくもありません」 「家政婦は見るのが仕事らしいわよ?」 「私はメイドですっ」 「メイド長でしょう、あなた」 最近のレミリアは頻繁に○○と話している。 それは外界のことだったり、他にも、まあ色々。 「仕方ありませんねー。それでは不肖ながら小悪魔、ありのまま昨夜見てきたことを話しますっ!」 いつの間に、どうやって見たというのか。 鼻息荒い小悪魔を前に、咲夜の頭はどうにかなりそうだった。 「『ねえ、○○さぁん。今日も、その……シてくださいよう』」 「ん、なっ……」 「おおっ」 毎度おなじみ小悪魔劇場。 美鈴の猫撫で声が普段の惚気っぷりより糖分三割り増しだ。 顔を真っ赤に染めて絶句する咲夜。 身を乗り出してかぶりつくお嬢様。 「『わかってるよ美鈴。ほら、いつも通り後ろを向いて』」 「な、んななななな……」 「後ろ? いつも後ろなの?」 「『はい、お願いしますね……んッ』」 一人二役、男声だってお手の物。 そして美鈴の、明らかにあからさまに普段とは違う意味で甘い声。 「いいい、いけません。聞いてはいけませんお嬢様!」 「咲夜、目を塞がれると前が見えないわ」 「『あ、はぁっ……ふあ、んっ! 気持ちぃ、ひ、あんっ!』」 完璧に似せた声色のせいで、寧ろ見えない方が生々しいが。 「『そんなにイイんだ? じゃ、ここをこうする、とっ……!』 『ぅあンッ! あ、あーっ! すごっ、そこっ! スゴいのぉ……!!』」 「……○○ってそんなに凄いの?」 「わ、私に聞かれても困ります!」 「『美鈴だって、ほら。ここ、こんなになってる……』 『やぁ……ん、言わないでェ……恥ず、かし、ぃ、あッ!』 『ぴくぴくして、こんなにカタくして。凄いよ、美鈴の……』」 「…………」 「…………」 ごきゅり、と。 どちらともなく生唾を飲み込む。 激しさを増す蜜夜の音声再現に、もはや相槌も静止もなく聞き入っていた。 「『美鈴の 肩 こ り 』」 「……肩」 「……こ、り?」 「『だってぇ、基本的に肉体労働ですもん。あっ、そこそこ。くぅあー、極楽ですねえ』」 しおしおと、場の盛り上がりが萎れていくのが見て取れるようだった。 要はただのマッサージ音声。 確信的な犯行であることは間違いない。 「なんだ、つまらない。私も今度○○にやらせてみようか」 「……まあ、そんなことだろうとは思ったけれど。わかってたわ。本当よ?」 「『それにやっぱり、大きいとどうしても負担になっちゃいますし……やんっ、そこは違いますってばあ』」 瞬間、咲夜の時間だけが空間ごと音を立てて止まった。 寧ろヒビが入った。 「……という感じでしたー。羨ましいなあ、○○さんの肩もみ。私もして貰いたいですねえ」 声真似を終えて小悪魔が大きく伸びをする。 その動きに合わせて揺れる、たわわに実った二つのソレ。 なるほど、彼女の肩にかかる重さも並々ならぬものがあるだろう。 「咲夜さんもお願いしてみたらどうです?」 そう言ってちらりと目線をくれる。 無論のこと彼女の魅力を損なう訳でもなく、全体からすれば美しいラインを誇るだろうがしかし。 さほど負担にはならなそうな、咲夜のソレ。 「肩とか、凝りません?」 ぺたぺたと自分のソレに手を当てるレミリアは置いておいて。 強烈な皮肉であった。 「あああ貴女って娘はーッ!!」 激昂した彼女の手に握られるは銀のナイフ。 今にも投擲せんと振りかぶられたその時。 「ひゃ、危ないじゃないですかー。『咲夜さん』」 「う、あっ」 ○○の声で名前を呼ばれ、ピタリとその挙動は静止する。 「『そんなに怒ることないですよ。それに咲夜さんのだって可愛くて、好きですよ。俺は』」 「な、何を……」 ナイフはどこかに引っ込んだ。 声真似だとはわかっていても、手が出せない。 その声は、その言葉は、あまりにも咲夜にとって甘美に過ぎた。 「『ねえ、咲夜さん。いや、咲夜』」 「あ、あ。あぁ……」 なんかもう本人よりいい声で、ウィスパーボイス。 それだけで彼女は腰砕けだ。 何よりその声で名前を呼び捨てというのは、クるものがあった。 「『かわいいよ咲夜。食べてしまいたいくらいだ』」 「駄目、駄目よ。○○……!」 シチュエーションとしては、強引に迫る○○と受身の咲夜といったところか。 全てにおいてありえない状況だが、意外にもツボに嵌ったらしい。 身をよじり、形だけの拒否を口にする咲夜。 目を瞑るのは逆効果だというのに。 「『いいだろう、咲夜。俺、もう我慢できないよ……』」 「○○、だめ……。し、仕事中なのよぉ……って。あ、れ?」 目の前にいる、と錯覚した彼の胸を弱弱しく押す。 無論のこと手応えはない。 目を開けて確認してみれば、声の主たる小悪魔は声真似を止めてレミリアと談義に花咲かせていた。 「仕事中だと駄目なの?」 「いえいえ、これは所謂OKサインです。もう心も肢体(カラダ)も準備は万端なのです」 「そもそも咲夜ったらいつも仕事中じゃない」 「つまり24時間オールオッケーってことですよ。any time、any where、only to him! いやん、咲夜さんのエロス! もっと!」 羞恥と期待の赤から、殺意の無色へ。 果たして、一人の修羅がここに誕生した。 「彼の声で、醜い悲鳴を上げなさいっ!!」 咲夜、ナイフ! ナイフ! 小悪魔、かすり! かすり! そのまたさらに数日後。 今日も今日とて紅魔館は程よく平和だった。 心亡くさない程度に忙しいメイド長、咲夜は廊下の角を曲がったところで○○と遭遇することに成功した。 「こんにちは。お疲れ様です、咲夜さん」 「○○も、ご苦労様。これから休憩かしら?」 それならお茶でも一緒にどうか、と。 有りっ丈の勇気を込めて放たれんとした彼女の誘いは、しかしというかやはり。 「いえ、これからちょっと一大事がありまして」 「……あら、そうなの。頑張ってね」 未然に終わったわけである。 廊下を曲がり向こうに消える○○の背中に、彼女の溜め息は届かない。 残念だけど。ああ、でも―― 「それでも○○さんの笑顔とお疲れ様の一言で今日も頑張れる! 咲夜さんったら乙女チックー」 「……何を言っているの、貴女は」 ○○の消えた角から当然のように現れる小悪魔。 「○○さんを見た瞬間、時間止めてまで顔合わそうとした甲斐がありましたね」 「何を見ているの、貴女は」 廊下の端から端まで猛ダッシュ。 その後もタイミングを上手く計ろうと秒単位での位置合せの成果だ。 「私もさっき、○○さんと故意にぶつかって勝負下着を見せちゃいました。ノーリアクションでしたけど」 「何をしているの貴女は!」 黒のレースとガーター。 咲夜は白のシルク、ガーター付き。 「全く。油を売ってないで、自分の仕事に戻りなさい」 話はもう聞かないとばかりに咲夜は踵を返す。 ○○が消え、小悪魔が現れた廊下へスタスタと歩を進める。 特に他意はない。もともとこちらに用事があったのだ。 これ以上茶化されては適わないと、話を聞かずに早足で。 「あー、咲夜さん。そっちには一大事な○○さんが……って、行っちゃった」 聞いておけばよかったものを。 「美鈴ー! 愛してる、結婚しよう。これからはずっと一緒だよ! 美鈴! めいりーん!!」 「ああ、感激です○○さん! 私も愛してます! だからお願いもっと言って! もっとー!」 「子供は三人がいいかなー!!」 「もっとー!!」 「きゃー! 咲夜さん待って待って、八つ当たりはんたーい!!」 「……ッ! ~~っっ!!」 咲夜、スペカ! スペカ! 小悪魔、気合避け! 気合避け! 喰らいボム! どっとはらい うpろだ1187 ─────────────────────────────────────────────────────────── 月の綺麗なある夜のこと。 吸血鬼のお嬢様は、変な人間に出逢った。 「貴女に、お願いがあります」 「ふうん? 試しに言って御覧よ。お前を試してあげるから」 「俺、いや私の願いは――」 そんな二人だけのお話。 鼻歌交じりに紅魔館の廊下を闊歩する小さな影。 彼女こそがこの館の主、レミリア・スカーレットその人である。 向かう先は紅魔館居候にして唯一の男手、そして門番長の紅美鈴と恋仲である○○の部屋。 大変に仲睦まじいその二人だが、どうにも度が過ぎたらしい。 なんとかしてくれと従者に泣きつかれてしまった。 だがレミリアとしてはそちらはどうでもいい。 寧ろ放置して楽しむべきだと思ったのだが、事態はそれよりもっと面白いことになっていたようで。 彼女の従者、十六夜咲夜もまた彼に想い焦がれていたという(本人は必死に否定していたが)。 ああ全く、どうして自分に教えてくれなかったのだろう。 そんなに愉快で素敵な色恋沙汰、混ざりたかったし掻き混ぜたかった! だからこうして、直々に態々。 張本人であるところの○○の部屋を訪ねることにしたのだ。 別にレミリアは○○を咎める気など毛頭ない。 仕事についても、色恋についても。 何故ならば、彼は彼女の出した約定に今もまた忠実であるのだから。 妖精メイド詰所から離れた客室の一つ。 ○○の部屋のドアをレミリアは開けた。 無論ノックはなし。 「今晩は、良い夜ね○○。元気にしてるかしら?」 「……これはこれはお嬢様、お蔭様で。今晩は、愛しい美鈴にかけて、良い夜ですね」 机に向かってペンを手に何やら書いていた○○は、最初からこの調子だった。 ぎしぎしと音を立てて椅子から立ち上がる。 レミリアは半開きのドアに寄りかかり彼の反応をうかがった。 こちらへどうぞと椅子を引かれてそれに腰掛ける。 音など、立つはずもない。 屋敷のそれの中では些か安っぽい調度品。 付け焼刃ながらも不快とまではいかない彼の態度。 特に目を引くものはない、ように見える。 「紅茶でよろしいですか? 普通のものしか出せませんが」 不器用に紅茶を注ぐその手つきはしかし、いつぞやと比べれば大した進歩だ。 いただくわ、と言いつつカップを取る。 何の変哲もない香りと味。 まぁ、それはいい。 「近頃はあまりかまってやれなかったけど、調子はどう?」 「絶好調です。何せ私には愛しい人がついているのですから。ええ、人はパンのみに生きるにあらず。愛を糧に生を 謳歌するのですね、ラヴ。世界の中心にはマントルが。しかし私と美鈴の中心にはそれよりもなお熱い愛が。先達は 素晴らしい言葉を遺して逝きました。我々の愛のために。ありがとう偉人、さようなら英雄。そしてこんにちは私の 可愛い恋人よ!」 なるほど、彼はいつもこの調子なのか。 聞いてもいない惚気をぺらぺらと語る○○。 咎めはしない。 彼女には視えていた。 下手に突付けば、喜々として朝まで説明せんとする○○の姿が。 机に置かれている、先程まで彼自身が手がけていた本。 タイトルには『愛の日々』。 「咲夜に聞いたわ。あんまり仕事に身が入らないそうじゃない」 「――ああっ!」 突如、大仰な悲鳴と共にその場に崩れ落ちる○○。 何故かコマ送り。 FPSが足りないのか彼とその周りだけ処理落ち気味だ。 「嗚呼、わかっているのです。職務に殉ずるべきだというのは。しかし、私めの言い分もお聞き下さいますかっ」 「言ってみなさいな」 なんと自分の職務態度に問題があることは自覚していたという。 崩れ落ちた姿勢そのままにさめざめと涙を流し、どこから取り出したのかハンカチを目に当てる。 美鈴の姿絵が刺繍されたそれは彼のお手製だ。 「今日の仕事中のことなのですが――」 薄闇の中、彼だけにスポットライトのような光が当たる。 どこから、どんなものが、どうやっているのかは全くもって不明だが。 どうやら回想が始まるようだ。 カップを片手にお嬢様、気分は安い劇の観客だ。 そう、今日の仕事中のことでございます。 私はいつもどおり花の世話をしておりました。 以前は美鈴自らが手がけた花壇は瑞瑞しく可憐で。 私にとっても花の一つ一つは、まさに彼女との愛の結晶に思えてならないのです。 しかし、悲しいかな。 その花々も彼女一人には及びもしない! 水をやり終え、ふと振り返ったその時です。 なんという偶然でしょう。 時を同じくして近くで警備の任に就いていた美鈴。 彼女も全く同時に視線をこちらに向けたではありませんか! 目が合う二人。 花咲くよう、という喩えが御座いますね? けれども足りない。 恥じらいを秘めながらも慈愛に満ちたあの微笑みには到底届きはしないのです! そんな彼女の元に走り寄り、抱きしめた私は愚かでしょうか。 いえ、たとえ愚行であったとしてもそれは愛ゆえに! 「――という訳でして。ああ、愛が重い。しかしその心地よさを抱いていけるのなら私は、私は!」 ウネウネと悶える○○。 独り善がり極まるその回想はしかし、どこからともなくSEが鳴るわ響くわ舞台効果満載、に見えた。 結局は惚気で手一杯頭一杯ということか。 まぁ、彼女にとってそれさえもどうでもいいことなのだけど。 一人芝居を満喫したレミリアはカップを傾けるが、既に飲み干した後。 カップの底には美鈴と○○の相合傘が刻まれており、飲み終えるとそれが覗く仕様だった。 御代わりを注ごうとする○○を手で制して立ち上がり、ふわりと音もなく浮かぶ。 茶は尽きた。 芝居の幕は下りた。 次は彼女の番だ。 「……お嬢様?」 くるりくるりと回りこんだは彼の背後、その首にしがみついた。 瞬間、ぴたりと○○の挙動は静止する。 その口からは惚気も芝居がかった台詞もでてこない。 いや、息すらも潜めているのだろうか。 「素敵な寸劇だったわ。なかなか良い役者じゃない、○○」 「光栄、です」 レミリアはクスクスと悪戯っぽく笑いながら背中に縋りつく。 幼子が負ぶさるように、だが支配権は彼女に。 腕の下から回した手は彼のさして厚くもない胸板をくすぐる。 肩にあごを乗せ、頬をぴたりと合わせて囁く。 「本当よ? 大した役者振りだわ。役に嵌り、役に浸り、自分すら騙すなんて」 タイをほどきボタンを外し、シャツの中に手を滑らせる。 じっとりと冷や汗に濡れた胸に掌をあてれば、その鼓動は早鐘を鳴らしていた。 「……お気付きでいらっしゃった」 「震えないだけマシになったじゃない」 思い出されるはいつぞやの夜。 ○○という只人は紅い悪魔を前にしてガタガタと震え怯えながら。 それでも一つの雇用契約を交わした。 その日その時から、彼は彼女の愉快な玩具だ。 運命の操り糸もないのに滑稽に踊るお人形。 もっとも、ここまで愉しく踊るとは予想外だったけれども。 「弁えた者は好ましい。それでいて予測がつかないのが、〇〇の愉快な所だけど」 「ひたすらに、光栄です」 耳元にあてた唇は弧を描いたまま、頬を伝って首筋へと。 緊張に引き攣る筋肉を舌で舐りながら室内のある場所を指で差す。 そちらに連れて行けという合図、いや命令か。 ギクシャクと棒のような足を引きずりながら、常よりも幾分時間をかけて○○は漸く其処、ベッドにたどり着いた。 途端、彼女はその上に彼を押し倒す。 その力は強く、体格の差など意味を成さない。 ギシリとベッドのスプリングが軋み、不恰好にもつれ倒れた○○を受け止めた。 「お嬢さ、ま……っ!」 「こっちを向きなさい、○○」 ○○は抵抗しない。 その上に覆いかぶさり強引に顔を身体ごと向かせて、レミリアは笑う。 互いの吐息を感じられるほどの目の前で。 それはそれは愉しげに、それはそれは嬉しげに、婉然と微笑みを浮かべた。 紅い目が爛爛と輝いて、紅い舌がちろちろと覗いて。 花咲くなどと生温い。 其は花を枯らす笑みだ。 全てを傲慢に吸い尽くした上で満足げに浮かべる、捕食者の哂いだ。 さあ○○、いつかの続きをしようじゃないか? 「美鈴が好き?」 「はい」 「愛してる?」 「はい」 「小悪魔のあの娘より?」 「はい」 「咲夜より?」 「はい」 「……この私よりも?」 「……はい、お嬢様」 レミリアの笑みが最早壮絶なまでに深まる。 一方で、奥歯を噛み締めて頬を引き攣らせる○○。 それもまた見方によっては笑っているように見えるかもしれない。 「この手で美鈴を撫でるの?」 「はい」 身を離し、○○の上に馬乗りになる。 シーツを握り締めていた彼の手を掴み、自らの白く滑らかな頬を撫でさせる。 「この腕で美鈴を抱きしめるの?」 「はい」 ○○のシャツに袖口から指を差し込み、びりびりと裂いていく。 露になる腕、その先の強張った指を口に含み、しゃぶる。 唇を指先から掌へ。 掌から手首へ。 ゆっくりとゆっくりと、血の巡りを辿って頬を滑らせる。 「この胸に抱かれて美鈴は眠るの?」 「はい」 腕を伝い、肩から胸へ。 最早ボロ布となって纏わりつくシャツを、紙屑のように引き裂く。 裸の胸に頭を乗せ、頬をぐりぐりと擦りつける。 耳をピタリと当てれば鼓動が響く、それはちょうど心臓の上。 息を深く吸えば、立ち昇る○○の血の匂いまでも嗅ぎ取れそうだ。 「――じゃあ、」 胸元から名残惜しげに這い上がり、鎖骨を通って、首筋へ。 胸と胸を合わせて頬と頬を擦らせて、頚動脈に鼻先を埋める。 「この血を、美鈴は飲んだ?」 うってかわって縋るような問いかけ。 両腕を背中に回し、○○が息苦しさを覚えるほどにきつく抱き、締める。 彼からはレミリアの表情は伺えない。 レミリアも、いま自分がどのような顔をしているかなど想像も出来ないだろう。 「いいえ、レミリア」 そう、と彼女は吐息と共にそれだけを漏らした。 身体の力が抜け、全てを委ねるように彼の身にしなだれかかる。 いつの間にか開放された彼の腕は、彼女を抱き締めないけれど。 「ねえ、○○。貴方の血は――」 ねえ、○○。 あの娘も口にしたことのない貴方の血は。 私への恐怖に怯える貴方の血は。 あの娘への恋心に満たされた貴方の血は。 私を前にしてなおも他の女への愛を謳う貴方の血は。 「きっと、歯が軋るほどに、甘いのよ」 歯の先で血管を上からなぞる。 ああ、どうしよう。 このまま契約を反故にして、彼の血を思うが侭に啜ってみようか。 このまま肉欲に溺れて、彼の身体を存分に味わってみようか。 どうするの○○? 何も言わないと、私は貴方をどうするかわからないよ? 「レミリア」 「! ん、ぁふ……」 ここにきて初めて、彼がレミリアを抱きしめた。 今夜初めて、彼自ら彼女を求めた。 戦慄くように翼が震えた。 脆弱で貧弱な腕の力に締められて、熱い息が漏れる。 小さな耳に唇が寄せられ、くすぐったげに肩をすくめた。 「……お願いが、あります」 「聞くわ」 刹那の惑いもなく即答する。 彼の提案は、彼女にとって時に何よりも優先される。 血も肉も、遂には埋めること叶わなかった、紅い吸血鬼の退屈を満たすが故に。 「私と美鈴に、部屋を一つ下さい。そこで二人が暮らすための」 「……それだけ?」 よくわからない頼み。 拍子抜け、期待外れ。 寧ろそれはどちらかといえば咲夜の領分だ。 彼女が耳を貸すには値しない。 それだけじゃあつまらない。 それだけじゃあ不合格だ。 これはあの夜の再試なんだよ、○○! そんなことで、レミリア・スカーレットは満たされないよ。 期待はそのまま失望に、そして新たに湧き上がる暗く純粋な欲望。 翼が夜を覆うように大きく広げられる。 犬歯が、今にもその首に突き刺さらんと鋭く伸びる。 「いいえ、もう一つ。私と美鈴の結婚式。その主催をお願いしたいのです」 瞬間、時が止まった、ように感じられた。 少なくともレミリアにとって。 彼の血ではなく、その言葉を舌の上で転がして咀嚼して、漸く言葉を解する。 パッと起き上がり、完全に毒気を抜かれた顔つきでパチパチと目を瞬かせる。 まじまじと○○の顔を見つめた。 その顔は冗談を言う顔じゃない、大真面目なもので。 またこの男は、彼女の予想を表から切り捨ててくれたのだ。 「っふふ、くふ、ふふふ。ふはっ、あは、ははは。はふっ、ぅく、くくくくっ……」 堪えきれなくなったのか、レミリアは遂に吹き出した。 そのまま彼の上で笑い転げる。 童女のように、鈴を転がすように、ころころと笑い続けた。 「――ふぅっ、はぁー。私も泣かされちゃったわ」 何とか呼吸を整え、目尻に浮かんだ涙を拭う。 もう先程までの威圧感はレミリアから失せていた。 無邪気な少女のように、いまだ抜けきらぬ余韻にくすくすと小さな笑いを漏らす。 もっとも、相変わらず半裸の○○の上に馬乗りになっているのが今となっては些か不釣合いだ。 「いい加減、どいてはいただけませんかね……」 「んー? んー、ふふっ」 含み笑いを浮かべ、また胸の上に寝そべった。 手を伸ばして○○の顔を両手で挟む。 ぎくりと音が聞こえるくらいに表情を強張らせる○○。 まだ彼女を満足させるには足りなかったのかと。 「ああ、心配しなくてもいいよ。○○の願いを聞いてあげる。レミリア・スカーレット、一世一代の結婚式典を催して あげるわ。愉しみになさいな」 「それはそれは、有難いことです」 それはそれとしてもう一つだけ。 今夜最後の質問を、報酬代わりに受け取ることにする。 顔を、今度は互いの吐息を吸い込めるくらい近づけて。 これくらいはいいでしょう、○○? 「ねえ、この唇で、美鈴とキスはしたの?」 答えようと開いた口を、自らの小さな口で塞ぐ。 そのまま唇を深く深く、貪るようにぐいぐいと押し付けた。 ○○の目が驚きに見開かれ、レミリアの目は恍惚に細められる。 「んっ――は、はぁ。んぅ、んんっ、んはっ、ぁは、ふっ。んむ――」 なんて気持ちがいいのだろう。 触れ合わせた唇は、ぴりぴりと電気が走るよう。 絡ませた舌と舌は、蕩けて一つになったみたい。 こうすれば○○に何も言わせることなく血を吸えるのではないかと、酷く魅力的で絶望的な案を思いついた。 けどきっと無理だろう。 こんな、こんなにも気持ちのいいことをしながら、他の事なんて何も出切るわけがない! 「――ん、ちゅ、じゅっ。ぷ、はぁ――」 暫くの間、息をするよりも優先させて○○の唇を貪り続けた。 そうして漸く満足したのか、彼を解放する。 酸欠に喘ぎ息も絶え絶えといった感の○○。 彼の胸から退き、ご満悦といった様子のレミリア。 僅かにその頬が赤みを帯びているのは、決して酸欠などではないだろう。 それをいうなら○○も同様ではあるが。 「は、ふぅ、はぁ。お嬢さ、ま? お帰り、ですか?」 スキップでもしそうな足取りで扉へと向かう彼女に、ベッドから身を起こして尋ねる。 僅かに期待と安堵が視えたが、今の彼女はそんなことを気にもとめないくらい上機嫌だ。 この部屋を訪ねた時より、遥かに。 「えぇ、今夜はもういいわ。本当に、愉しかったわよ? ○○」 お休みなさい、とかけられた労いに。 同じく返そうとした○○だが、ふと思いとどまる。 人は夜に休む。 明日を迎える為、その次の夜を待つ為に。 ならば、彼女は? 夜に生き、夜を謳歌する彼女にかけるに相応しい挨拶は? 少し考えてこう言った。 「お愉しみくださいませ、お嬢様」 明日の夜を、そのまた次の夜を。 バタンと閉められる扉。 今夜最後に、○○が見たレミリアの表情は。 夢に出るくらい可愛らしい微笑みだった。 ○○の部屋をあとにするレミリアの頭の中は、式の計画で一杯だった。 日取りは? こういったことは早いほうが良いに限る。 いや、しかしあまりに急だと余裕がないように感じられるか。 もったいぶるのが大物らしいかもしれない。 そう、○○が焦れて焦れておねだりをしそうになったくらいが丁度いいかも。 招待客は? 招かなくとも来る連中は放っておこう。 盛大な式に音楽はつきもの、樂団を忘れてはいけない。 記事を書かせるためにもブン屋は――待てよ、事前に嗅ぎつけられては堪らないな。 だとするなら、招待状は直前に。 都合が付かない奴は……もういいや、召喚状ということでいいだろう。 神前でなど誓わせるものか。 私の名の下に――いや待て待て。 あくまでも私は主催者なのだから、兼任するのは美しくない。 いつぞや咲夜に聞いた閻魔とやらにやらせるか、それっぽい仕事をしてた気がするし。 料理は? 規模は? そもそも結婚式ってパーティーと何が違うんだっけ? ああもう、決めることがあとからあとから前からも。 本当に、本当に―― 「愉しみで、しょうがないじゃない」 歩みを止めれば、窓から差し込む月明かり。 今夜も幻想郷から見える月は美しい。 奇しくも月の形は、あの夜と同じものだった。 それは邂逅の夜、始まりの夜。 「――貴女の屋敷に置いてください。それが、私の願いです」 いったい何を言っているのだろう、この人間は。 こんなにもみっともなく震えているのに。 目の前の彼女をこんなにも畏れているのに。 その住処に連れて行けという。 私が怖くはないのかと、彼女は尋ねた。 「怖い、怖いけれどそれよりも何よりも、」 屋敷の住人に恋をした、それが何よりも大事だと。 レミリア・スカーレットを前にして、只の人間が。 命乞いの一つもせずに、恋をしたとほざいてみせたのだ。 「愉快なことを言うのね、お前」 変な人間、可笑しな男、愉快なことをいう奴。 初めて見る種類の人間に興味が湧いた。 よって彼女は一つの条件を出し、それを契約とした。 「その調子で、面白いことを言いなさい。 そしたら私は貴方を置いてあげる。 これは約束よ。レミリア・スカーレットの名に誓う。 貴方が私を愉しませている限り、私は貴方を殺さないわ」 彼に是非があろう筈もない。 ここに契約は成った。 それで、貴方の名前は? ――そう、○○。 じゃあよろしくね○○。 そしてようこそ。私の屋敷へ、私の夜へ。 他でもない私が、貴方を歓迎するわ。 闇夜における全てを哂う、三日月の映える夜のことだった。 うpろだ1188 ─────────────────────────────────────────────────────────── 夕暮れ、と言うには少し暗くなりすぎた道を走る男が一人。 まぁ、俺なわけだが。 俺は我が家に向かって走っていた。 とにかく早く我が家に帰りたかった。 なぜなら─── ================================================================================ 「ただいまっ!」 息せき切って玄関をくぐると、美鈴がいつものようにぱたぱたと小走りにやってくる。 「美鈴!」 「はい?」 「火の元の始末は!?」 「えっと… もう大丈夫ですよ?」 ぎゅうっ。 聞くが早いか俺は美鈴を抱きしめた。 「ひゃっ!? ど、どうしたんですか急に?」 さすがに少し驚いたらしい。 目を白黒させている。 「ごめん。しばらくこのままにさせてくれないかな」 自分の声があまりに弱々しい事に気づく。 そして美鈴を抱いた腕にはますます力がこもっていた。 「何があったかわかりませんけど… あなたの気が済むまで、いいですよ」 やさしい声と体の温もりが心地よい。 俺は、すうっ、と美鈴の髪の香りを嗅いだ。 「ああ…、いつもの、いつもの美鈴の匂いだ…」 愛しくて愛しくて。 どこまでも愛しい妻が俺の腕の中にいる、という事実を改めて噛みしめる。 美鈴は何も言わず俺に抱かれたまま。 たっぷり10分はそうしていただろうか。 少し未練を残しながら美鈴から離れる。 「ごめんな、ご飯が冷めちゃったかもしれないな」 「大丈夫です♪ 今日も頑張っちゃいましたから、早く食べましょ♪」 美鈴は笑顔で俺の手を引いた。 ================================================================================ 「おー、すげぇ」 今日のメインディッシュは兎肉のソテー。 具だくさんのポテトサラダにクリームスープ。 そして籠にはこれでもかと盛られたロールパン。 「今日は何かあったっけ?」 「んー、そういうんじゃないんですけど、なんとなく」 「なんとなくでこんな豪勢な晩飯になるの?」 「いいじゃないですか。たまには♪」 そんなやりとりをしながら夕餉は進み、食後のお茶の時間になった。 「それで」 「ん?」 「今日はどうしちゃったんです?」 心底心配している顔だ。 美鈴はいつもこうだ。 俺が笑うと一緒になって笑い、俺に元気がないと一緒にしゅんとする。 「んー… 聞いても笑わないでくれるか?」 「笑うわけないじゃないですか」 意を決して。 「実はだな」 「はい」 「甘えたくなった」 「…」 ちなみにこの三点リーダーは俺と美鈴の二人分だ。 「ぷっ」 しばしの沈黙の後、辛抱たまらなくなったのか美鈴が吹き出した。 俺は少しむくれて 「何だよ、笑わないって言っただろ」 「ふふっ、ごめんなさい。何て言うかその、すごく可愛い理由だなって思ったら、つい」 「悪かったな」 「ほらほら、機嫌直して下さい♪」 さも楽しそうに微笑む美鈴。 「今日、仕事しててさ、弁当食べて一服してたら」 「ええ」 「ふと、美鈴の事を考えてて」 「はい」 「なんでだかわからんけど、急に不安になったんだ」 「?」 「本当になんでだかわからん。で、気が付くと美鈴の事で頭がいっぱいでさ」 「はぁ」 「それでだな、甘えたくなった」 「本当に脈絡がないですけど… でも、嬉しいです」 目を細め、どこまでも暖かな笑顔。 「あなたの初めてを、また知っちゃいましたから♪」 ================================================================================ 「じゃ、今日はずーっと甘えちゃって下さい♪」 お茶を飲み終え、少しまったりしてきた所で美鈴はそう言った。 「いや、そこまで張り切らなくても」 「だって可愛い旦那様が求めてるんですから、それに答えるのが妻というものです♪」 すっかりやる気満々だ。 つーかだな。 その。 なんだ。 可愛すぎて、困る。 「んしょ」 隣に座ると、えへへと笑って俺の頭を自分の胸元へ抱き寄せ、すんすんと俺の髪の匂いを嗅ぐ。 「タバコも吸うし、今日は汗かいてぐちゃぐちゃになってるから色々臭いだろ?」 「あなたの匂い、私は好きですよ?」 「そりゃどうも」 「…そう言えば」 「ん?」 「私に甘えてくれるのって、初めてですよね」 「あー、そうだったっけか」 「そうですよ、だから今日はちょっとびっくりしてるんです」 「初めてついでに、洗いざらい話ちまうかな…」 「…」 「俺さ、ここに来てから… その、家族、っていなかっただろ?」 「…」 「紅魔館のみんなは、こんな俺に家族みたいに良くしてくれてさ」 「…」 「でも、どこかにどうしようもない“線”ってのがあるなって思って」 「…」 「やっぱり“他人”なんだよな、ってのがあって遠慮、というか何というか」 「…」 「でもさ、美鈴は何かにつけて俺の話を聞いてくれて」 「…」 「気づいたら、そんな美鈴が大好きになった」 「…」 「美鈴も俺を受け入れてくれた」 「…」 「“家族”になってくれた」 「…」 「前に言ったよな、俺は人間で、美鈴は妖怪だ、って」 「…」 「俺は何の取り柄もない、美鈴に何かあっても守ってもやれない弱い人間だ。でもな」 「…」 「俺は命を賭けて美鈴を愛する。心の底から」 「…」 「…まぁ、虫の良い話だよな。 ああ、俺は何の話をしてるんだろうなぁ」 思わず自嘲してしまう。 ぎゅっ。 美鈴の腕に力がこもった。 しかしそれはどこまでも優しく、暖かさに満ちた抱擁。 「辛かった、んですね」 「ごめん、あー、なんかダメだなぁ。すっげぇ弱っちかったんだな、俺」 「誰だって、そうですよ。私だって」 「ごめんな」 「謝る事なんてありませんよ。私、とっても幸せなんですから」 「ああ、俺だって幸せだ。幸せすぎて怖いくらいに」 その時、俺はなんだか急に泣きたくなった。 なぜだろうか、さっぱりわからない。 何かの感情が爆発しかけていた。 そうだ。 しばらく忘れていたそれは─── 「何度も“ついで”が出来ちゃって悪いけど、俺、泣くぞ」 美鈴は全てをわかったように微笑み、俺は美鈴の腕の中でしばらくぶりに泣いた。 悲しい涙じゃない。 悔しい涙でもない。 幸せに満たされた心を確かめるように、噛みしめるように泣いた。 その涙を、その気持ちを。 全て、美鈴にさらけ出す。 ================================================================================ ぱちり。 目を覚ますと、美鈴の顔が見えた。 「可愛い寝顔でしたよ♪」 どうも泣き疲れて少し寝てしまっていたらしい。 その間、美鈴は膝枕をしてくれていた。 のそりと体を起こす。 「今、何時くらいだっけか」 「えっと… 9時前くらいでしょうか」 「うへ、すぐ風呂沸かすから、ちょっと待っててくれな」 「はい♪」 速攻で風呂を沸かし、それまで長々とわがままに付き合ってくれた美鈴を先に入らせる。 その間に片づけを忘れていた湯飲みなどを洗っていると、なんだかいつもより早く上がってきた。 「お風呂、ごちそうさまでした」 「妙に早かったんじゃない?」 「ふふっ♪」 含みのありそうな笑い。 「さ、早く入らないとお湯がぬるくなっちゃいますよ?」 色々考える間もなく、風呂場に押されて行ってしまった。 「ふぃー…」 たっぷりとした湯に肩までつかり、おもわず口から溜息が漏れる。 昨日今日と久々に重労働だったからなぁ… 精神的に。 だからなのかねぇ、アレは。 とりとめもない事に色々と思いを巡らせていると 「お邪魔しまーす♪」 「待てぇーーーーーーーーーーーーーーい!」 すかさずツッコミを入れてしまう。 「背中でも流してあげようかなーって思って」 「その前にその格好は何だっ!?」 スクール水着。 ご丁寧に胸の部分に名札がついている 3-1 紅 美鈴 妙に達筆だし。 つーかだな、この家のどこにそんなもんがあったんだよ。 「えーっと、紫さんが『マンネリにならないように』とか言って、この間」 「あんのスキマ妖怪は全く…」 にしても。 色々と反則だ。 微かに幼さの残る愛らしい顔に、色々と“女性”を主張する体つき。 ふくよかな胸、適度に引き締まったウエスト、安産型のヒップライン。 そして適度にむっちりとした太もも。 正直に言おう。 全てが俺好みだ。 間違っても、断じて、“そういう体だから美鈴を好きになった”んじゃない。 俺が好きになった美鈴がそういうプロポーションだった、というだけの事だ。 それをさらに強調するかのように包む紺色。 「えっち」 少しジト目だ。 「悪かったな。美鈴だからだよ」 「冗談です♪ さ、体洗いますよー♪」 美鈴はそう言うと、問答無用で俺を湯船から引きずり出し─── 疲れを取ろうと風呂に入ったのに、さらに疲れてどうすんだ。 ああ、精神的に満たされたからいいのか。 お互いに。 ================================================================================ 月が、高い。 気づけばそれなりに遅い時間。 風呂から上がって一息ついて、あとは寝るだけだ。 奥の部屋には布団が一組。 「一緒に寝ましょ♪」 いい笑顔の美鈴。 二人一緒に布団に入る。 冷たかったのは最初だけで、あっという間にぬくぬくになった。 「今日の仕上げと行きましょうか」 そう言うと美鈴は俺の頭を自分の胸に寄せた。 とくん、とくん。 静かな夜の静寂。 かすかに聞こえる心臓の鼓動。 どこかで聞いたような懐かしい音。 とてもとてもやさしい音。 だんだん瞼が重くなってくる。 美鈴は静かに歌い出した。 初めて聞く歌だが、何かの子守歌だろうか。 彼女の名前のように、軽やかで心地よい鈴のように澄んだ美しい声。 俺は無意識に美鈴を抱きしめていた。 それに応えるように美鈴も。 心がもっと温もりを求めている。 こんなにも好き合っているのに、心も体も何度も重ねているのに。 それなのに、今日はどうしちまったんだろう。 わがままだ。 どうしようもなく。 ふと、顔を上げると美鈴と目が合った。 今は蝋燭の灯火だけの部屋。 その火に照らされた美鈴の瞳はどこまでも澄んでいて。 いつも見ている顔なのに、俺はいつもドキドキする。 手を握る度に、抱きしめる度に、笑顔を見る度に。 ああ、多分、俺は─── 今でも美鈴に“恋”をしてるんだな。 そんな事を考えていたら 「おやすみなさい、私の大事な旦那様♪」 その言葉と同時に、俺の額に熱い点ができた。 End. ============================= 「私が少し指を動かすだけで、あなたはずっとその娘といられるのよ?」 扇子で隠された口からくっくっ、とさも愉快だという風な笑い声が聞こえる。 「お断りします」 きっぱりと言った俺は内心、怒り狂っていた。 目の前の大妖怪に。 「───何ですって?」 ピクリと眉が上がり、声のトーンが変わった。 「はっきり言っておきましょう。俺は人間として美鈴を愛し、人間として死にます」 (追加妄想終了) うpろだ1498 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「「ふあぁ~…」」 しばらくぶりに晴れた今日は小春日和。 俺と美鈴は縁側で並んで茶をすすっていたのだが、あまりの陽気に揃ってあくびをして いた。 「美鈴?」 「ふぁい?」 「すまんけど、膝を貸してくれ」 突然の申し出に半分船をこいでいた美鈴は『いつでもいいですよ♪』と言うように膝を ぽんぽんと叩く。 「あ」 「ん?」 「なんだか唇が荒れてませんか?」 俺の顔をのぞき込み、ちょっと心配そうな口ぶり。 「あー、冬だしなぁ。なんか荒れやすいんだ」 「いつも使ってるのはどうしたんです?」 「とうとう昨日弾切れしたよ。こっちじゃ手に入らないから半分諦めてる」 眉間に皺を寄せ、しばし考え込む。 しばらくの間の後にはたと手を打って 「そうだ。蜂蜜だ」 「蜂蜜…ですか」 「寝る前に蜂蜜を唇に塗って寝るといいとか、前に聞いた事がある」 そんなわけで縁側に蜂蜜を持ってきたのだが、美鈴は壺から蜂蜜を取り出すやいなや 自分の口に塗り始め、 「塗るのは寝る前なんだけどなぁ」 とボヤく俺に─── 「そういうの、反則だぞ」 言いつつも頬が緩んでいる俺に、少し頬を染めた美鈴。 「潤ったところで、お昼寝の続きはどうですか?」 「いい夢が見られそうだよ」 ───急速潜行。 ================================================================================ その30分ほど後の事。 「…」 影がひとつ。 「やれやれ、今日の紅茶は砂糖抜きで決まりね」 ポツリと呟き、そのまま引き返す。 眠っている二人の手は、しっかりと握られていた。 End. うpろだ1500 ─────────────────────────────────────────────────────────── 死んで花実が咲くものか。 『明日も仕事かぁ…』 俺はどこを見るでもなく、虚空を仰ぐ。 指には紫煙たなびくタバコが一本。 ここ2週間、仕事場と我が家を往復するだけの日々。 家を出る時の美鈴の顔は少し寂しそうで。 それなりの立場になると、色々と好き勝手も言えなくなる。 改めて“男の甲斐性”という物に思いを巡らせていた。 幸い、今日は早めに上がれたので店を少し見て歩く事にした。 最初は気分転換のつもりだったのだが─── 「ん?」 店先の一際目立つ場所に、それはあった。 周りの花と一緒にゆらゆらと揺れている。 そう言えば紅魔館の花壇にも咲いていたなと思い、近くで見る事にした。 「その子が気に入ったの?」 ややハスキーなよく通る声に振り向くと、 「ああ、風見さんでしたか」 「ごきげんよう。仲良くやってるかしら?」 トレードマークの日傘は閉じている。 「おかげさまで…と言いたい所なんですが」 「あら、喧嘩でもしたの?」 「いえ、ここんとこ仕事が立て込んでて、美鈴が寂しがってるんじゃないかなと…」 俺は自嘲するように目を細めていた。 「そう」 彼女はそう言うと、手元の籠から何かを取り出し俺の手に握らせる。 「…球根、ですか」 「その子は切り花だから長くは保たないわ。あなたにその気があるのなら、この子を育ててみなさい」 手のひらのそれを見ていた俺の顔に不安があったのだろうか。 「心配しなくても、その子はきっと応えてくれるわ。手間を掛けた分だけね」 意味ありげに微笑む。 ほどなくして彼女と別れると、永遠亭の兎達が何かを配っているのが見えた。 それは俺にも半ば押しつけられるように渡される。 『竹林の中心で愛を叫ぶ』 わら半紙の上中央にデカデカとした文字。 やけに達筆だ。 要するに伴侶に宛てて愛のメッセージを伝えよう、というイベントをやるらしい。 開催場所は永遠亭。 参加者は男性限定。 ご丁寧に『参加者の行き帰りの安全は保証される』との文言も。 ================================================================================ 「お邪魔するわ」 「あ、今日はどうなされたんですかお嬢様?」 「一緒に図書館に来なさい」 「はぁ…」 ================================================================================ 迷いの竹林の入り口に兎が一羽。 提灯が吊された竹竿を前足で持ってちょこんと佇んでいた。 見ればたくさんの明かりが奥へ続いている。 なるほど、こういう事か。 半時間ほど歩いただろうか、一際明るい一角。 そこにはいかにもという日本建築の屋敷が。 ここが永遠亭だろうか。 見ると机が置いてあり、そこにも兎がいる。 どうやら参加者はそこで記帳する事になっているらしい。 すでにそれなりの人数が来ているようだ。 見知った名前もある。 記帳を追え、兎の先導で会場へ向かった。 ================================================================================ 「今日は何かありましたっけ? フラン様にパチュリー様に咲夜さんにこぁちゃんまで」 「これから面白いものが見られるから、一緒にどうかと思ってね」 「面白いもの…ですか」 「さ、パチェ、映してちょうだい」 「…受信感度は良好のようね」 「ここは…永遠亭?」 「そう。ここでのイベントを見ようと思ってね」 「男性限定だって言うから私たちは入れないのよ」 「ところでどんなイベントなんですか?」 「その内わかるわ」 ================================================================================ みんなすげぇなぁ。 俺は驚嘆していた。 愛する女性への想い、というものがいかに重い事か。 皆、それぞれの形で叫ぶ“愛”。 ただ真っ直ぐに、ひたすら真っ直ぐに叩き込まれる言葉の威力。 単なる声の大きさなどではなく、自分の愛する存在へ向ける純粋な想い。 一人が叫び終える毎に起こる拍手。 幽霊、天狗、亡霊、騒霊、妖精、妖獣… 種族は違っても、ここでの立場は皆同じ。 叫び終わった者同士で酒を酌み交わし、惚気話に花を咲かせていたりもする。 やがて俺の番がやってきた。 何て言おう。 どう言おう。 ええい、考えても仕方ない。 意を決した俺はステージへ上がった─── ================================================================================ 「あっ!」 「今日のメインイベント、という所かしらね」 「メイリン顔あかーい♪」 「ほらほら、近づき過ぎよ」 ================================================================================ 「えーと…」 気分を落ち着けるために深呼吸をひとつ。 周りからは声援が飛んでいる。 「俺の嫁は…良く気が付いて、料理も上手くて…そしてとても、とても綺麗で」 目を閉じると、美鈴の姿が鮮やかに浮かぶ。 「優しくて、厳しくて、甘えん坊で、怒りん坊で」 思えば美鈴との生活は彩りに満ちて、退屈した覚えがない。 「俺なんかには勿体ないくらいの出来た嫁で」 あの日誓った約束。 「そんな彼女に、思い切り、叫びます」 精一杯息を吸い、そして。 「美鈴ーーーーーーーーーーーーーーー!」 「最近忙しくて! かまってあげられなくてごめんなーーーーーーーーー!」 「これからすぐ帰るから待っててくれーーーーー!」 喉は張り裂けんばかり。 肺がビリビリと震えるのがわかる。 酸素が足りない。 情けない事なのだが。 でも、まだだ。 まだ言ってない言葉がある。 本人の前で何度も言っている言葉だけど。 言い過ぎて安っぽくなっていないだろうか、少し心配している言葉だけれど。 いや、待て。 『安っぽい』だと? 冗談じゃない。 この気持ちは“本物”だ。 これっぽっちも揺らぎなどしない。 さぁ、言え。 見せつけてやれ。 「いつも! いつも! 本当にありがとうーーーーーーーーーーーー!」 幻想郷中に知らしめてやれ。 「愛してるぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」 ================================================================================ 「いや… これはこれは…」 「咲夜、紅茶をお願い。濃いめのストレートで」 「…私もー」 「ではストレートを5杯、ですね」 「まぁ、美鈴は紅茶どころじゃなさそうだし…」 ================================================================================ 律儀に家までついてきてくれた兎に労いの言葉と人参を渡して家に入ると 『みんなと図書館にいます』 という書き置き。 頭に「?」を発生させつつ行ってみると─── そこにはニヤニヤ顔の5人と、机に突っ伏している美鈴。 「どういう状況ですか…?」 おそるおそる尋ねると 「「「「「ごちそうさまでした」」」」」 その声は完全にシンクロしていた。 ================================================================================ 「恥ずかしくて死にそうでしたよ…」 「まさか中継までされていたとは…」 七曜の魔女が語ったところによると、天狗と河童が組んであのイベントの一部始終を生中継していたそうだ。 叫び終わった後にブン屋がインタビューしてきたのはそれ絡みだったのか… 「でも」 その声に振り向くと 「あの時、あなたが言ってくれた“愛してる”は一番…嬉しかったですよ?」 掛け値なしの美鈴スマイルがあった。 「そう言ってもらうと、俺も行った甲斐があったってもんだ」 まだ擦れが取れない声。 でも、不思議と疲れが消えている気がする。 あれ? 何か忘れているような… ああ、思い出した。 「美鈴」 「はい?」 「明日も仕事なんだ」 「お弁当ですね?」 「ああ、頼むよ」 「明後日は?」 俺はニヤリとして言った。 「そんな先の事はわからないな」 美鈴はあっけに取られたような顔。 「冗談だよ。休みの予定だから久々にのんびりしようか?」 ================================================================================ 「ところで“渡したいもの”って?」 「ああ、これ」 「あ、球根ですね。どうしたんですか、これ」 「花屋の前で風見さんと会ってね。切り花よりは、って話になってこれを貰ったんだ」 「お休みになったら植えましょうか」 「じゃあ、花壇を作らないとなぁ」 「ふふっ、土いじりも久々ですねぇ」 「スコップどこにやったっけ…」 そんな話をしていると 「ごきげんよう」 ひょっこり顔を出したのはメイド長。 「お嬢様から手紙を預かってきたわ」 そう言って差し出された封筒。 表には 『その花が咲いたら開封する事』 と、書かれてあった。 「どういう事なんでしょうね?」 「お嬢様は“運命を読んだ”と言ってたわね」 「…うーん、まぁ、この球根に関係があるだろうってのは判るけど」 「ともかく植えて、花が咲くまで待ちましょうか」 「それしかないだろうなぁ」 ================================================================================ チューリップ ピンク ───不滅の愛 ================================================================================ (この先あとがき。読んでも読まなくても) というわけで、よめーりん話の4回目です。 2週間ぶっ続けってのがそろそろキツくなってきたお年頃です。(何 今日は「愛妻の日」という事で、その辺を絡めて書いてみました。 てか、ネタを振ったからには書かないとw なんかいつにも増して内容がイチャイチャしてねぇなと。 美鈴とはイチャイチャよりも静かで確かな愛を育むのがいいかなぁと最近思うようになりました。 はー、美鈴と結婚してぇ。 俺、明後日休みだったら免許の申請しに行くんだ… ともかく、明日も精一杯。 次は多分バレンタインネタになる予定。 ================================================================================ (この先、ちょっとしたオマケ) 「そう言えばもうすぐ節分ですけど…」 「あー…」 「住まいは別ですけどねぇ」 「さすがに“鬼は外”とか言えないしなぁ」 うpろだ1501 ─────────────────────────────────────────────────────────── ~~~~紅魔館-紅 美鈴 私室~~~~ 「げほっ・・・ごほっ………うぅ」 『よぅ、門番。大丈夫か?』 「あれ、○○s、げほっげほっ…うぅ。」 『様子見に来ただけだ。元気なやつは各部屋を回ってみている。俺はお前や門番隊が主な担当だからな』 「そう・・・ですか・・・げほっげほっ、なんで妖怪の私が風邪を……ごほっごほっ…うぅ」 『風邪をひいているのはお前だけじゃない。 紅白や白黒、メイド長をはじめ、パチュリー様や小悪魔さん、 果ては吸血鬼であるレミリア様やフラン様までもが風邪をひいている。 風邪をひいていないのは一部の者だけだ。それもあまり多くないし、調子も優れないみたいだ』 幻想郷では今、人妖問わず風邪が流行している 俗に言う幻想風邪である(嘘) 妖怪はもとより、体の弱い里人は惨状ともいえるほど酷いらしい 原因はおそらく何かのウィルスだろうが未だわかっておらず、 永遠亭の八意 永琳をはじめとした解析チームが原因解明と治療に向けて調査等が行われている 「でも、何で○○さんは風邪をひかないんでs、げほっげほっ!」 『さぁな?俺は外来人だから免疫を持っていたのかもしれん。 それとも俺は人間でもなければ妖怪でもないから罹らないのかも知れんな』 俺は元々外界の人間だったがみょんなことでこちら側の世界に迷い込んだ。 気付けば紅魔館の近くの湖にいて、彷徨っているうちに[そーなのかー]とかいう妖怪に襲われ、 命からがらここにたどり着いた。 しかし着いたは良いものの、即座に館の主に食事になり吸血鬼になった ・・・はずなのに、なぜだか解らないが俺は半人半吸血鬼として蘇った 「でも人間の咲夜さんも吸血鬼のレミリア様も罹っているのに半々のあなたがどうし罹らないんですか? もしかしてばk『だーれが馬鹿だって?中国ぅ!?』(シャキーン 「あうううう、ごめんなさいごめんなさい、お願いだから刃物は勘弁して下さい。 あと私は中国じゃなくって紅 美鈴です!!」 『はいはい、そうですか。クレナイ ミスズさん、あのチルノですら風邪で寝込んでいるんですよ この病気は頭の善悪で発病するものじゃないんですよ。・・・それにどちらかといえば貴女の方が頭は悪い』 「読み方違います!!ホン メイリンです!クレナイ ミスズじゃありません。 しかもさりげなく酷いこと言わないでください!!」 『ん?じゃぁ正面から言ってやろうか?』 「ごめんなさい。もう二度とあんなこと言いません」 『解ればヨロシイ…………んん~、少し熱があるな。うん、とりあえず安静しとけよ、じゃぁな』 「え?何処に行くんですか?看病してくれるんじゃないんですか?」 『それだけ話せたら看病は不要だろ?後は自力で治せ』 「そんなぁ」 『冗談だ。永遠亭に行ってくる。薬が無いか聞くのとあそこの薬師とすこし話をしてくる』 「あ、そうですか。道中お気をつけて。」 『俺が帰ってくる頃には、お前だけはくたばってるかもな。 それと、ここに林檎おいとくぞ。気休め程度にはなる。食っとけ …………帰ってきたら看病してやるよ』 「……え?」 『な、なんでもない、じゃぁな』 ・・・(バタンッ! 自分で言ったものの恥ずかしくなったので急いで俺は部屋を出て永遠亭に向かうことにした ~~~~紅魔館⇒永遠亭~~~~ 『こんにちわ、永琳先生。あれから何かわかりましたか?』 「原因と特効薬は解ったんだけど、肝心の材料が見つからないわ」 『材料、といいますと?』 「ワクチンよ。元気な人からワクチンが出来ないか調べてみたけど感染してないだけでワクチンになりそうな物は見つからなかったわ。ホントは他にも色々あるけど・・・」 『ワクチンですか……』 「何が月の頭脳よ。結局材料がなくちゃ何もできないじゃない。ハァ」 『そう悲観しなくても……』 「…………」 『…………』 「…………」 『あー、そうだ。永琳先生』 「?なにかしら」 『私のなかにはワクチンになりそうな物ないですかね?』 「・・・罹ってないから無いとは思うけど一応調べてみるわ」 --青年調査中-- 『……で、どうでした?永琳先生』 「……一つ聞いていいかしら?」 『何でしょうか?』 「あなた・・・何者?なんで感染して無いのにあるのよ!!」 『あー、やっぱり。ありましたか』 「…………は?」 『いやね、外界にいたとき、色んな投薬・細菌実験とかをさせられましてね。 多分、それが理由だと思いますよ。』 「………………」 『まぁ、そんなことはどうでもいいんですがね。 さっさと特効薬作って幻想郷に活気を取り戻しましょうや、先生』 「…………そうね…………ハァ」 『(なにか悪いこと言ったかな?)多分特効薬できるのは材料と時間がかかると思うので解熱剤や鎮痛剤とかもらって帰りますね。それじゃぁ…………』(ガチャッ 「……?」 (ザシュッ!……ボトっ) 「!!!!!あなた、一体何を!?」 『大量に必要だろうと思って、供給源として私の腕を代価にしようと……』 「…………ありがたいことはありがたいんだけど……」 『はい……?』 「あなたは馬鹿なの?なんでそんなことまでするのよ!?」 『…………アイツのためですよ』 「アイツ?」 『簡単に言えば好きな人ですよ。その子も風邪を引いてしまい、苦しんでいるので、少しでも早く治してやろうと思いまして……』 「…………あなたも無茶するわねぇ。特効薬完成したらすぐに持って行かせるわ」 『ありがとうございます。今は手持ちがないので薬が完成したらその時に一括してお願いできますか?』 「ハァ……お金ならいいわよ。貴方がくれた腕一本で十分よ」 『あ、そうですか。すみません。ならもう一本いりますか?どうせすぐに再生するので(シャキーン』 「!もういいわ!二つあっても邪魔になるし!!!……いくら再生するからとっても無茶は禁物よ」 『かまいませんよ。愛しい人のためならば……』 「そう……じゃ、お大事に」 『では、失礼します』 ~~~~永遠亭⇒紅魔館-中央広間~~~~ 『元気な者は永遠亭からもらってきた薬を病人に飲ませてやってくれ。 まず、近衛メイド隊はメイド長とパチュリー様、レミリア様、フラン様を。 とくにフラン様を担当するものは気を付けてな。 A隊は妖精メイド各員へ。B隊は図書館従事者に、C隊は……………、で俺は門番隊各員を担当する。 ……今、紅魔館で動けるのは我々だけだ。風邪をこじらせ亡くなってしまった者もいると聞く。 辛いものは決して無理をせずに休め。死んでしまっては元も子もない 今、この紅魔館と永遠亭の八意 永琳先生の協力によって、特効薬が完成しようとしている。 皆!もう少しの辛抱だ。無理をせず、かつ頑張っていこう!!』 「「「「ハイ!了解しました。」」」」 ~~~~中央広間⇒門番隊宿舎~~~~ …… ………… ……………… …………(ガチャ 『ふぅ、これで門番隊は終わりか。あとは……美鈴だけだな……』 『美鈴、入るぞ』 「あ″、○○ざん、お見舞いでずが?」 『まぁ、そんなとこだ。って声大丈夫か?』 「何とかでず、うぅ」 『ハァ、無理するな。お前は紅魔館を守る門番だろう?早く治せよ…………んと、ほらよ』 「あい?○○さん、これは?」 『永遠亭から薬を貰ってきた。どこまで効くかは分からないがある程度は効くだろう。……ほら水だ』 「あ、ありがとうございます。…………○○さん、今日は何だかとても優しいですね。」 『んん~、聞き捨てならんなぁ。それは普段の俺は優しくないということか?』 「うぅ~、普段の○○さんも優しいですよ」 『解ればヨロシイ。一応お前も病人だからな。俺はどんな相手であろうと病人、怪我人には優しいんでな』 「うーん、じゃあ、ずっと病気したり、怪我しようかな?」 『…………ハァ??』 「ごめんなさい、冗談です」 『まぁいい、スリ林檎だ、これも飲んどけ。それと少し席を開けるぞ』 「あ、はい、ありがとうございます。……何処へ行くんですか?」 『ん、まぁ、ちょっと……な』 -30分後- 『美鈴、入るぞ?』 「あ、はい・・・って何ですか?それ?」 『お粥……食事だ。調理係がほぼ壊滅状態で、俺が一人で作ったから味はそこまで美味くないがな。』 「え?○○さん、料理できたんですか?」 『あっちの世界では一人暮らしだったからな、家事の大半のことは出来るぞ。 なんなら今度、ご馳走してやろうか?』 「え?いいんですか?」 『時間と材料があればの話だがな。・・・食べないと冷めるぞ。』 「え、あ、そうですね。じゃ、いただきまーす」 「ごちそうさまでした」 『お粗末さま。っと言ったところか?知らんが……んん~と』 「……あ」 『熱もだいぶ下がったな。まだ安心は出来ないな。 もうすぐ特効薬が完成するから。ってどうした?顔赤いぞ、まだ熱があったのか?』 「/////」 『うん?どうした?』 「○○さんのおでこと私のおでこが……キャー///」 『ッッッ!!!////』 「///……アレ?○○さんも顔赤いですよ?」 『うっ、うるさい!さっさと寝ろ!悪化するぞ!!』 「えー、もっとお話しましょうよ、○○さぁーん」 『やかましいわ!!病人はさっさとおとなしく寝てろ!話なら治ってからいくらでもしてやる!』 「え?じゃ、治ったら、もっとお話ししましょうね♪○○さん!」 『!!!~~~帰る!』バタン ~~~~門番隊宿舎⇒○○私室~~~~ …………完全に墓穴を掘った。喋る度にミスを生む。 ヤバいな、顔、真っ赤だ。見せられたものじゃない 心臓は破裂しそうだ。叫んでしまいそうだ。完全にアイツのペースだ これは非常にマズい。とりあえず落ち着け、俺 他人が俺を見たら何ていうんだろう …………ツンデレか そんなつもりじゃないんだけどな アイツの前だと、どうしても正直なれないな ………………ハァ。もう寝よう 腕は……もうすでに完治したか 明日には特効薬完成するといいな。アイツのためにも //////////////翌日 紅魔館-美鈴私室///////////// 『美鈴、入るぞ』 「はーい♪」 「病人のわりには元気ねぇ」 「アレ?永琳先生?」 「治療しにきたわよ。でもその必要もなさそうだけどね」 『そうおっしゃらずに、ぶり返したら大変なので一応お願いします。』 「はいはい、わかったわ。じゃ、門番さん、腕だして」 「え″?注射ですか?」 『そんな露骨に嫌な顔をするなよ。せっかく特効薬ができたんだ。うってもらって完全に治せ それとも、ぶり返して、また苦しみたいのか?』 「う″!それは……嫌です」 『じゃ、さっさと注射受けて治せ』 「……はぁーい」 「あらあら、随分と仲が良いのねぇ。やっぱり好きな人の前だと態度が違うわねぇ」 「え?」 『ちょっ!!永琳先生!!なんてことを言うんですか!?』 「○○さん、それってどういういみでs、痛っ!」 「……はい注射終わり。少なくとも2日間は安静にしてなさい。どんなに治ったと思ってもね」 『あ、永琳先生、ありがとうございます。』 「ふふ、どうも、こちらこそ抗体提供、感謝するわ。」 「え?それってどういうことですか?」 「この特効薬を作るのに○○の中にあった弱ったウィルスと抗体を使ったのよ。彼ったら凄いわよ。 自分の身体にあるって分かったら、自分で腕を切り落としたのよ。 『好きな人のためだ』って言ってね。羨ましいわ。ねぇ、門番さん」 『ちょっ!!永琳先生!!そのことは言わないで下さいと最初言ったじゃないですか!?』 「あらそう?聞こえなかったけど……♪」 『絶対わざとだ、この人…………』 「あのぅ、○○さん?」 『所で永琳先生。抗体使ったって言ってましたけど、他人の抗体って使っても大丈夫なんですか? 血液感染とか色々あるんじゃないんですか?特に私は半分吸血鬼ですし』 「一応加熱処理とかしてあるから大丈夫よ。因幡達でも問題無かったし」 『(この人は実験に因幡を使ったのか!?鬼だな…)』 「それに抗体使ったといっても貴方の居た世界とは違う手法で使ったから問題もないわ」 『さいですか……』 「じゃ、お大事にね、門番さん。」 「あ、はい。ありがとうございます」 「じゃ、私は帰るから。」 『どうもありがとうございました。永琳先生』 … …… ……… ………… 『じゃ、永琳先生も帰ったところで、俺も失礼するかな……』 「…………さい」 『ん?どうした?』 「○、○○さん。さっきの永琳先生の言ったことって……本当ですか?」 『さぁて?何のことだか?///』 「顔、紅くなってますよ」 『う、うるさい///』 「えへへ、○○さん、可愛いですよ。○○さんは言葉はキツいけどいつも優しいから好きですよ」 『!?!?!?』 「また、紅くなりましたよ?○○さんは私のこと好きですか?」 『え、あ、そ、それは……うんと……』 「私は○○さんの事が大好きです!○○さんは私の事どう思ってますか!?」 『っ!!…………きだ』 「聞こえませんでした」 『永琳先生の言ったことも本当だ。お前が苦しそうだったから、早く治すために材料調達に協力した。 ただそれだけだ。お、お前が好きだからとかそんなんじゃなくて、なんというか…。 そうだ、他に苦しんでいる人の為に協力しただけだ。 決してお前のことが好きだから、お前の為にやったんじゃなくて、その、な・・・レミリア様や咲夜さんの為であって、なんというか、かんというか……』 「じー)……私のこと嫌いですか?私の為じゃないんですか?」 『(そんな目で見ないでくれ)え、あ……お、俺は……』 「じー)…………」 『あー、もう!!俺はお前のことが大好きだ!さっき言ったことは全部嘘だ。 レミリア様や咲夜さんや苦しんでる連中の為じゃなくお前の為に全部やったんだ!! 俺は、俺は…!!』 「○○さん…ちょっといいですか?」 『な、なんだよ!?』 「ん…んん」 『!!!』 「えへへ、キスしちゃいました///」 『ななななななな』 「もう1回しますか?」 『………///』 「冗談ですよ///風邪直ったらキチンとしてくださいね♪」 『……あ、ああ……』 「これからよろしくお願いしますね、○○さん♪」 『こここちらこそよろしく……ちょっとリリ、リンゴでも持ってくるわ。』 「リンゴより○○さんがいてくれる方がいいなぁ……」 『……う、うつされても困る。よって…帰る!!』 「えぇー!…私のこと嫌いですかぁ?」 『や、やかましい///風邪治したらいくらでも一緒に居てやる!!だから寝てろ馬鹿!!』 「じゃぁ、約束ですよ♪」 『(また墓穴を掘った…)』 後日治った門番の横には男が居たそうだ うpろだ1504 ─────────────────────────────────────────────────────────── 良薬は口に苦し。 俺は何年かぶりで派手に風邪をひいていた。 春一番も吹いたってのに。 夕べから熱が出始め、今朝になって本格的に。 体温計がないが、かなり熱があるのはわかる。 と言うか、頭が回らない。 とりあえず床に臥せっているという事だけが今の俺が自覚できる全てだ。 美鈴は仕事場の頭領へ連絡に行っている。 波が来た。 俺はたまらず枕元の桶を引き寄せる。 胃液しか出てこない。 まぁ、派手にぶちまけるよりははるかにマシなのだが。 すでにほとんど効かなくなっている鼻にツンとした臭い。 久しぶりなだけに、これだけでもかなりクる。 何分くらい経ったのか、それとも数時間過ぎているのか。 朦朧とした頭にうんざりする。 美鈴───。 こりゃマズイ。 そう思ったとたん、俺の意識は途絶えた。 ================================================================================ 冷たい感触に目を覚ますと、ぼんやりとした視界の端に何か見える。 紅い髪。 微かに香の匂いがした。 「美鈴…?」 呼びかけると、とたとたという聞き慣れた音。 「よかった… お薬が効いてきたみたいですね」 「…薬?」 はて、俺は薬を飲んだ覚えはないんだが。 「永琳さんが来て、注射してくれたんですよ」 ああ、そういう事か。 妙に右腕にうずきがあると思ったら。 緩やかに意識が戻ってくる。 目の焦点も。 「美鈴、目が赤いな…」 えっ、という表情をすると、目をぐしぐしと擦る。 「あー、いや… その、急だったんで、慌てちゃって… 「ごめんな、心配かけちゃって」 「そんな事、気にしないで下さい」 「あー、ホント久しぶりだからなぁ、風邪ひいたのって。俺もびっくりだ」 「そういや、美鈴、仕事はどうした?」 「今日はお休みです。第一、病気の旦那さまを放り出して行けるわけないでしょう?」 目尻をつり上げ、少し怖い顔をしてみせる。 まぁ、いつもがいつもなのでまるっきり怖くないのだが。 ================================================================================ 「お粥作ってきますね」 その言葉に俺はピクリとした。 実は俺はお粥が大の苦手だったりする。 大概は好き嫌いなく食べられるのだが、お粥だけはどうやってもダメだ。 どう嫌いなのか詳しく説明すると余計に気持ち悪くなるくらいダメなのだ。 「お粥じゃなきゃダメかなぁ」 言ってはみたものの、幻想郷には気の利いた流動食などはないので、結局お粥に頼る事になるのではあるが。 美鈴はしばし考え 「雑炊っぽくしてみましょうか」 ああ、その手があった。 程なくして土鍋を持った美鈴が戻ってきた。 「雑炊“っぽく”じゃなくて雑炊だな」 俺が見た限りでは少なくともそう見えた。 一口。 よく噛んで、ゆっくりと飲み込む。 やっぱり雑炊だ。 しかし、今の俺の体にはまだ少し辛かったらしい。 少々胃が騒いでいる。 だが、旨い。 もう一口。 落ち着いて、ゆっくりと。 「うん、旨い」 じんわりと体が温まって行く。 ================================================================================ 結局、二人で用意された全てを平らげ、食後の薬を飲んだ俺は再び布団の住人となっていた。 朝よりは楽になったが、さすがに布団からはまだ出られるような体調ではないのだが。 「ちょっと体を拭きましょうか」 美鈴はお湯の入った手桶と手拭いを用意していた。 そう言えば寝間着がじっとりとしている。 「うん、頼むよ」 どっこいせ、と体を起こすと美鈴が俺の寝間着の上をはだけさせる。 静かな午後。 聞こえるのは鳥の声と、手拭いを絞る時の水の音。 首から肩、胸から背中、腹と美鈴は何も言わずに俺の体を拭いていく。 「ありがとうな」 「いえいえ、これくらい何ともありません♪」 しばしの時間の後、随分とさっぱりした俺は再び布団の中へ。 すぐ横で美鈴が付き添っている。 「今の俺の横にいたってつまんないぞ?」 半分寝ている俺に 「じゃあ、添い寝してあげましょうか♪」 「風邪が移るぞ」 「私の頑丈さを知らないわけじゃないでしょう?」 にこやかな顔で布団に入ってくる。 と、少し顔が厳しくなった。 「まだ寒気とかするんですか?」 「んー、ちょっと」 そう言うと、美鈴は俺をぎゅうっと抱きしめる。 体の震えも、寒気も一気に消えていく気がした。 あったかいな。 いつしか俺は眠っていた。 ================================================================================ 再び目を覚ますと日はすでにかなり傾き、暗くなりはじめていた。 何やら甘い香りが漂っている。 そう思っていると、美鈴が襖を開けて入って来た。 手には大きめのカップが二つ。 「どうしたんだい、それ?」 「アリスさんに教えてもらったんですよ。ホットチョコレートです」 「そうか… なんだか懐かしいなぁ。こっちに来てからは始めてのチョコレートかな」 「そうですね、去年はバレンタインどころじゃありませんでしたからねぇ」 二人で顔を見合わせ、思わず苦笑してしまう。 一緒になってから数ヶ月は色々と大変だった事を思い出した。 「でも、後悔なんてしてませんけど」 「する気もないぞ」 微笑む。 ああ、美鈴のこの笑顔は俺にいつも幸せをくれるんだ。 体を起こしてカップを受け取る。 甘く、やさしい香り。 美鈴とは違うが、どことなく似ているような。 一口。 「あつっ!」 こういう時に猫舌はイヤだ。 わかっていたのに、まだ頭が回ってなかったらしい。 「大丈夫ですか?」 「うん、ごめん。ちょっとうっかりしてた」 「じゃあ」 美鈴がカップから一口。 そして─── End. ================================================================================ (この先、おまけとか後書きとか。読んでも読まなくても) ================================================================================ 「アンタ、とんでもないバケモノを好きになっちゃったんだねぇ」 ニヤリと嫌らしい顔。 そこには笑みと、ほんの少しの哀れみを含ませたような。 「今───、何と言った?」 俺は気力を振り絞って、言った。 「んー?」 「何と言った、と聞いてるんだ」 辛うじて動く顔をそいつに向け、精一杯睨みつける。 「あら、まだ動けたのね。人間って中途半端に頑丈だから困るわ」 「答えろ」 くっくっと耳に付く笑い声。 「あの門番の事よ。まったく、あんなバケモノだったなんてね」 「ふざけんな」 地べたに這い蹲ったまま、声を絞り出す。 「バケモノだと? 美鈴が? ふざけてんじゃねぇぞ。その言葉を取り消せ」 煮えくり返った腑をぶち撒けるように。 「あら、バケモノをバケモノと言って何が悪いのかしら」 「取り消せ」 「五月蠅い人間ねぇ」 「取り消せ」 動け、動いてくれ。 ほんの少しの時間だけでいい。 体を動かさせてくれ。 立ち上がらせてくれ。 指が、手が、腕が、足が。 言う事を聞いてくれない。 だったら無理矢理にでも動かしてやる。 必死に運動命令を送ってやる。 「取り消せ」 指が動いた。 「取り消せ」 手が動いた。 「美鈴は美鈴だ」 腕が動いた。 「美鈴は、美鈴だ。 紅美鈴だ」 膝が動いた。 「俺が愛した、ただ一人の女、紅美鈴だ」 うpろだ1506 ───────────────────────────────────────────────────────────
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美鈴6 うpろだ1187 ある晴れた日のこと。 男は少女への愛を、高らかに叫んだ。 「美鈴ー! 愛してる、君が好きなんだ。君の全てが愛おしいんだ! 美鈴! めいりーん!!」 「ああ、嬉しいです○○さん! 私も愛してます! だからお願いもっと言って! もっとー!」 「めーりーん!!」 「もっとー!!」 そんな二人と少女たちのお話。 「由々しき事態です」 夕闇の中のティータイム。 十六夜咲夜は粛々と警鐘を鳴らす。 彼女のお仕えするお嬢様、レミリアはぴくりと片羽を振るわせた。 「何の事かしら?」 「あの二人のことです。さすがにもう限界かと」 あの二人とは○○と門番のことか。 つい先日、紅魔館を震撼させた傍迷惑な告白劇はなかなかの見物だった。 些細なすれ違いから、涙あり修羅場ありのラブコメディ。 最後は関係者(一方的に巻き込まれた者も含めて)によるライスシャワーならぬ弾幕シャワーで締めくくられたそ れは、レミリアのそれなりに長い記憶の中でも派手なものとして長く残るだろう。 「何か問題でも? あれでなかなか絵になるし、愉しいことじゃない」 「……そう、見えますか」 「ぁ、それがですね。本人たちとは違う所で多々問題が発生してるんです」 目を伏せて言葉を詰まらせた咲夜に変わり、説明役をかって出るは後ろに控えていた小悪魔。 胸元からメモ帳を取り出して咳払いを一つ。 「妖精メイドの皆さんから苦情が多く寄せられまして。曰く、『廊下でイチャイチャするな』『庭先でイチャイチ ャするな』『厨房でイチャイチャするな』『門前でイチャイチャするな』『私の前でイチャイチャするな』『浴場 でニチャニチャするな』エトセトラエトセトラ……」 「全部同じじゃない」 「最近は直接行動に移るものも出てきたんですよ。攻撃を仕掛けたり、何を間違ったかサカったメイドが○○さん に迫るなんてのもあります」 前者は歯牙にもかけられず、後者は九割がた美鈴に撃墜されるのが関の山であるが。 「ですから、問題なんです!」 咲夜、再起動。 ちなみに発情メイドの残り一割ほどはナイフで仕留められている。 「現にメイドの業務に支障をきたしております。即刻、あの二人に何らかの罰則を! もしくは異動命令を!」 「異動って……○○は何か仕事してたっけ」 「本人の希望もあって庭で花壇の面倒をさせております」 「それがまた問題に拍車をかけてまして……」 もともとは美鈴が門番長と兼任していた花壇の世話。 ○○がそれに就くことで美鈴は門番の仕事に専念できる筈、だったのだが。 「勤務エリアがお互い目と鼻の先じゃないですか。暇さえあれば職務中もイチャイチャベタベタと……」 「……それは、問題ね」 「大問題なんです!」 しかしここでふと思い至る。 怠慢かと思われた門番、しかし近頃は侵入者は全く現れない。 彼女の親友であるところの魔女も、最近は蔵書を盗みにくる黒白鼠が現れないといたくご機嫌であった。 眼下に見える花壇も荒れてはいない。 彼らの仕事に不備は見られないようだが。 「これはどういうこと?」 「えーっと……」 人目もはばからず門前で乳繰り合う二人。 そんな二人の邪魔をするような侵入者は、愛の障害とみなされる。 愛に生き、愛を守るEX美鈴の指先一つでダウンさ! そもそも二人の成形する桃色素敵空間に入り込める輩はいない。 恋符、愛に敗れたり。 ここに紅魔館の門は鉄壁と化したのだ。 「結構なことね。機会があれば遠目に見てみようかしら」 「お嬢様!!」 面白そうだし、と笑うお嬢様。 目が潰れてしまいます、と騒ぐ従者。 「どうやらお嬢様はあの二人を甘く見られているご様子ですね」 「実害はないからいいんじゃない。どうせ妖精メイドだって役に立たないのは変わらないんだし、いっそ全部のメ イドが○○に殺到するとか。それをばったばったと薙ぎ倒す美鈴。あら、割と愉しそうじゃない」 パチェも喜んでるし、と付け加える。 しかし流石はメイド長、待ってましたとばかりに小悪魔に目配せを送る。 頷き、一度退室する小悪魔。 「……そんなこともあろうかと、パチュリー様を先に説得して参りました」 「説得って、どうやって? パチェが本より優先するものがそうあるとは思えないんだけど」 「今日の昼、あの二人に休憩時間は図書館でゆっくりしていくよう勧めました。そして……」 「その結果がこちらでーす」 「あら、パチェ?」 戻ってきた小悪魔が小脇に抱えて運んできたのはパチュリー・ノーレッジその人。 だらりと伸びた四肢に力はなく、椅子に座らせてもぐったりとして動かない。 むきゅーの音も出ないとはこのことか。 「……れ、レミィ……」 「パチェ! どうしたの、しっかりなさい!」 「あの二人は……危険、よ……」 「パチェー!」 警告を最後にがくりと崩れ落ちる魔女。 それでも本を手から離さないのは流石だが、その本が恋愛詩集である辺りダメージを隠せない。 「バカップル糖分過剰摂取による動脈硬化、並びに消化吸収用のビタミンB不足によるものと思われますね」 「お解りいただけましたか、お嬢様。いま館内は危険度AAA。愛のモラルハザード馬鹿二匹を野放しにしている 状態。紅魔館改め桃魔館などと呼ばれてからでは遅いのです。何卒、御処置を」 「ふ、フフフ、面白いじゃない。ばかっぷるがどれだけのものよ。恐れてたまるものですか、私はレミリア・スカ ーレットよ! こうなったら是が非でも見物したくなってきたわ!」 駄目だこのお嬢様……早くなんとかしないと……。 不適に微笑むレミリア、どうやら向かうところ敵なし状態の『ばかっぷる』なるものに刺激されたご様子。 無駄にカリスマ溢れるその雄姿に咲夜は頭を抱えた。 空回りする主従を尻目にふう、と乾いた息を漏らす小悪魔。 「わかりました。もう建前も大義名分も無しです」 「……? 貴女、何を」 佇まいを改め、覚悟を決めた様子の彼女を何事かと見やる。 これまでの報告にも誇張や虚偽はないがそれ以上の被害でもあるのだろうか。 もともとこの場を設けたのは咲夜の提案、彼女はそれに追随する形だったのだが。 怪訝そうな咲夜をちらりと見、胸の前で指を組み訥々と小悪魔は語り出す。 「……正直なところ、キツいものがありまして。恋に敗れた女としては、焦がれた殿方が他の女性と仲睦まじくな されるお姿は、少し。ええ、少しだけちくりとしますね」 彼女が○○という男に心身ともに熱烈なアプローチをかけていたのは周知の事実だ。 であるならば彼の惚気ぶりを見て、心穏やかでいられる筈もなく。 その心情を慮ってか黙り顔を見合わせる主従。 小さく儚げに笑う彼女は、しかしやはり歴とした悪魔の眷属で。 「って咲夜さんが言ってました」 「んなっ!」 「へっ?」 今ここに明かされる驚愕の真実。 しのぶ恋、主にさえ気取られぬほど色も出さずに秘めるのが瀟洒たる所以か。 しかしそれも今となっては、砂上の楼閣に等しい。 鉄の仮面に入ったヒビは見る見るうちに綻びを大きくしていく。 「咲夜……あなた、そうだったの」 「ちちちち違います、違うんです! 言ってません私そんなこと言ってません!」 「恥ずかしがらなくてもいいですよー、咲夜さん。一緒に祝福のクナイ弾を雨霰とお二人にぶちかました仲じゃな いですかー」 「貴女も黙りなさい!」 「その話、もうちょっと詳しく聞きたいわね」 「おじょーさまー!!」 メイド長、大ハッスル。 頬といわず耳まで赤く染めて、ぱたぱたと両手を忙しなく意味もなく振る様は普段の彼女からは考えられない。 「いいでしょう、お話します。あれはお二人が結ばれた夜、そして同時に想いは届かぬものとなった夜。傷心の女 は二人、涙でウオツカを割って、儚く散った悲恋を肴にグラスを傾けたのです」 「嘘よ誤解よ捏造よ出鱈目よー!」 「ほうほう、それでそれで?」 お嬢様は興味津々。 一方で槍玉にあげられた従者はもう半泣きだ。 「『気のせいだと、何かの間違いだと思ってた。ううん、そう思い込んでたのかしらね。それでも私は現状に満足 していた。十分だったのよ、彼とたまに顔を合わせて、それで笑って挨拶して、労いの言葉をもらって……。でも いざああして突きつけられると、駄目ね。憎いとかじゃないのよ。本当。ただ、何をやってたんだろうって』」 「声帯模写っ? ていうかどこまで!」 「あなたそんな特技があったの」 それにしてもこの小悪魔、ノリノリである。 完璧な声真似に加えて物憂げな表情で再現されるそれは臨場感抜群。 時折声を詰まらせ、酒に見立てているのか紅茶をあおるなどと芸が細かい。 羞恥の小芝居は本人が泣こうが喚こうが耳を塞ごうが関係無しにノーカットで続けられた。 「――そして誓ったのです。いつか幸せをこの手に掴もうと! 私達、『正妻が駄目なら二号でもいいじゃない。 愛の人と書いてラ・マンと呼ぶのよ同盟』の名の下に!」 「ぁああああ! お黙れぇー!!」 咲夜、殴る! 殴る! 小悪魔、かわす! かわす! 「っ……! と、あの二人のせいでっ、色々と不都合が起きまして……っ!」 「いひゃいれふよ、ひゃふやひゃーん」 小悪魔のほっぺたをギリギリとひっぱりながら。 面の皮が分厚いのか伸びる伸びる。 おまけにちっとも痛そうに見えない。 「まあ、いいか。咲夜を泣かせたとあれば、俄然興味も湧いてきたし。私自ら動いてみようじゃないの」 「泣いてなんかいませんっ!」 「むしろ鳴かせてほし……あんっ、ダメっ。耳は弱いんですぅ」 無駄に艶っぽい声を上げるが、耳を引っ張られているだけだ。 「ともあれ、英断で御座います。この時間であれば、彼女は仕事中ですので……」 「○○は自室かしらね。そっちはそっちでなんとかなさいな。私は○○と話してくるわ」 「……お嬢様が○○に会うんですか? そちらは私から追って伝えるつもりだったのですが……」 「いけませんよー、咲夜さん。抜け駆け禁止って約束したじゃないですはひたたた」 「お・だ・ま・り・な・さ・い」 じゃれ合う二人を放っておいて、意気揚々と立ち上がるレミリア。 日はとっぷりと暮れていた。 いつぞやもそうだったが、あの人間が関わる夜は風変わりなものになる。 何にせよ、退屈しないのはいいことだ。 「ところで○○に異動を命じるとしたら、今度はどんな役職がいいと思う?」 「清掃班の人手はいつでも不足しておりますので、そちらに回すのがよろしいかと!」 「図書館勤務がいいと思いまーす!」 しかし小悪魔の彼女はともかく、咲夜ですらああだとは。 なかなかの拾い物だったのかもしれない。 だとするのなら、或いは―― 「――やっぱり私の側仕えとしておくのが、よかったかしらね」 その場を後にした彼女の顔には小さく笑みが浮かんでいた。 「はっ、今どこかでフラグの立つ音がしました。新たなルート開拓の予感! 難易度はHardですよー!」 「訳のわからないこと言ってないで、貴女も来なさい!」 「……むきゅー……」 そしてパチュリー置いてきぼり。 紅魔館の前庭。 夜風も涼しいその中で、三人の女が対峙している。 「あら、咲夜さんに小悪魔さんも。どうかしたんですか?」 にこやかに対応する美鈴。 もともと人当たりのよい彼女であったが、その笑顔はもはや後光が輝かんばかりだ。 愛って素敵。 「くぅっ! なんて輝き。これが正妻の余裕だとでもいうのでしょうかっ?」 「私の後ろに隠れない」 眩しいものでも見るかのように、手をかざしてよろめく小悪魔。 恐らく正妻以前に、彼女にはやましい所が多すぎるのではないだろうかと咲夜は思う。 まあ確かに、目の前の幸せいっぱい夢いっぱい、愛が豊かな胸いっぱい、な美鈴は直視に耐え難いものがある。 「……美鈴。貴女、最近は随分とご機嫌よね。今にも飛んでいってしまいそうなくらい」 咲夜さんは最近ずーっと不機嫌ですよねー、と呟いた小悪魔がドタマをしばかれた。えらく軽い音がした。 「そりゃあもう、愛しい○○さんと結ばれた私は上機嫌も右肩上がり! 天まで昇る勢いです!」 結ばれた、の辺りで小悪魔の目に濡れた色艶が瞬いた。 一方で咲夜の目からは一切の色彩が失せた。 「……そのせいかしら。足元が見えていないみたいだけど?」 「そんな! つま先から髪の先まで、私の身体で○○さんが見てないところなんてありませんよ! やん!」 いやだ私ったらなに言ってるんだろう、と恥じらう美鈴。 やだこいつなに言ってるんだろう、と歯軋る咲夜。 私も事故を装って何度も見せたんだけどなあ、と端っこに退避して小悪魔。 「……確認するのだけど、今この場に○○は居ないわね?」 「そうなんです。このあとお部屋で待ってる○○さんと二人っきりで、でへ、えへへへへぇ」 あーたまんねえ、とばかりに息を荒くする美鈴。 あーやってらんねえ、とばかりに溜め息を漏らす小悪魔。 あーもういいや、とばかりに呼気を鋭くする咲夜。 「……もういいわ。もうたくさん。もう知らない」 穏便に済ませる心積もりは、既に頭から消え失せた。 惚気はもういい。 惚気はもうたくさん。 どうなろうと、知ったことか。 取り出したナイフを一本、その切っ先を向ける。 「単刀直入に決めるわね、美鈴。貴女は、○○と別れる」 「……はい?」 快刀乱麻、一刀両断。 前置きも後書きも考えず、ただその一つを宣言した。 「ちょ、咲夜さん。もうちょっとやり方が――」 「囀らない」 もう少し手管足管回してやるものと思っていた小悪魔が口を挟もうとする。 しかしその口に銀のナイフが挟まった。 かちりと歯が刃を噛む。 これには流石の小悪魔も目を白黒と瞬かせてモールス信号で降参の意を表する。 「えーと、咲夜さん? 今、ものすっごい聞き捨てられるべき、且つ言い捨ててはいけないことを仰りませんでした?」 「一本釘を刺すだけでは足りない? 複刀でズタズタにしてあげるから、貴女は○○から身も心も引くの」 美鈴を纏う気ががらりと変わる。 咲夜も大量のナイフを周囲に浮かべた。 「なんでそんなこと言われなきゃいけないんですかっ!」 「○○の為にならないからよ。貴女が周りも向こうも見ないで振舞うから、彼までそれに影響される」 「○○さんは私のこと見てくれますもんっ!」 「ああそう、でもね――」 それを言うなら私も見ていたのだ、あの時から、彼の背中を、横顔を、ずっと。 でも今ではその度に、そのすぐ側に。 「貴女が見えるのが、とてもとても障るのよ!」 ヘッドドレスを掴み、投げ棄てる。 メイドから一人の女にフォームチェンジ。 事ここに至って、美鈴の方でも気づくものがあったらしい。 その様に少し怯んだが、それでも雄雄しく闘気を立ち昇らせる。 愛を守るため、EX美鈴スーパーモードここに見参である。 「私と○○さんは愛し合ってるんです! 誰であろうと何であろうと、手出し口出し後出し無用っ!」 「一人勝手に先走っておいて! こうして表に出てるんだから、出るトコ出てあげるわよっ!」 同時に地を蹴る二人。 ここに女の威信をかけた、弾幕勝負が始まった。 そしてその一方で。 「ひやー、修羅場ラバンバ。一人の男を巡って戦う二人の女、そしてそれを裏から見つめる私。どうしましょう。 ここはやはり、王道的に夕日をバックにクロスカウンターで共倒れしたお二方を、非道にも埋めちゃうとか。そし て哀しみに暮れる○○さんの心のスキマを埋めてみましょうか。Let s漁夫の利っ☆」 そこに降りかかる流れ弾! 流れ弾! 小悪魔、安地! 安地! その戦闘は熾烈を極め、その弾幕は鮮烈を窮めた。 弾と弾のぶつかり合い、魂と魂のぶつけ合い。 妖精メイドによる勝者予想集計は、メイド長4割、門番長3割、小悪魔1割、そしてその他(パチュリー様が乱 入して収める、お嬢様が乱入して勝ち残る、妹様が乱入してぶっ壊れる、自分が最後に勝つ等)が2割である。 そしてその結果は。 「○○さんは私が大好きーっ!!」 「見てるだけで何が悪いーっ!!」 「きゃー! ルール違反の相乗不可避弾幕! 皆さん見てる場合じゃないです逃げてー!!」 あたり一面総撃墜。 勝者も敗者も観客も、相打ちどころか丸ごと全部ノックアウトと相成った。 当然ながら、そんな状態で当初の目的が果たされることは無かったのである。 「全くもう。言い出したのは咲夜なのに、不甲斐無いったら無いわ」 「面目次第もありません……」 数日後、そこにはどうにか持ち直した咲夜の姿があった。 辛辣な言を愉しげに送るレミリア。 さらに後ろに小悪魔も控えている。 三名による、バカップル対策報告兼打ち上げのお茶会である。 「それにしても、さすがお嬢様ですねー。あのお二人もすっかり落ち着いて、苦情もサッパリなくなりました」 有耶無耶になったかと思われた二人の件であったが。 ○○と話し合ったらしいレミリアの采配により、屋敷内に所構わずイチャつくバカップル二人の姿はなかった。 両名、自身の仕事に今まで通り励んでいる。 仲のよさは相変わらず、愛も変わらずではあったが、時と場所を弁えるようにはなったらしい。 「○○のお願いを聞いてあげただけなんだけど。いや、それもこれもどれも私のカリスマの為せる業か」 「しかし、同じ部屋に住まわせただけでどうしてこうも変わるものでしょうか」 主のカリスマとやらを疑う訳ではないが、彼女にはその理由がイマイチ判らないらしい。 そう口にした彼女がやや憮然としているのはそれだけのせいではないだろうが。 「ふっふっふー。甘いですよ咲夜さん。適度な刺激こそが、愛しい二人をより燃え上がらせるのです!」 「……そういうものかしら」 「そういうものなの?」 「そういうものなんです」 したり顔で不敵に笑う小悪魔。 「普段からずーっとべったりだとやっぱりマンネリですからね。敢えて会えない時間を作ることでメリハリをつけ るんです。緩急ってやつです」 「せいぜい半日だけなのに?」 「たかが半日、されど半日ですよ、お嬢様。例を挙げてみましょう。○○さんと半日顔を合わせることが出来ず、 挨拶もされることのないままの咲夜さん。どうです?」 「あら、とんでもなく不機嫌」 「例になってないわよ!」 「ところがどっこい、その後廊下でばったり○○さんに出くわし二言三言会話する咲夜さん」 「あら、とてつもなく上機嫌」 「お嬢様ぁー!」 ちなみに今日はいまだ会話なし。 多分この後も会うことなし。 「そして何より! 同じ部屋でベッドは一つ! それでやっぱり枕は一つ!」 「枕は二つじゃないの?」 「腕枕って素敵だと思いませんか、咲夜さん?」 「私に聞かないでっ」 たまに膝枕、どちらかと言えば肩枕、あるいはそれは胸枕。 「二人が中で何をしているか。気になりませんかお嬢様?」 「気になるわ。見てないの咲夜?」 「見てません。見たくもありません」 「家政婦は見るのが仕事らしいわよ?」 「私はメイドですっ」 「メイド長でしょう、あなた」 最近のレミリアは頻繁に○○と話している。 それは外界のことだったり、他にも、まあ色々。 「仕方ありませんねー。それでは不肖ながら小悪魔、ありのまま昨夜見てきたことを話しますっ!」 いつの間に、どうやって見たというのか。 鼻息荒い小悪魔を前に、咲夜の頭はどうにかなりそうだった。 「『ねえ、○○さぁん。今日も、その……シてくださいよう』」 「ん、なっ……」 「おおっ」 毎度おなじみ小悪魔劇場。 美鈴の猫撫で声が普段の惚気っぷりより糖分三割り増しだ。 顔を真っ赤に染めて絶句する咲夜。 身を乗り出してかぶりつくお嬢様。 「『わかってるよ美鈴。ほら、いつも通り後ろを向いて』」 「な、んななななな……」 「後ろ? いつも後ろなの?」 「『はい、お願いしますね……んッ』」 一人二役、男声だってお手の物。 そして美鈴の、明らかにあからさまに普段とは違う意味で甘い声。 「いいい、いけません。聞いてはいけませんお嬢様!」 「咲夜、目を塞がれると前が見えないわ」 「『あ、はぁっ……ふあ、んっ! 気持ちぃ、ひ、あんっ!』」 完璧に似せた声色のせいで、寧ろ見えない方が生々しいが。 「『そんなにイイんだ? じゃ、ここをこうする、とっ……!』 『ぅあンッ! あ、あーっ! すごっ、そこっ! スゴいのぉ……!!』」 「……○○ってそんなに凄いの?」 「わ、私に聞かれても困ります!」 「『美鈴だって、ほら。ここ、こんなになってる……』 『やぁ……ん、言わないでェ……恥ず、かし、ぃ、あッ!』 『ぴくぴくして、こんなにカタくして。凄いよ、美鈴の……』」 「…………」 「…………」 ごきゅり、と。 どちらともなく生唾を飲み込む。 激しさを増す蜜夜の音声再現に、もはや相槌も静止もなく聞き入っていた。 「『美鈴の 肩 こ り 』」 「……肩」 「……こ、り?」 「『だってぇ、基本的に肉体労働ですもん。あっ、そこそこ。くぅあー、極楽ですねえ』」 しおしおと、場の盛り上がりが萎れていくのが見て取れるようだった。 要はただのマッサージ音声。 確信的な犯行であることは間違いない。 「なんだ、つまらない。私も今度○○にやらせてみようか」 「……まあ、そんなことだろうとは思ったけれど。わかってたわ。本当よ?」 「『それにやっぱり、大きいとどうしても負担になっちゃいますし……やんっ、そこは違いますってばあ』」 瞬間、咲夜の時間だけが空間ごと音を立てて止まった。 寧ろヒビが入った。 「……という感じでしたー。羨ましいなあ、○○さんの肩もみ。私もして貰いたいですねえ」 声真似を終えて小悪魔が大きく伸びをする。 その動きに合わせて揺れる、たわわに実った二つのソレ。 なるほど、彼女の肩にかかる重さも並々ならぬものがあるだろう。 「咲夜さんもお願いしてみたらどうです?」 そう言ってちらりと目線をくれる。 無論のこと彼女の魅力を損なう訳でもなく、全体からすれば美しいラインを誇るだろうがしかし。 さほど負担にはならなそうな、咲夜のソレ。 「肩とか、凝りません?」 ぺたぺたと自分のソレに手を当てるレミリアは置いておいて。 強烈な皮肉であった。 「あああ貴女って娘はーッ!!」 激昂した彼女の手に握られるは銀のナイフ。 今にも投擲せんと振りかぶられたその時。 「ひゃ、危ないじゃないですかー。『咲夜さん』」 「う、あっ」 ○○の声で名前を呼ばれ、ピタリとその挙動は静止する。 「『そんなに怒ることないですよ。それに咲夜さんのだって可愛くて、好きですよ。俺は』」 「な、何を……」 ナイフはどこかに引っ込んだ。 声真似だとはわかっていても、手が出せない。 その声は、その言葉は、あまりにも咲夜にとって甘美に過ぎた。 「『ねえ、咲夜さん。いや、咲夜』」 「あ、あ。あぁ……」 なんかもう本人よりいい声で、ウィスパーボイス。 それだけで彼女は腰砕けだ。 何よりその声で名前を呼び捨てというのは、クるものがあった。 「『かわいいよ咲夜。食べてしまいたいくらいだ』」 「駄目、駄目よ。○○……!」 シチュエーションとしては、強引に迫る○○と受身の咲夜といったところか。 全てにおいてありえない状況だが、意外にもツボに嵌ったらしい。 身をよじり、形だけの拒否を口にする咲夜。 目を瞑るのは逆効果だというのに。 「『いいだろう、咲夜。俺、もう我慢できないよ……』」 「○○、だめ……。し、仕事中なのよぉ……って。あ、れ?」 目の前にいる、と錯覚した彼の胸を弱弱しく押す。 無論のこと手応えはない。 目を開けて確認してみれば、声の主たる小悪魔は声真似を止めてレミリアと談義に花咲かせていた。 「仕事中だと駄目なの?」 「いえいえ、これは所謂OKサインです。もう心も肢体(カラダ)も準備は万端なのです」 「そもそも咲夜ったらいつも仕事中じゃない」 「つまり24時間オールオッケーってことですよ。any time、any where、only to him! いやん、咲夜さんのエロス! もっと!」 羞恥と期待の赤から、殺意の無色へ。 果たして、一人の修羅がここに誕生した。 「彼の声で、醜い悲鳴を上げなさいっ!!」 咲夜、ナイフ! ナイフ! 小悪魔、かすり! かすり! そのまたさらに数日後。 今日も今日とて紅魔館は程よく平和だった。 心亡くさない程度に忙しいメイド長、咲夜は廊下の角を曲がったところで○○と遭遇することに成功した。 「こんにちは。お疲れ様です、咲夜さん」 「○○も、ご苦労様。これから休憩かしら?」 それならお茶でも一緒にどうか、と。 有りっ丈の勇気を込めて放たれんとした彼女の誘いは、しかしというかやはり。 「いえ、これからちょっと一大事がありまして」 「……あら、そうなの。頑張ってね」 未然に終わったわけである。 廊下を曲がり向こうに消える○○の背中に、彼女の溜め息は届かない。 残念だけど。ああ、でも―― 「それでも○○さんの笑顔とお疲れ様の一言で今日も頑張れる! 咲夜さんったら乙女チックー」 「……何を言っているの、貴女は」 ○○の消えた角から当然のように現れる小悪魔。 「○○さんを見た瞬間、時間止めてまで顔合わそうとした甲斐がありましたね」 「何を見ているの、貴女は」 廊下の端から端まで猛ダッシュ。 その後もタイミングを上手く計ろうと秒単位での位置合せの成果だ。 「私もさっき、○○さんと故意にぶつかって勝負下着を見せちゃいました。ノーリアクションでしたけど」 「何をしているの貴女は!」 黒のレースとガーター。 咲夜は白のシルク、ガーター付き。 「全く。油を売ってないで、自分の仕事に戻りなさい」 話はもう聞かないとばかりに咲夜は踵を返す。 ○○が消え、小悪魔が現れた廊下へスタスタと歩を進める。 特に他意はない。もともとこちらに用事があったのだ。 これ以上茶化されては適わないと、話を聞かずに早足で。 「あー、咲夜さん。そっちには一大事な○○さんが……って、行っちゃった」 聞いておけばよかったものを。 「美鈴ー! 愛してる、結婚しよう。これからはずっと一緒だよ! 美鈴! めいりーん!!」 「ああ、感激です○○さん! 私も愛してます! だからお願いもっと言って! もっとー!」 「子供は三人がいいかなー!!」 「もっとー!!」 「きゃー! 咲夜さん待って待って、八つ当たりはんたーい!!」 「……ッ! ~~っっ!!」 咲夜、スペカ! スペカ! 小悪魔、気合避け! 気合避け! 喰らいボム! どっとはらい